ツケ払うのは英国だけでなく日本も EU離脱・英国の未来像その1
Japan In-depth / 2016年6月27日 0時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
「林信吾の西方見聞録」
まずは読者の皆様に、お詫び申し上げます。英国がEUから離脱すべきか否かを問う国民投票について、「僅差にはなるだろうが、最終的には残留派が勝つだろう」との見解を開陳したものが、結果はご承知の通りでした。不明を恥じるばかりです。
どこかの元知事のように、見苦しい言い訳は並べたくないので、ここは「敗因」を端的に語らせていただきたいが、イングランドの労働者階級が「自分たちの職を奪い、社会福祉を食い荒らす移民たち」に対して募らせている反感を、いささか過小評価していたことにある。
さらに言い訳がましくなることを承知で、一言だけ付け加えさせていただくなら、私だけではなく市場関係者の大半と、キャメロン首相以下、英国政府関係者も同様であった。英国の有権者の中にも、首相が辞意を表明してから、あらためて事の重大さに気づいた、という人が少なからずいるらしい。
これまでこの問題は、ブリテン(Britain:英国)とイクジット(Exit:退出)を組み合わせた造語ブリグジット:Brexitと語られてきたが、24日以降、英語のサイトには、リグレット(Regret:後悔)とイクジット(Exit:退出)を組み合わせた、リグレジット:Regrexitという新たな造語があふれるようになった。
後悔するだけではなく、行動を起こした人も多い。選挙結果の公表から48時間を経ずして、再度の投票を求めるネット上の請願サイトには、200万人を超す人が署名した。
英国の法律により、10万人以上の署名を添えて提出された請願については、議会で必ず審議されることになっているが、再度の国民投票となると、新たに法整備から始めねばならず、実現可能性はあまり高くはない。
ただ、残留派が優勢だったスコットランドでは、英国からの分離独立を問う住民投票を再度行おうという動きが早くも出ており、キャメロン首相が、「離脱すれば、分裂の危機にさらされるのはEUではなく大英帝国だ」と有権者に訴えていた、その心配が現実のものとなるかも知れない。
日本人は、えてして「イギリス」という一国があるものと考えがちだが、そうではない。かの国の正式名称は、日本語でも、「グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国」であり、複数の王国が歴史のしがらみで一国を形成した国なのだ。当然ながら、各地域の文化的伝統や歴史観の違いは、日本人には理解しがたいほど大きなものだ。
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