見下げ果てた英国の政治家達 EUと英国の「協議離婚」2
Japan In-depth / 2019年5月6日 7時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・「移民問題」はEU離脱の大きな原因の1つ。
・EU離脱を利用しようとしたデヴィッド・キャメロン氏の思惑。
・虫が良すぎるメイ首相の折衷案。
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読者の皆様、連休いかがお過ごしでしょうか。
わが国では、昭和の頃からこの時期を「ゴールデンウィーク」と呼び、特に今年は改元によって前例のない10連休となった。これに先駆け、英国議会は4月11日の審議日程を終えた後、11日間の休会に入った。
実はキリスト教文化圏でも、この時期はイースター(復活祭)の休暇シーズンなのである。しかし今年は、ご案内の通りEU離脱をめぐる政治情勢が混迷の度を深めるばかりで、多くの有権者が、「この時期に休暇とは、政治家の神経はどうなっているのか」と呆れ顔だと伝えられる。部外者どころか外国人ではあるが、英国の政党政治についての本まで書いている私なども、今次の体たらくには大いに失望させられた。
英国の政治家、とりわけ保守党議員の中に、なかなかしぶとい反EU勢力があることは、私も取材を通じてよく知っているが、今次の騒ぎの中で最初にクローズアップされたのは移民の問題であった。
前回述べたように、EUの単一市場においては、関税などがない代わりに、4種類(財、サービス、人、資本)の移動の自由が保障されている。
1957年に締結されたローマ条約が、その法的根拠であるが、EUが拡大した結果、ポーランドなど旧東側諸国から、母国よりも高い賃金水準と、医療が基本的に無料であるなど充実した福祉に惹かれて、多数の移民が英国にやってきた。
いつの時代、どこの国でも、労働者階級は移民を歓迎しない。「安い賃金で長時間働く移民のせいで、自分たちの仕事がなくなる」と考えるからだが、始末の悪いことに、これはかなりの程度まで事実なのだ。特にポーランド系移民の場合、旧植民地からの移民ともまた違って、英語がほとんど話せない人も大勢いるので、職場や地域での軋轢も、より深刻であった。
そこで2016年当時、首相の座にあったデヴィッド・キャメロンはこう考えた。(離脱の是非を問う国民投票を実施すれば、一石三鳥ではないか)
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