インド工科大学ボンベイ校の就職内定率が低下(インド、日本)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年4月12日 0時50分
インド工科大学(IIT)の同窓会有志が組織する卒業生支援グループによると、同大ボンベイ校(IITB)の2024年の就職希望者約2,000人のうち、約36%に当たる712人の学生の就職先が卒業の1カ月前で決まっていないとみられる。この値は前年よりも2.8ポイント上昇しているとされ、大学側が懸念の払拭に躍起となっている。
インドの最高学府といわれるIITは国内に23校ある。マハーラーシュトラ州ムンバイにあるIITBはトップレベルにあり、教育省の2023年大学ランキングでは、23校中マドラス校(IITM)、デリー校(IITD)に次ぐ第3位、全大学でも第4位と評価されている。なお、同支援グループはIITMとIITDの2024年卒業生の現時点での内定率は明らかにしていない。
IITでは学業に影響を与えないようにするため、大学側が厳格に規定した採用ルールスケジュールにのっとって、大学主催で採用面接イベント(Placement Cell)が行われる。採用面接は毎年12月1日に解禁されるが、最初の数日が面接実施のピークとなる。4月時点で就職先が決まっていない場合、大学主催の採用プロセスでは就職先を見つけることは難しい状態といえる。内定率低下の報道を受け、IITBは4月4日にX(旧Twitter)の公式アカウントで「2023年の卒業時点での調査で、求職中の学生は6.1%にとどまっていた」と投稿した(「インディア・トゥデー」4月5日)。
IITBの内定率低下の背景には、高額給与提示のメディア報道などにより、学生の希望する給与水準が高騰し、企業側が採用をためらうことがあると思われる。IITBが2023年8月に公表した報告書によると、2023年の初任給(年収)の平均は約167万ルピー(約300万円、1ルピー=約1.8円)で、年収1,000万ルピーを超える提示も16件あった。しかし、学生個人のレベルや分野、勤務地(国内か国外か)などによってその幅は非常に大きく、全体の約65%は平均未満、最も低い提示額は60万ルピー未満だった。
特に人工知能(AI)など特定のエンジニア分野では給与水準が高騰、給与の年功序列傾向が強い日系企業が最上位層の学生を採用することは難しくなっている。しかし、学生のレベルや分野によってその水準は大きく異なり、インドの高度理系人材採用には日系企業にも十分にチャンスがある。企業側は具体的なジョブディスクリプション(職務記述書)やキャリアプランはもちろんのこと、給与、住宅手当、通勤手当、福利厚生などを含めた企業が負担する年間給与総額(CTC:Cost To Company)を明確にした上で、どのレベルの大学・学生にアプローチをするのか戦略を立て、学生へのアピール機会を増やしていくことが重要となる。
(丸山春花)
(インド、日本)
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