航空専門医がいない空自に戦闘機開発はできない やる気のある医官が次々に辞める自衛隊の内情
東洋経済オンライン / 2024年4月3日 13時30分
現在、わが国はイギリス、イタリアと共同で次世代戦闘機開発を行うグローバル戦闘航空プログラム(GCAP)を進めている。
だが当初は防衛省、航空自衛隊(空自)、三菱重工やIHIなどの防衛産業界、そして政治やメディアでも「国産開発で世界トップレベルの戦闘機開発が可能だ」という声が強かった。
それは誇大妄想にすぎない。個々の技術もそれを統合して戦闘機に仕上げる技術も日本は二流以下だ。その現実が見えない「専門家」がテクノナショナリズムを振り回してきた。今回イギリス主導の共同開発になったのは妥当な着地点であった。
戦闘機は単に機体やエンジン、レーダーや火器管制装置などの個々のシステムや技術要素だけはなく、幅広い業際的な知見や技術が必要である。だがわが国ではそれが軽視されている。戦前の日本軍で機体設計やエンジンだけが重要視されて、艤装や通信機などが軽視されたのと同じだ。
自衛隊で軽視される「航空医学」
その軽視されている分野の1つが医学、とくに航空医学だ。例えば空自も採用したF-35のヘルメットは、従来とはまったく異なり、開発には医学の知見が必要不可欠だ。F-35のヘルメットはバイザーに各種情報や映像を投影するシステムを搭載しており、パイロットは機体を“透かして”後ろや下などの状況を目視できる。
さらに飛行や作戦に必要な情報を、昼夜、天候に影響されずに視認しやすく表示できる。機体外部に搭載された6台の赤外線カメラで撮影した映像をバイザーにリアルタイム投影する。パイロットは機体を透過して周りを見回せる。このような革新的な機能はパイロットの身体にも大きな影響を与える。
またアフターバナーを焚かずに超音速飛行ができるスーパークルーズ機能なども従来機とは異なる影響を身体に与える。これらの開発には医学的なサポートが必要だ。
またよく事故の原因となる操縦者が平衡感覚を失い、空と海を混同するようなバーティゴ(空間失調)への対策や解析、さらに急激な加速に耐えるための耐Gスーツなど、周辺装備の開発にしても医学的な知見が必要なことは言うまでもない。
後述するが航空機やサブシステムの開発に関わる航空医学実験隊では装備開発は行っておらず、完成品の確認のみ行っているにすぎない。
防衛省や自衛隊は医学、自衛隊の言う「衛生」を長年軽視してきた。例えば護衛艦や潜水艦の定数に医官が入っているが、現実には乗艦してない。例外は海外派遣任務などだ。部隊の医官の充足率は2割強にすぎない。筆者は歴代の防衛大臣にこのことを質問してきたが、「自衛隊病院に医官や看護官はいるから大丈夫だ」という。
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