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ヒットには必須? 大手ゲームメーカーが「ゲーム配信」のガイドラインを公開するワケ

マグミクス / 2023年11月24日 17時10分

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■ゲーム配信が結ぶ、メーカーとファンの関係性

 インターネットとスマートフォンの普及、通信回線の向上、各種サービスの台頭などが相まって、個人でも簡単に情報が発信できる時代となりました。活用方法は人によってさまざまですが、そのひとつの形態である「ゲーム配信」や「実況プレイ」と呼ばれる配信も、右肩上がりに増えています。

「ゲーム配信」とは、実況者がゲームをプレイし、その模様を配信するというもの。実況者のファンはもちろん、そのゲームが気になっているユーザーも関心を示すため、この配信スタイルは高い人気を誇っています。

 こうしたゲーム配信が盛んな理由は、各メーカーが明確な「配信ガイドライン」を公開している点も大きく関係しています。ゲームは著作物なので、権利者の許諾を得るか、引用や私的利用といったケースを除き、権利のない者が扱うことはできません。

 ですが、「配信ガイドライン」に従うことで、著作権侵害をせずに誰でもゲーム配信が行えます。ゲームという人気コンテンツをおとがめなしで扱えるとなれば、乗り出す人が増えるのも当然でしょう。

「配信ガイドライン」の範囲内であれば誰でも自由に扱えますし、収益を得ることも可能なので、利用者のメリットは計り知れません。ですが、各ゲームメーカーがガイドラインを提示するメリットはどこにあるのでしょうか。

●配信者の目安となる「配信ガイドライン」

 ゲームメーカーにとって自社のゲームは、大事な作品であり商品です。当然、著作物の扱いは慎重になりますし、ほかの法人がその会社の作品を扱いたいと申し出た場合、厳密な契約を交わすのが大前提です。

 ですが(事務所契約などがない)個人が行うゲーム配信の場合、「配信ガイドライン」さえ遵守すれば個別の申請すら不要な場合も多く、著作物の取り扱いとしてはかなり緩やかと言えます。

 無論、「配信ガイドライン」自体は細かく定められているので、決して軽い扱いではありません。例えば、「配信可能なタイトル」「実際にプレイしているものに限る、といった動画内容に対する規定」「配信サイトの指定」「配信可能範囲(ネタバレを懸念して)」「禁止事項」など、その内容は多岐にわたります。

 また「収益化」にも言及されており、いわゆる「投げ銭」や「スーパーチャット」を禁じる場合も多くあります。ただし、動画共有サイトの仕組み(パートナープログラムなど)を通じての収益化なら認めるケースもあるので、全ての収益化を一概に禁じているわけではありません。

●「ゲーム配信」がもたらす、メーカー側のメリット

 一定の許可を与える行為は、責任の発生やトラブルを生む可能性が伴います。全面的に禁止すれば問題を未然に防げるのに、現状では多くのメーカーが「配信ガイドライン」を提示し、配信者の存在を許容しています。

 なぜメーカーは、ゲーム配信を認めているのか。細かい理由は多々ありますが、そのなかでも「知名度の向上」と「コミュニティの活性化」が特に大きい理由と思われます。

 ゲームを作る「開発費」が年々高騰していますが、その存在を知らしめる「広告宣伝費」も留まるところを知りません。どれだけ面白いゲームを作っても、誰にも知られていなかったら売れるはずもなく、できるだけ多くの人に知ってもらうのは最重要事項のひとつです。

 そのため莫大な費用を投じて知名度の向上を目指しますが、広告では手が届かない人たちもやはり存在します。そんな人たちの一部が、ゲーム配信を通じて作品を知る場合もあるため、「知名度の向上」に一役買ってくれます。

 また、実質的な売り上げとは別に、メーカーが喉から手を出してでも欲しいのが「活発なコミュニティ」です。ファン同士の間で大きく盛り上がるほど、その影響は拡散しますし、ファン同士の交流が続くほど、その作品は長く愛されます。

 作品の寿命が延びれば、ロングランヒットも狙えますし、シリーズ化や続編の見通しも立ちやすくなります。そして続編が出ればファンは喜び、コミュニティがさらに活性化する……といった、好循環のスパイラルが生まれます。

 しかしファン同士のコミュニティは、誰かの指図や計画で成り立つものではなく、個々人の活動が積み重なることで大きなうねりへと発展します。ゲーム配信もそのうねりのひとつであり、同時に1個人が何千、何万、何十万もの視聴者に影響を与える可能性を持つコミュニティ活動です。

 ゲーム配信も含め、メーカーがファンの活動を著しく制限すると、コミュニティは萎縮して勢いを失います。過度な制限は、メーカー側のメリットすら奪いかねないので、一定の理解を示すのは至極当然の話でしょう。

■ゲーム配信を積極的に活用するコナミデジタルエンタテインメント

『桃鉄ワード』のキャンペーンでもらえる「銀の桃盾」と「金の桃盾」(先着順)

●任天堂が提示したガイドラインが話題に

 ちなみにガイドラインの制定は、ゲーム配信だけに限った話ではありません。例えば、先月24日に任天堂が「ゲーム大会における任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」を公開し、話題となりました。

 大会の開催と配信は全然違うように見えますが、他社の著作物利用や、コミュニティの活性化が期待できるという点で共通しています。

 任天堂が提示したゲーム大会におけるガイドラインは、特に「出場料」や「観戦料」について触れたことが話題となりました。任天堂は、ゲーム配信における収益化を、動画共有サイト側が提供している制度内でのみ認めています。しかしゲーム大会では、このガイドラインで許可するのは「営利を目的としない」場合のみ。営利を目的とするゲーム大会を、自由に開くことができません。

 しかし、大会の開催にはお金がかかり、その全てを主催者が負担するのは荷が重い話です。任天堂もその点は考慮しており、「大会設営費用に充てる目的のみ」と限定した上で、出場料および観戦料の徴収を認めています。ファンに向けたコミュニティ活動の範囲(=非営利目的)ならば、大会設営費用の総額を上回らない範囲で出場料および観戦料を求めることができます。

 ゲーム大会は、個人のコミュニティの活動としてはかなり大掛かりな部類です。また、開催にかかる費用は規模によって異なるものの、重く圧しかかるのは間違いありません。そうした大会開催のネックを(非営利の場合に限りますが)緩和する手段が認められているのは助かりますし、コミュニティの活性化にも一役買うことでしょう。

●ガイドラインの提示だけに留まらない、「ゲーム配信」の積極的利用

 またメーカーは、「配信ガイドライン」を提示して終わりではなく、むしろ積極的にゲーム配信を活用する場合もあります。例えばコナミデジタルエンタテインメントは、各タイトルごとに分かれた「動画投稿ガイドライン」を用意するだけでなく、同社の最新作『桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!~』(以下、桃鉄ワールド)に関連する「動画投稿応援キャンペーン」も展開中です。

 この「動画投稿応援キャンペーン」は、『桃鉄ワールド』のプレイ動画投稿の応援を目的としており、動画共有サイトにチャンネルを持つ日本在住のクリエイターなら誰でも参加できます。

 その内容は、『桃鉄ワールド』をプレイした動画を配信し、その視聴数の合計再生数(複数動画の合算可)50万回、および100万回を目指すというもの。規定回数をクリアし、専用の応募フォームから申し込めば、50万回再生なら「銀の桃盾」、100万回再生なら「金の桃盾」が先着順でもらえます。

 さらに、インフルエンサーに協力を仰ぎ、『桃鉄ワールド』発売前にプレイ動画を先行配信する試みも行いました。芸人の陣内智則さん、VTuberの橘ひなのさんや小森めとさん、ストリーマーのSHAKAさんなど、錚々たるメンバーが自身のチャンネルで『桃鉄ワールド』を楽しむ様子を公開しています。

「動画投稿ガイドライン」の提示に留まらず、インフルエンサーを介したプレイ動画の配信、チャンネルを持つクリエイターの動画投稿を後押しするキャンペーンなど、積極的に「ゲーム配信」に力を入れたコナミデジタルエンタテインメント。こうしたメーカー側からの活用は、今後ますます増えていくものと思われます。

* * *

「ゲーム配信」は、目新しい表現という時代を過ぎ、今では定番のコンテンツとなりました。こうしたファン活動ができるのは、「配信ガイドライン」があるからこそ。そのおかげでファンは全力で「好き」を表現でき、結果的にコミュニティが大きく盛り上がります。

「配信ガイドライン」の提示は、メーカーとファンがwin-winの関係になる指針、とも言えるのです。

(臥待)

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