社説:震災と子ども 心安らぐ「居場所」の支援を
京都新聞 / 2024年5月5日 16時0分
我慢を重ね、つらい気持ちを抱え込んでいないだろうか。
きょうは「こどもの日」。能登で災害に見舞われた子どもたちの支えを見つめ、育みを考えたい。
能登半島地震の発生から4カ月が過ぎた。被害が大きい石川県の輪島、珠洲、能登、穴水の4市町では、新年度の公立小中学校に通う児童生徒が、地震前より2割以上減ったという。
発生当初、校舎が損壊したり避難所になったりして休校が続き、一部の中学生は3月まで集団生活を送った。年度替わりもあり、避難先などへの転校が多かったとみられる。
奥能登では道路の寸断や断水が長引き、復興の行方に不安が拭えない。ふるさとに残るにせよ、離れるにせよ、親子で苦しい選択を迫られたに違いない。
5月に入り、輪島市ではようやく学校給食が再開された。1学期は、校舎が被災した六つの小学校が、特別支援学級とともに一つの中学校に間借りする。珠洲市では小学校のグラウンドに仮設住宅が建設された。
生活再建の過程でやむを得ないとはいえ、学びの環境が大きく変わり、ストレスをためる児童や生徒も多いだろう。能登から転出した子どもたちの受け入れ先も含めて、学校や地域の丁寧なケアが欠かせない。
これまでに京都府や滋賀県の教員らが七尾市などの学校で支援に入った。引き続き、国や他府県のサポートが求められる。
能登半島地震では、高齢者や障害者、妊産婦ら「要配慮者」を受け入れる福祉避難所を開設できたのは想定の2割にとどまった。妊婦が市町を超えて産婦人科に向かい、出産できたケースもあったという。
背景には、介護、福祉関係の人手不足や地域による医師の偏在がある。災害時に最もしわ寄せを受けるのが要配慮者だ。格差を埋める府県の役割が一層、問われよう。
京都や滋賀はどうか。わがまちに引きつけて備えたい。
京都市は看護学校などに「妊産婦等福祉避難所」を設けるとしているが、利用するには一般の避難所にいったん出向き、保健師の健康調査を受ける必要がある。円滑で迅速な受け入れの工夫が不可欠だ。
震災からの復興には長い時間を要する。子どもたちは不便な暮らしを強いられるだけに、心が安らぐ「居場所」の確保が大切になる。
家庭や学校だけでなく、「第三の場所」にも目を向けたい。能登では県外のNPOが避難所で学習や遊びの場を開いたが、設置数や期間が限られている。
阪神大震災や東日本大震災では、つらい体験をした子どもたちが長期にわたる心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんだ。小さな声に耳を傾け、個々に寄り添い続ける体制が必要だろう。
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