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いまだ行われる生活保護費の水際対策

Japan In-depth / 2021年9月3日 16時0分

私は、食事をしながら一切回復施設のことは持ち出さないことにした。ギャンブル依存症者への介入は難しい。依存症者は依存行為を、「辛い現実を依存している時だけ忘れられる」という自己治療に使っており、止めることがとても怖い。止めなければいけないとわかっていても、引き裂かれるような二つの気持ちの間で揺れているのである。押しつければ遠ざかるばかりであることは経験から学んでいた。





Kさんと食事をした後も、だらだらと話しを続けた。Kさんは「ホームレスになって生活保護をとっても結局また追い出されるかもしれないよね?」「ホームレスも大変だ」ということを繰り返していたが、私が「そうだよね~」「うん大変だよね」と相槌しか打たずにいると、チラチラと「別に東京に居なくてもいいけど」などとほのめかしてきた。





そこで私はここだ!と思い「そうだねぇ。東京は今困っている人が沢山居て、またすぐ追い出されるかもしれないね。佐賀の回復施設にとりあえず行ってみる?」と聞くと、Kさんから「その施設は何階建てなのか?」「施設長は何という人か?」「オリンピックが始まったら絶対にサッカーが観たいが、TVは観させて貰えるか」「食事当番はないか?」「食事代は1日いくらか?」「帰りたくなったら帰れるか?」などなど様々な質問があった。





私は、施設が何階建てなのかってどうでも良くないか?と思わずにいられなかったが、疑問には全て丁寧に答えるべきと思い、すでに10時近くになっておりご迷惑かと思ったが施設長に電話をさせて貰った。そしてKさんの疑問に一つずつ丁寧に答えて頂いた。





Kさんはこのやり取りで安心したのか電話を終えると、「いつ佐賀に行けるの?」と聞いてきた。そこで「じゃあ明日行こう。今飛行機取っちゃうね。」と言ってその場で航空券を取り「今日は、私がネットカフェに泊まる分のお金出してあげるね。明日お昼に必ず出てきて。羽田まで送って行くから」と段取りをつけて別れた。





こうしてKさんは翌日、無事に佐賀の回復施設に入寮することができた。





DaiGoは「俺の税金を使ってホームレス支援なんかして欲しくない」と言っていたが、税金は様々な人の命を救うために使われるべきだと思っている。障害や病気を持って働けない人を家族が抱え込むには限界がある。自助・共助だけでなく公助が当然に必要である。





今回のKさんの場合は、家族との繋がりが完全に切れてはおらず、またご家族が家族会に繋がっていたことから、こうして行き先を決めることができた。もしKさんが完全に孤独な状況であったら、行政は簡単に見捨ててしまうのが現実だ。切り捨てるという残酷なことをしても、声をあげられる心配もないと踏んでいるのであろう。税金の使い道うんぬんを言うのであれば、むしろ税金を使うべき社会的弱者を切り捨てていないかを国民は監督すべきだと思う。人はほんの少しのきっかけで簡単にホームレスになってしまう。そして自分の努力だけではなかなか抜け出せない。人との繋がりや、相互理解が大切だと思う。





先日Kさんの居る佐賀の施設に連絡を入れてみた。施設長さんからKさんが馴染んできていると聞かされ、温かく大切に迎え入れて下さったことに感謝の気持ちでいっぱいになった。そして「Kさん、すごく頑張っているんですよ。時々は自分からミーティングに参加したりもするんです」と驚きの報告を受けた。「この間本人が、『ここに来て1ヶ月ギャンブルが止まった。最高新記録だ』って言ってましたよ」。施設長さんと話しながら、「すごい!すごい!」と興奮してしまった。





ピンチに陥っている人が人生を取り戻していく姿を見ることは誰にとっても喜びではないだろうか。困っている人に生活保護が支給されることは、税金の有意義な使われ方だと私は思う。





トップ写真:ホームレスの男性(2020年4月8日 大阪・道頓堀商店街) 出典:Photo by Buddhika Weerasinghe/Getty Images




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