Creepy Nuts『Bling-Bang-Bang-Born』ヒットも日本の「コミックソング」の限界
週刊女性PRIME / 2024年4月8日 11時30分
R-指定とDJ松永の2人によるヒップホップユニット・Creepy Nutsの『Bling-Bang-Bang-Born』が世界中で大バズりしている。
テレビアニメ『マッシュル-MASHLE-』(TOKYO MXなど)のオープニングテーマでもある同曲。今年、1月の配信日と同日にYouTubeにスタッフクレジットのないオープニング映像がアニプレックスのチャンネルに投稿されると、わずか2週間で1000万再生を突破。
Creepy Nutsのヒット曲、『猫ミーム』との類似点
「ブリン・バン・バン・ボン!」という、意味不明ながらキャッチーなフレーズと、アニメーションでリズミカルに描かれたキャラクターたちのダンスは、次第にTikTokを始めとするSNSに拡散。「#BBBBダンス」として世界中で同曲をBGMにしたダンス動画が流行した。
結果、1月時点でTikTokで同曲を使用した動画は、合計1億9000万回以上再生されたという。
「Bling-Bang-Bang-Born」は日本の十八番芸で「人気アニメのオープニングで使用された」ことと、そのオープニングのダンスも真似したくなるようなものだったため、世界中でここまで聴かれたのだろう。
しかし、このヒットを素直に喜べない音楽関係者の声もある。
「SNSで同曲が使用されているのは“意味をなさない語呂のいいフレーズを連呼”するサビの部分だけであり、曲全体が聴かれているかといったらそうではない。TikTokなどのSNSではサビだけが“トリミング”されてしまうことで、AメロやBメロまでたどり着くリスナーは少ないでしょう。
これでは日本のインターネット上で流行している『猫ミーム』のBGMで流れる〈チピチピチャパチャパ〉こと、2003年にチリの子役であるクリステルが発表した『Dubidubidu』の消費のされ方と大差ありません。
これらは楽曲そのものが評価されているのではなく、“なんだか頭に残る変な曲”という認識に留まっているのです」(音楽メディア編集者、以下同)
「頭から離れないフレーズ」を作り上げ、それを国内だけではなく、他国でヒットさせたのだから、正直それで良いのではないかと思うが、同氏はさらに語気を強める。
「結局、日本を含め、非英語圏に求められるのは、“意味をなさない語呂のいいフレーズを連呼”するようなコミックソングだけなのかという、悔しさがあるんです。
K-POPが世界を席巻していると言われて久しいですが、欧米のマス(大衆)でもっとも受けたのはBTS以前のPSYによる『カンナムスタイル』くらいでしょう。これも〈オッパカンナムスタイル〉とサビで連呼しながら、乗馬ダンスをしたことで話題になりました。
『Bling-Bang-Bang-Born』の評価もR-指定による超絶早口ラップと、DJ松永が『Jersey Club(ジャージー・クラブ)』を取り入れたトラックではなく、〈ブリン・バン・バン・ボン!〉という“意味をなさない語呂のいいフレーズを連呼”だけです。
すべて通して聴くと、随所に素晴らしい箇所あるのに、これが海外では、違法アップロードされたくしゃくしゃの猫のBGMと同じようにしか受け入れられないという現状が堪らないんです」
ただ、これは日本に限った話ではなく、歴史を振り返ってみれば、世界中でヒットした非英語圏の楽曲も「意味をなさない語呂のいいフレーズを連呼」するようなものが多かった。
「90年代は〈へー、マカレナ!〉というサビでおなじみの、ロス・デル・リオが発表した楽曲をアメリカのベイサイド・ボーイズがリミックスした『恋のマカレナ』、00年代は〈マイアヒーマイアフーマイアホーマイアハッハー〉というサビが印象的な、モルドバ出身のO-Zoneによる『恋のマイアヒ』などが非英語圏のヒット曲ですが、これも“何語かわからないけどサビのフレーズが頭から離れない”というものでした。
各国にはさまざまな名曲があるにも関わらず、世界的に非英語圏の楽曲はコミックソング的なものしか受け入れられないというのは、今も昔も変わらないですよね」
今回の『Bling-Bang-Bang-Born』のヒットを受けて、各国で似たような曲が制作され始める頃だろう。願わくば、ヒットチャートが「意味をなさない語呂のいいフレーズをサビで連呼する楽曲」で溢れなければいいが、果たしてそれが売れるかどうかは誰にもわからない。
取材・文/千駄木雄大
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