キューバ、韓国と国交樹立 経済苦境に加え「もしトラ」説も影響か
Japan In-depth / 2024年4月2日 17時0分
食料、医薬品や電力不足に加えインフレが国民生活を苦しめている。キューバ共産党機関紙「グランマ」は昨年のインフレ率が30%程度と伝えているが、実際は50%を超えるとの見方が専ら。キューバ政府が先ごろ、ガソリン価格の5倍引き上げなどを盛り込んだ緊縮政策を発表するや、同国第2の都市サンティアゴ・デ・クーバを中心に各地で大規模な抗議デモが発生した。「キューバ経済は過去30年で最悪」(米有力シンクタンク専門家)といった声も聞かれる。
◇年明けから国交樹立へ動き加速
キューバにとって韓国の経済支援はノドから手が出るほど欲しいと言っても過言ではないだろう。だが、キューバは従来、韓国側の積極的歩み寄りに慎重に対応をしてきた。
実は韓国がキューバへの接近を始めたのは20年ぐらい前からである。ソウルのメディアの報道によれば、韓国がキューバへの接近を公式に始めたのは大韓貿易投資振興公社(KOTRA)が2005年にハバナに貿易館を開設してからだという。以後、韓国は経済・文化面を中心に盛んにキューバへの浸透を図ったものの、キューバ側の反応はそれほどではなかったという。
しかし、昨年5月グアテマラで開催されたカリブ諸国連合(ACS)閣僚会議にオブザーバー参加した韓国がキューバと高官協議を行ったのをきっかけに風向きが変わり、二国間交渉が進展、年明けから国交樹立への動きが一気に加速、2月半ばに国交合意に至った伝えられる。
キューバの"変身"について複数の中南米問題専門家は、米大統領選でトランプ前大統領が勝利する可能性が出てきたことも要因の一つだと分析する。
トランプ氏はキューバの現体制を「邪悪な共産主義独裁」などと非難、政権の座に返り咲けばディアスカネル政権に対し強硬方針で臨むと公言している。「もしトラ」実現に備え、キューバが経済支援をあてに韓国との国交を急いだのではないか、というのがこれら専門家の見方である。
イデオロギーよりも実利を優先せざるを得ないキューバの現実が浮かび上がると言えるかもしれない。(了)
トップ写真:キューバ・ハバナのダウンタウンのスカイライン 出典:Sean Pavone / Getty Images
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