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記事「もしゴジラが上陸したら?」にモノ申す

Japan In-depth / 2016年8月28日 23時0分

記事「もしゴジラが上陸したら?」にモノ申す

清谷信一(軍事ジャーナリスト)

筆者のような軍事ジャーナリストは防衛省や自衛隊はもちろん、他の省庁、他国の国防関係者や軍人、兵器メーカーなどに取材を行う。広報を通して行う取材も多いが、それ以上に重要なのは個人的なつてを辿っての調査取材だ。

軍事の世界は機密や秘密が多い。当局や他の取材対象が公にしない情報も多い。また当局が隠したがる情報も多い。そのような情報は広報を通さない、このような取材によって得られている。公の立場では公式に発言できないこと、あるいは立場的にはオフィシャルアナウンスメントしかいえないが、個人的にそれと反する本音を話してくれることは少なくない。

例えば筆者がスクープした陸自の無人機が東日本大震災で一度も飛ばなかったとか、同じく陸自の個人用ファースト・エイド・キットが極めて貧しい状態であることなどはそのような取材が元となっている。だから取材源の秘匿が重要である。取材源を明かせば誰もが納得する話は少なくない。だがそれができないことが多いのだ。それ故に「この話はインチキだろう」と疑われないように気をつけている。

だが人間は自分の信じるものを信じる性癖がある。だから自分の信じたくないことは「でっち上げ」と決めつける。例えば過去10式戦車は自身の主砲で正面から撃たれた場合、500~800G(1Gは地球の重力)の強い衝撃が加わり、戦車は無事でも搭載機器は破壊され、乗員は死亡するという話を書いた。無論これは射撃距離にもよるし、他の戦車でも同じようなことは起こる。陸自は過去米軍供与のM4シャーマン戦車に豚を乗せて実験したが、豚は圧力で死んだ。

ところが自衛隊と10式戦車を偏愛するマニアは10式戦車に対する侮辱ととって、これを信じようとせずに、「でっち上げ」と決めつけて計算競争まで行って、喜々として筆者の報道を否定した。だがこの情報元は10式開発の中核にいた、指導的な人物だ。名前を出せばマニア諸氏はぐうの音も出ない人物だ。その人物の名前を出せば簡単な話だ。だがそれができないのがこの仕事である。

筆者は10式採用に反対の立場だが、その人物はそれにも関わらず筆者に協力してくれている。自らの不利な情報ですら教えてくれる。それは、考え方は違っても日本の防衛を真摯に憂いている筆者の姿勢に共感してくれているからだろう。しかしその人物の名前を公表すればその人物の仲間内で問題となる。そうなれば警戒されて新たな情報の入手もできなくなる。

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