比大統領、六中全会直前の訪中 面子と実利のせめぎあい
Japan In-depth / 2016年10月18日 9時40分
大塚智彦(Pan Asia News 記者)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
暴言、失言でお騒がせのフィリピンのドゥテルテ大統領が18日から21日まで中国を公式訪問する。東南アジア諸国連合(ASEAN)域外の国への訪問は中国が初めてとなる。中国は24日から27日まで中国共産党の党中央委員会第6回全体会議(6中全会)を控えており、直前のこの時期に外国首脳の訪問を受け入れるのは異例のことだという。
それだけに中国のドゥテルテ大統領のフィリピンに対する特段の配慮がうかがえ、習近平国家主席ら中国政府がいかに2国間関係を重視しているかが浮き彫りとなっている。
そもそもASEAN域外への初外遊としてドゥテルテ大統領は日本訪問を予定していた(訪日は25日から)。ところが中国政府の「日本より先に訪中実現を」との意向を受けた駐フィリピン趙鑑華・中国大使がフィリピン政府に強力に働きかけた結果、訪日前の訪中が決まった。中国側はこれを「外交的勝利」として、6中全会直前にもかかわらず最大級のもてなしで迎える予定だ。
フィリピン側もこうした中国側の「熱烈歓迎ムード」に応えるためドゥテルテ大統領に同行する経済界代表メンバーを当初の約20人から250人に拡大、経済ミッション団を派遣することになった。
■中国がフィリピンに期待すること
フィリピンはアキノ前政権が親米路線を引き継ぎ、領有権問題で対立する中国をオランダ・ハーグの仲裁裁判所に提訴するなど中国との対決姿勢を鮮明にしていた。
ところが6月30日に国民の圧倒的に支持を得て当選、就任したドゥテルテ大統領は、7月12日の仲裁裁判所の「中国の主張を退ける」との裁定を受けても対中国で強気の姿勢を示すことには慎重だった。これによって、裁定を「紙屑で意味がない」「領有権問題は2国間で話し合う」と無視する中国政府は「ドゥテルテ大統領のフィリピンとは交渉の余地が十分ある」との感触を得た。
そして、ラオスで7月下旬に開催されたASEAN関係会議などで南シナ海問題が主要議題になったり、中国批判の声が高まることを回避することに全力を注ぎながら、カギとなるフィリピン政府に秋波を送り続けてきた。
ドゥテルテ大統領が国際的批判を浴びながらも続けている麻薬犯罪容疑者への射殺を含む強硬手段に対しても、中国政府は表立った支持は避けながらも、「麻薬中毒患者の更生施設」建設の資金援助というフィリピン側の要求を受け入れるなど協力姿勢を示している。
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