「お父さん帰って来ない」王将社長射殺から10年、娘を今なお苦しめる喪失感

大東さんが殺害された現場付近で、風車と花を手向ける次女真弓さん（19日午前7時18分、京都市山科区・王将フードサービス本社前）

　「餃子の王将」を展開する王将フードサービス（京都市山科区）の社長だった大東隆行さん＝当時（72）＝が射殺された事件は19日、発生から10年を迎えた。昨年10月、実行犯とされる福岡県の暴力団組員が逮捕されたが全容解明に至っていない。現場となった本社前で大東さんの娘は「お父さんは帰って来ない。苦しい思いをしてきた10年だった」と涙をぬぐった。

　寒さが厳しい早朝から大東さんの遺族や関係者、地元住民が本社前を訪れ、祈りをささげた。事件が起きた午前5時45分に合わせて献花する人の姿もあった。

　大東さんの次女真弓さん（52）は父が急逝したことについて「まだまだ話したいことは、たくさんあった。ぽつんといなくなった」と喪失感を吐露した。事件について「1人逮捕されてよかった。けれど、背後に何かあるはずなので捜査を進めてほしい」と願った。

　事件は2013年12月19日、京都市山科区の王将フードサービス本社前で、大東さんが拳銃で腹や胸を撃たれて殺害された。京都府警・福岡県警合同捜査本部（山科署）は昨年10月28日、実行犯とみられる特定危険指定暴力団工藤会（北九州市）系石田組幹部の田中幸雄被告（57）を逮捕、京都地検が殺人罪などで起訴した。捜査本部はこれまでに延べ約29万1千人の捜査員を投入。大東さんと田中被告に個人的な接点がなく、組織的な犯行とみて共犯者の捜査を進めている。