「新しい“日本型”資本主義の価値」続:身捨つるほどの祖国はありや 9
Japan In-depth / 2021年9月15日 23時0分
牛島信(弁護士・小説家・元検事)
【まとめ】
・岸田氏の「新しい日本型資本主義」と筆者のコーポレートガバナンス論には共通点。
・他国の成功例をそのまま移入し、日本で実現させるのは不可能に近い。
・海外のコーポレートガバナンス論を日本型として定着させるには時間が必要。
菅さんが辞任を表明した。
ワクチンとオリンピック・パラリンピックがあり、すべて大成功のうちに菅さんが凱旋的続投を決める。そう予測した我が身を恥じなければならない。まことに、政治は一寸先は闇、というほかない。コロナがこんなになるなんて、と弁解は言わない。ワクチン供給があんなになるなんて、と他人のせいにもしない。私は自由な立場で、その時の情報に基づいて予測をしたのである。(本サイト2021年6月10日掲載)
▲写真 菅首相の総裁選不出馬のニュースを伝えるディスプレイ 画像:Carl Court/Getty Images
ふり返れば、1年前の7月、私は「災いの渦中にあると人間は過剰に悲観したり楽観したりするものなのだと改めて感じる。70年の経験で知っているのだ。私は、ワクチンができてしまえば、元のような日常が戻ってくるだろうと思っている。1年なのか2年なのか。」(『身捨つるほどの祖国はありや』502頁 幻冬舎)と書いている。私の予測は、大筋は正しかったと言ってよいようだ。
間違えたのは、柄にもなく政権の近い未来について予測をしたことにある。
それにしても、最後の一瞬まで、呆れ果てるほどに権力維持のためにあがきにあがいた菅さんには、これからの季節、秋風がなんとも身にしみることであろう。私も、そうやって晩節を穢したトップを何人も間近に見て来た。穢す直前にアドバイスをして、あやうく免れていただいたこともある。
いや、菅さんはやるべきことを立派に果たした首相として歴史のうえでは語られるかもしれない。未来のことは誰が知ろう。
ところで、菅さんの辞任は国民にとって良かったのか?
良かった。自民党政権の崩壊を防いだからである。私は、菅首相のもとでの総選挙後には、小党分裂状態になるのではないかと危惧していた。イタリアを思ったのである。したがって菅さんの功は大きい。身を捨てて国を救うことは誰にでもできることではない。
他に選択肢がなかっただけで、結果論に過ぎない、という意見もあるだろう。
しかし、今の我々は、既にして、次に誰が後継になるのかという議論に夢中になっているではないか。それを可能にしたのは菅さんの決断である。自民党という政党の強靭さといっても良い。
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