NYで爆増する無賃乗車、そのわけ
Japan In-depth / 2024年2月18日 21時14分
柏原雅弘(ニューヨーク在住フリービデオグラファー)
【まとめ】
・コロナ禍以降、ニューヨークの地下鉄の無賃乗車率がうなぎのぼり。
・拘置所や刑務所が犯罪者で溢れ返った為に出来た「保釈金改革法」がその原因。
・無賃乗車による地下鉄の被害額は、2022年6億9,000万ドル(1,000億円)以上。
コロナ禍以降、ニューヨークの地下鉄の無賃乗車率がうなぎのぼりどころか、打ち上げロケットの勢いで上昇している。
以前は地下鉄の改札口を飛び越えるなどした者に対してはその場で逮捕もあり得たが、コロナ禍の2020年に施行された「保釈金改革法」あたりから、様相が変わってきた。
「保釈金改革法」とは、経済的に裕福なものは逮捕されても保釈金を支払えば保釈されるのに対して、お金が無いものは、牢屋にいれられたまま。これが差別的だ、とされ、犯した犯罪が「重罪でない」とされたものは、逮捕されてもすぐに保釈されるようにした法律だ。
だがNY市では、新法の下、収監されずすぐに保釈された容疑者が「シャバ」に戻った途端、再び犯罪に手を染めるケースが後を絶たず、この法律はすこぶる評判が悪い。新法施行以前は、保釈するかしないか、保釈するなら、保釈金の金額の設定は裁判官の裁量であったが、その権限がもう裁判官にはないことが司法権の侵害とも批判されている。
保釈された者が、仮に再び犯罪に手を染め、逮捕されても、犯した犯罪が同等ならば、また即保釈される。
NY州では過去には犯罪であったものの、今では非犯罪化されたものがある。
最近では、マリファナが長い議論の末、販売も、所持も使用も「非犯罪化」された。以前は、ごく少量所持の場合を除いて、逮捕、収監、という扱いだったが今は販売も所持も使用も合法である。
かつては駐車違反も「罪」とされ、違反チケットを交付されたドライバーは裁判を受けるために出頭、裁判所に長蛇の列ができた。ただでさえ忙しいNYの「24時間営業」の裁判所の業務や市民生活にも大きな支障が出ていた。
NY市では、保釈に関して人権とは別のもう一つの側面がある。
ニューヨークの内海に浮かぶ、悪名高いライカーズ島刑務所をご存知であろうか。
ここは常に異常とも言える過密状態であり、NYでマリファナや、地下鉄の無賃乗車が「非犯罪化」されたのは、これらの問題と関わりがない、と思わない市民はいない。
ライカーズ刑務所には、比較的軽微な犯罪を犯したものが収容されているとされるが、その拘留者の85%は裁判を待つ未決囚である。特に、過去には少なくない数の死者も出ている刑務所内の処遇は問題とされ、2017年に、当時のデブラシオ市長は今後10年かけて、島の刑務所を閉鎖し、それぞれの裁判所の近くに小規模の同等施設を作る計画を発表したが、現実に進んでいるかは全く不明である。
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