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一見さんお断りのフェラーリ「スペチアーレ」 明暗分かれたモダン・フェラーリの価値

くるまのニュース / 2020年9月4日 19時10分

フェラーリには、選ばれしカスタマーにしか新車で手に入れることができない「スペチアーレ」が存在する。また、追加でオプション料金がかかるが、自分好みの仕様にできる「テーラーメイド」というプログラムもある。どちらも「特別」であることに違いないが、オークションでの評価はどうなのだろうか。

■一見さんお断りのフェラーリ「スペチアーレ」モデル

 毎年8月、北米カリフォルニア州モントレー半島で開催される「モントレー・カーウィーク」では、アメリカだけではなくヨーロッパのオークションハウスも、全社を挙げた大規模オークションを開くのが恒例となっている。

 そんななか、規模・格式ともに最高ランクとなるのがRMサザビーズ社の「MONTELEY AUCTION」。ところが2020年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で「カーウィーク」ともどもキャンセル。代わりに「SHIFT MONTLEY」と銘打った、オンライン限定オークションを開催することになった。

 オンライン限定とはいえ、RMサザビーズ社にとってもフラッグシップ的なイベントとなるモントレーの代替えということで、例年の「SHIFT MONTLEY」は出品車両の台数・内容ともにトップクラスとなったのは、これまでにもお伝えしてきたとおりである。

 そんななか、今回VAGUEが注目したのは、またしてもフェラーリ。ともに現代のフェラーリ量産モデルのフラッグシップ「F12ベルリネッタ」から発展した2台、「F12tdf」と「812スーパーファスト」である。

 F12シリーズの最後を飾ったスペチアーレと、今もなおフェラーリのシリーズ生産モデルの頂点に立つ12気筒ベルリネッタの持つ神通力は、たとえオンライン形式のオークションであっても健在なのだろうか。

●2017 フェラーリ「F12tdf」

限定799台のフェラーリ「F12tdf」。限定モデルとしては、少々台数が多すぎたか……(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's限定799台のフェラーリ「F12tdf」。限定モデルとしては、少々台数が多すぎたか……(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 フェラーリF12tdfは、2012年に登場した「F12ベルリネッタ」の最後を飾るべく、2015年末に発表。翌年から世界限定799台のみが作られた、いわゆる「スペチアーレ」のひとつである。

 デビュー以前のスクープ情報などでは「F12スペチアーレ」ないしは「F12GTO」というネーミングになると噂されていたが、実際にはかつて隆盛を誇ったフランスの公道/サーキット併用レース「トゥール・ド・フランス(Tour de France)」にて、一連の250GTベルリネッタが大活躍した故事へのオマージュとして「F12tdf」と名づけられた。

 V型12気筒エンジンは、ベースとなるF12ベルリネッタ比で40psアップとなる780psのパワーと、プラス1.5kgmとなる71.9kgmのトルクを発生する一方で、ボディはカーボン素材の多用などで110kgもの軽量化を達成。

 ギアレシオを専用チューンした7速DCTとの組み合わせで、0-100km/h加速ではF12ベルリネッタより0.2秒速い2.9秒、最高速は340km/h超という、世界屈指のパフォーマンスを実現したとアピールされた。

 またシャシでは「599XX」などのXXプログラムで培われたノウハウを投入。タイヤ幅を225から275に、リム幅を9.5インチから10インチに拡大したフロントタイヤ&ホイールの採用。「バーチャルショートホイールベース」と称される後輪操舵システムが、フェラーリでは初めて採用されたことによって、最大横加速度とハンドリングを大幅に向上させたといわれている。

 この種のフェラーリ「スペチアーレ」は、正式発表される以前に「完売」となってしまうのが通例だ。長年フェラーリと良い関係を維持し、事前に正規ディーラーから入手を打診されるような「特別な優良顧客」以外は、正規の新車としては入手できないのが実情といわれている。

 そのせいか、ユーズドカーとして市場に出る場合には、新車価格を大きく上回るフェラーリ製スペチアーレの通例どおり、F12tdfも昨年ごろまではもしマーケットでFor Saleとなれば、日本円にして1億円以上で取り引きされるのが、半ば当然となってきた。

 しかし、新型コロナ禍による需要の冷え込みを想定してであろうか、今回「SHIFT MONTLEY」出品にあたってRMサザビーズが設定したエスティメート(推定落札価格)は80万ドル-95万ドル(邦貨換算約8450万円-1億円)という、いささか弱気にも見えるものであった。そしてネット上の競売は、75万ドルまで上がったところで締め切りとなった。

 オークションハウス側に支払われる手数料まで込みにすれば、なんとかエスティメートに達する82万5000ドル(邦貨換算約8700万円)には到達したようだ。

 しかし、ことモダン・フェラーリについては、もはや以前のマーケット感ではなくなりつつあることを示しているのでは? というのも、正直な感想なのである。

■オプションに3000万円かけたフェラーリに値打ちはあるのか

 フェラーリ812スーパーファストは、2017年3月に開催されたジュネーヴ・ショーにてワールドプレミアに供された、F12ベルリネッタの後継モデルだ。

「800ps+12気筒」を意味する車名が示すように、フェラーリの量産ストラダーレ史上もっともパワフルという、最高出力800psの6.3リッターV型12気筒エンジンを搭載する。

 一方の「スーパーファスト(Superfast)」は、1964年にピニンファリーナ主導でごく少数を製作した伝説の超豪華モデル「500スーパーファスト」のペットネームにあやかったものである。

●2018 フェラーリ「812スーパーファスト・テーラーメイド」

およそ3000万円ほどのテーラーメイド・プログラムを施したフェラーリ「812スーパーファスト」。この年式のフェラーリだと、テーラーメイドにかかった費用はあまり落札価格には反映されないのが常だ(C)2020 Courtesy of RM Sotheby'sおよそ3000万円ほどのテーラーメイド・プログラムを施したフェラーリ「812スーパーファスト」。この年式のフェラーリだと、テーラーメイドにかかった費用はあまり落札価格には反映されないのが常だ(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 その麗々しいネーミングが示すとおり、いわゆる「スペチアーレ」を除けば格別にゴージャスなフェラーリなのだが、さらに今回の「SHIFT MONTLEY」出品車両は特別中の特別な1台であった。

 エクステリア/インテリアに関するあらゆる特別オーダーにも応えるために、フェラーリ本社が2011年末から開設した「テーラーメイド・プログラム」によって、ビスポークで製作された1台なのだ。

 オリジナルカラーである「Giallo Nancy(ナンシーイエロー)」でペイントされたボディには、イタリア国旗の「トリコローレ」をアレンジしたストライプが、フロントバンパーから左右ボディサイドのボトムを飾っている。また、ボディの随所にカーボンファイバーのパーツがあしらわれ、引き締まった雰囲気を醸し出している。

 一方インテリアは、パンチホールやステッチをイエローとして黒革のレザーハイドとのコントラストを際立たせるほか、アルカンターラとカーボンファイバー、そしてイタリア国旗色を巧みに使用することでボディカラーのテーマを反復するなど、実に29万ドル(邦貨換算約3000万円)分のエキストラが盛り込まれていたという。

 ただし、個人の嗜好が濃厚に反映されたクルマが他人にとっても魅力的かどうかは、また別のお話しとなるのが常。しかしこの個体については、ビスポークでオーダーしたファーストオーナーのテイストが、なかなか好意的に受け取られたようだ。

 この華やかな812スーパーファストに対して、RMサザビーズ社は35万ドル-39万ドル(邦貨換算約3700万円-4100万円)のエスティメートを設定していたのに対し、8月中旬に締め切られたオークションでは、34万ドルまで上がったところで終了。オークショネアに支払われる手数料を合わせれば、エスティメートに届く37万4000ドル(約3950万円)という、けっこうなプライスとなったのだ。

 ほぼ同じ時期に、RMサザビーズ社の最大のライバルであるボナムズ社が開催した「Quale Motorcar Auction」では、テーラーメイドまではいかないものの、オプションを満載した812スーパーファストの落札価格が31万250ドル(約3270万円)に終わったことと比べると、テーラーメイドにはそれなりの評価が下されることを示しているようだ。

 しかし、「F12tdf vs 812スーパーファスト」、つまりは「スペチアーレvsテーラーメイド」の対決についていうならば、やはり「スペチアーレ」の圧勝に終わった……、といえるだろう。

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