北朝鮮ミサイルテストと安保理 その4 各国独自制裁、動かぬ中国
Japan In-depth / 2016年2月13日 23時0分
植木安弘(上智大学総合グローバル学部教授)
「植木安弘のグローバルイシュー考察」
常任理事国の中国が核実験後ひと月経ってもより強力な経済制裁措置に応じないことから、日本、韓国、米国は独自の新たな制裁措置を発表した。
日本は国連安保理決議や日朝平壌宣言に違反し,2005年の6者会合共同声明の趣旨にも反するものだとして、
・渡航制限の拡大(主に、北朝鮮籍者の入国の原則禁止や在日北朝鮮当局職員などの北朝鮮を渡航先とした再入国の原則禁止
・北朝鮮籍船舶の乗員等の上陸の原則禁止、在日外国人の核・ミサイル技術者の北朝鮮を渡航先とした再入国の禁止など)
・北朝鮮への支払額の下限金額を100万円超から10万円超に引き下げ、人道目的かつ10万円以下の場合を除き北朝鮮向けの支払を原則禁止
さらに、
・人道目的の船舶を含む全ての北朝鮮籍船舶の入港禁止や,北朝鮮に寄港した第三国籍船舶の入港禁止
・資産凍結の対象となる関連団体・個人の拡大
などの措置を取った。これに対し、北朝鮮は拉致被害者の調査停止措置を発表した。
韓国は、南北経済協力事業の開城工業団地の稼働を全面的に中断し、韓国の企業を全て撤退させた。これに対し、北朝鮮は工業団地を軍事統制区域として、団地内の韓国企業の資産を凍結した。北朝鮮は労働者約5万3千人分の賃金として1年間に8,700万ドルの外貨収入を得ていたとされている。
米国は議会の上下両院で以下の独自の制裁強化策を採択した。
・北朝鮮による核を含む大量破壊兵器の拡散やミサイル開発などに関わった第3国を含む個人や団体の資産凍結
・核・ミサイル開発などに関係する材料や鉱物資源の禁輸
・贅沢品の取引に関わった第三国の企業への制裁に加え
・サイバー攻撃への対処
も含まれている。第3国には特に中国が念頭にある。中国への圧力強化でもある。
このような一連の独自の制裁は果たして実質的効果があるのであろうか。確かにある程度の経済的ダメージは与えられるものの、これらの措置が直接北朝鮮のこれ以上の核やミサイル開発に大きな影響を与え、北朝鮮がこれを再考するとは考えられない。
やはり、鍵を握るのは中国だが、ジレンマを抱える中国は安保理の次の経済制裁措置にはある程度の譲歩はせざるを得ないが、北朝鮮の経済を根底から揺り動かすような措置には同意できないであろう。
(北朝鮮ミサイルテストと安保理 その5 核・ミサイル開発阻止するには? に続く。北朝鮮ミサイルテストと安保理 その1 「スマート制裁」効果なし、北朝鮮ミサイルテストと安保理 その2 経済制裁の抜け穴 、北朝鮮ミサイルテストと安保理 その3 中国のジレンマ も併せてお読みください。全5回)
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