アルミニウム・インゴットの関税率を撤廃(メキシコ)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月10日 16時0分
メキシコ政府は5月8日、夕刻の連邦官報で政令を公布し、4月22日付官報で公布された544品目の一般(MFN)関税率の一時的引き上げ措置(2024年4月25日記事参照)の対象から、アルミニウムのインゴット(非合金および合金、HS7601.10.02および7601.20.02)を除外した。5月9日以降は、本来のMFN関税率である0%に戻る。同措置の背景として、メキシコ国内ではアルミニウムの製錬が行われていないため、再生インゴットを除くインゴットの国内生産がなく、メキシコが自由貿易協定(FTA)を締結している国からの供給能力も乏しいため、高関税(非合金が35%、合金が20%)の賦課が自動車産業や電子産業などのサプライチェーンに悪影響を与えることを挙げている(政令全文)。
メキシコには、アルミニウムのスクラップを再溶解し、再生インゴットを製造する事業者が進出日系企業を含めて複数存在している。アルミニウム製自動車部品の製造には、再生インゴットがかなり利用されているものの、ブレーキ関連など一部の製品については、純度の高いアルミニウムが求められるため、再生インゴットが利用できない場合もある。また、アルミ製錬には1トン当たり1万3,000~1万4,000キロワット時(kWh)の電力が必要なため、アラブ首長国連邦(UAE)など電気代が安価な国で精練される傾向がある。メキシコは、それらの国とFTAを締結していない。今回の措置は、それらの特殊なサプライチェーンに配慮したものといえる。なお、メキシコのHSコードでは純正インゴットと再生インゴットが区別されていないため、再生インゴットであっても関税は0%となる。
全国アルミニウム会議所(CANALUM)は、5月9日付でSNSを通じたプレスリリースを出して今回の措置を歓迎し、メキシコ経済省に対する働きかけに協力した全国工業会議所連合会(CONCAMIN)のアレハンドロ・マラゴン会長への感謝を述べている。
硫酸アンモニウムの関税率を引き上げ
さらに同政令では、硫酸アンモニウム(HS3102.21.01)のMFN関税率が従来の0%から35%に引き上げられた。硫酸アンモニウムは2013年1月6日および同年12月27日付官報で公布された政令に基づき、家計へのインフレの影響を回避する目的の下、2024年末までの関税撤廃および輸入手続きの簡素化が定められていた品目の1つだった(2013年12月28日記事参照)。しかし、2019~2023年に同品目の輸入が急増し、国内消費に占める輸入品の比率が22%から51%まで拡大したことを受け、国内の肥料関係業者を保護する目的で2024年末までの簡素化措置の対象から除外し、さらにMFN関税率が引き上げられるかたちとなった。
(中畑貴雄)
(メキシコ)
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