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ブーム来る? 「和文バリアブルフォント」の世界

ITmedia NEWS / 2024年4月23日 18時14分

 バリアブルフォントでは、4つの可変軸が持てる。これをどう使うかが、ポイントになる。西塚氏のアプローチは、フォントのマスターデザインとして、まず4隅を定義した。縦長の細いもの、縦長の太いもの、横長の細いもの、横長の太いもの、である。これが相互に、いわゆるモーフィングのような格好でバリアブルに中間状態が作れる。

 ポイントは、フォントの標準状態ともいえる、中心がない事である。中心の整体状態は、4隅からの引っ張り具合で自動的に形成される。逆に言えば、中心の形状を想像しながら、4隅のフォントをデザインしなければならないことになる。大変な作業だが、改めて中心の整体をデザインするとあと2年ぐらいかかることから、時間短縮のためにこのようなアプローチになったという。

 ちなみにモリサワの「DriveFlux」は、別の4軸を持っている。発表によれば、

・太さを調節するWeight(ウエイト)軸

・エレメントに流線型のカーブデザインを与えるSmoothness(スムースネス)軸

・主に横画の太さを変化させるContrast(コントラスト)軸

・傾斜角を調節するSlant(スラント)軸

 だそうである。これも4隅のフォントを作って、その間をつなぐというアプローチでバリエーションを出していくということだろう。

 Adobeでは2021年に「源の角ゴシック」のバリアブルフォントをリリースしているが、これはウェイト(太さ)だけがバリアブルであった。従って横長の、いわゆる長体をかけると、縦線が横に引っ張られるため、文字の縦線と横線の太さが変わってしまうという課題があった。一方で百千鳥はマスターとして最初から縦横引き伸ばし状態をデザインしているので、こうした問題がない。

 もう1つのポイントは、縦書きに対する考え方が変わることである。例えば横書きの時に、行に対して圧縮すると、文字は縦長になる。一方で縦書きの場合、行に対して圧縮すれば、各文字は横に潰れなければならないはずが、横書き同様に文字が縦長になる。つまり文字1個1個の形を見ればどちらも同じ動きにはなるわけだが、「行を縮めたい」という狙いは、縦書きでは逆になってしまう。

 一方バリアブルフォントでは、「行を縮める」というアクションは、横書きも縦書きも一致する。

●ニーズがある和文バリアブルフォント

 まだJR新宿駅の改修工事が盛んに行われていた2005年ごろ、壁面にガムテープで文字が書かれた臨時の案内表示を見かけた人も多かっただろう。当時新宿駅のガードマンだった佐藤修悦さんによって作り出された特徴のある圧縮文字は、大きくて読みやすかった。まず初めに文字面全部にガムテープを貼り付け、その後カッターで穴を開けていくという方法論で描かれているため、骨太の書体が出来上がる。この書体はのちに、「修悦体」という一連のフォント群となった。

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