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就寝中、愛猫が側で寝ている幸せをかみしめる でも「ある思考」が浮かんでしまい「おしまいだ」

マグミクス / 2023年10月3日 19時40分

写真

■妄想を駆りてられ「ヒヤッとする」

てっ、てっ、てっ

 半ば夢の中、残りの意識で耳が足音を拾った。猫が歩いてきているらしい。

 肉球だけが床を叩いている。爪が長いときはチャッタ、チャッタ、と爪先がフローリングにあたって弾む音も加わるのだ。足音までかわいいなどと、まったく度し難い生き物である。

 半分寝ているので体はぴくりとも動かないが、意識は目覚めてしまったのでそのまま猫の来訪を待つ。そのままどこかに行ってしまうこともあるが、まれに寝床に上がってきてくれることもあるのだ。こちらが起きていることを察すると10割来ないが、今回は体の方は寝ているのでなんとかなるかもしれない。

 部屋の中に入ってくる。しばらくの後マットレスがほんの少し、小さい脚2本分だけ沈む。伸びあがってこちらの様子をうかがわれているのだ。うっかり体が動くとぴゃっとどこかに行ってしまうので緊張するが、今は動かそうとしても動かないので大丈夫だろう。

 部屋をうろうろとして、また伸びあがってのぞき込み、を何度か繰り返した後。ぎ、とマットレスが大きく沈み次の瞬間には細い脚が4本、側に立っているのが分かる。自分が寝ているところ以外の空いているスペースを歩き回り、おそらくこちらの顔のすぐ近くまで来て匂いを嗅いでいる。ふすふすと鼻息が当たるのだ。そして腰のあたりにとすんと座り込んだ感覚。成功だ! 猫が側で寝ている。やったぁ。

 ここまでは良かったのだが、このときは前述した通り体が動かなかった。つまり瞼(まぶた)すら開かない。猫を確認もできない悲しみ。ここまでもまあ仕方がないのだが、この後の思考がよくなかった。

「本当に猫だろうか」

 こうなったらおしまいだ。頭の中、猫位の大きさの4本足のけむくじゃらで温かい不可思議な生き物たちが肩を組みラインダンスを踊り始める。夢でその生き物たちが開催しているバザーに赴く羽目になってしまった。小さな、その生き物に合いそうなサイズの靴がいっぱいあった。

 起きると猫はどこにもいなかった。あの生き物だけがしっかりと脳内に鎮座している。いまだいなくなる気配はない。

(迷子)

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