比大統領、六中全会直前の訪中 面子と実利のせめぎあい
Japan In-depth / 2016年10月18日 9時40分
中国政府は訪中するフィリピン側に対し、経済援助という「お土産」を用意しているとされ、それでフィリピン側の「南シナ海領有権」問題での対応で「妥協は無理だとしても最低限現状維持の追認か静観」を狙っているとされる。
■面子を立てて実利取るフィリピン
中国はアフリカ外交で繰り広げている「経済・財政支援による援助外交」でフィリピンも「抱き込める」と計算している節がある。しかし、ドゥテルテ大統領も国民の高い支持と国際社会の批判を「ものともしない」強力な個性と信念を背景に「中国の言いなり」にはならない覚悟を腹の中では決めているといわれている。
訪中を前にドゥテルテ大統領は20日に予定される習主席との首脳会談では「南シナ海問題には触れずにおく」として波風を立てない方針を示していた。
しかし、10月16日になってドゥテルテ大統領は「我々の主張を押し通し、取引はしない」とその強気の姿勢を鮮明にしたのだった。これは中国に対し「経済援助などもらうものはしっかりもらいますが、譲れないものは譲りませんよ」とのシグナルであり、国民に対しては「中国の言いなりにはならない、心配するな」というメッセージだった。
中国が重んじる「面子」を立てて日本より先に中国訪問を受け入れ、経済大ミッションを引き連れて中国に乗り込むドゥテルテ大統領。フィリピン側を歓迎して「大盤振る舞い」で自陣へ引き込もうと躍起の中国。その中国から「できるだけ援助や支援を引き出そう」と実利を得ることを最優先するフィリピン。首脳会談をはじめとするあらゆる場面で両国による綱引き、駆け引きが展開されることも予想されている。
■老練な中国としたたかなフィリピン
「領有権でフィリピンが現状維持あるいは静観を決め込んでくれれば中国としてはこの時期に訪中を受け入れた成果となる」と中国ウォッチャーは指摘する。その成果を上げるためにも「経済支援、援助は惜しまない」とする中国に対し、「(南シナ海問題で)現状維持でも静観でも、とにかく経済支援・援助でもらえるものを可能な限りもらえればそれはフィリピンにとって具体的な目に見える成果となり、ドゥテルテ大統領への国民の評価はさらに揺るぎなくなるだろう」(フィリピン英字紙記者)という見方が有力だ。
中国側は、ドゥテルテ大統領の訪中直後に習主席が自らの権力基盤を確固とする重要な会議と位置付ける6中全会を控えているだけにフィリピン問題で波風は立てられない。
それも承知の上で帰国後にドゥテルテ大統領が南シナ海問題で得意の前言翻し、訂正、修正で応じる可能性も否定できない。それを「外交上の非常識」と断じるか、「したたかさ」と唸るか、老練な中国すら手玉に取るかもしれないドゥテルテ大統領の言動、一挙手一投足からやはり目が離せない。
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