もしトランプ政権になれば その1 日本のメディアの錯誤
Japan In-depth / 2024年3月20日 17時0分
こんな認識も政治党派に沿う意見や主張とみなせば、それほど深刻な問題ではないだろう。だがこの種のトランプ嫌悪はアメリカの政界、そして大統領選ではトランプ氏の政治生命がもう終わってしまったかのように断定するところまで暴走していたから、危険だった。恥ずかしいくらいの錯誤だった。
つい一年ほど前の米側での中間選挙では日本の主要新聞までが「最大の敗者はトランプ氏」と断言していた。トランプ氏が議会選挙で支持した一部の共和党候補者が負けたことを拡大しての託宣だった。だからトランプ氏はもう国政での政治生命を終え、大統領選の予備選でも共和党側の敗北者になるとの予測をちらつかせていた。
ところがそんな予測はみごとに外れてしまった。トランプ氏は圧勝また圧勝なのである。すると、トランプ氏の敗北を断じていた向きは自分たちの錯誤も認めず、こんどはくるりと逆転し、トランプ氏の勝利を前提として、同氏の大統領再選までを想定し、その第二次政権の危険性を喧伝するのだ。
トランプ氏はもう終わりだとするような断定のまちがいを認めず、トランプ勝利による第二次政権を非難する矛盾はアメリカの政治の現実をみない情緒的な反トランプ症状とも呼べよう。あえて「症」という語を使うのは、この種の態度にはイデオロギー面での反発からの偏見や感情の高まりからの事実誤認という「病んだ」部分も多いからだ。
アメリカ側の民主党べったりの主要メディアのトランプ叩きに追従して、ただただトランプ氏の悪口を述べれば、良識の証しになると思っているような姿勢ではアメリカ政治の現実はつかめない。その現実の一端として日本側の「アメリカ通」には信じがたいような世論調査結果を紹介しておこう。
全米でも最大手の世論調査機関のラスムセン社が2月13日に公表した調査結果によると、「もっとも尊敬する指導者」として全米有権者のうち42%がトランプ氏の名をあげたというのだ。バイデン大統領は21%、オバマ元大統領が17%だった。日本側識者のトランプ評といかに異なる現実であることか。
(その2につづく。全5回)
*この記事は雑誌の「月刊 正論」2024年4月号に載った古森義久氏の論文「トランプ氏に関する誤解・歪曲を正す」の一部を書き替えての転載です。
トップ写真:2024年3月19日、フロリダ州パームビーチに設置された投票所で投票の準備をしながら一緒に歩くドナルド・トランプ元大統領とメラニア・トランプ元大統領夫人 出典:Joe Readle / GettyImages
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