社説:国産旅客機開発 失敗検証し生かせるか
京都新聞 / 2024年4月5日 16時0分
再び飛び立てるのだろうか。
経済産業省が新たな航空機産業戦略を策定した。2035年以降をめどに、官民で次世代の国産旅客機の開発を目指すという。
国産初に挑んだ小型ジェット旅客機スペースジェット(旧MRJ)の開発撤退の轍(てつ)を踏むわけにはいかない。その教訓をどう生かすかが問われよう。
日本の航空機産業は、戦後唯一の国産旅客機YS11以降、完成機製造が途絶え、海外の大手メーカーへ部品を供給するだけだった。
約半世紀ぶりに三菱重工業がMRJ開発に取り組んだものの、昨年2月に撤退した。度重なる設計変更で開発が遅れた上、ノウハウ不足で商業運航に必要な「型式証明」を取得できず、約1兆円に上る開発費が重荷となった。
300万点の部品が使われる航空機は、中小企業を含め関係する業界の裾野が広い。完成機を造れれば波及効果は大きい。
新たな国産機開発は、複数企業に参画を求め、官民で5兆円程度を投資。脱炭素化を見据え、ジェット機ではなく水素や電気などを動力として想定する。機内の通路が一つで、世界的な需要が見込める百数十席クラスの単通路機を軸に開発を試みるそうだ。
だが、旧MRJの挫折を検証することなく、再起は望めない。
新戦略に際し、経産省は安全認証プロセスへの理解不足や市場環境の変化などを失敗要因と分析する。一方で開発に関わった人材や経験を生かすことができ、「完成機事業の素地は整いつつある」とみる。
だが、新戦略は背伸びし過ぎの感が否めない。いまだ「ものづくり」への過信が見え隠れする。競争が激しい航空機市場への、周回遅れでの参入だけに、ハードルは極めて高いとみるべきであろう。
いかに開発力やコスト管理、営業力で優位に立てるか、採算ラインの受注ができるか―が成功を左右する。純国産に固執せず、先行の海外大手メーカーからも技術やノウハウを学ぶ必要があろう。
政府は、経済安全保障や防衛の観点からも航空機産業の重要性は高いとし、戦略実現に前のめりだ。
しかし、500億円の公費を投じた旧MRJはもとより、昨今、政府が主導した産業政策は半導体や液晶事業の立て直しなど失敗続きだ。巨費を投入するプロジェクトはいったん動き出すと止まらないのが悪弊と言えよう。状況に応じて事業や支援の見直しが欠かせない。
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