あわや放送事故に ファン置いてきぼりで物議をかもしたアニメ3選「…え?」「理解が追いつかん」
マグミクス / 2023年12月9日 19時10分
■紙芝居回の裏にはのっぴきならない事情があった?
満を持してTVアニメ化された作品が、必ずしも賛辞を浴びるとは限らず、「どうしてこうなった……」と言われてしまうことも珍しくありません。作画やシナリオなどをめぐって、物議が巻き起こることがあるのです。ある種の「伝説」として語り草になっている作品について、振り返ってみましょう。
1982年に放送されたアニメ『超時空要塞マクロス』は、『オーガス』『サザンクロス』の3作品からなる「超時空」シリーズ第1弾にあたる作品です。「歌」「メカアクション」「三角関係の恋愛ドラマ」といった3つの要素を織り交ぜた独創的な世界観や、息もつかせぬ空戦アクションが見どころのひとつになっています。特に作画監督の板野一郎氏が手がけたアクロバティックなミサイル乱射アクションは、業界で「板野サーカス」と命名され、のちのロボットアニメのアクション演出に多大な影響を与えました。
まさにSFアニメの金字塔であることに間違いないのですが、それと同時に『マクロス』は作画崩壊が非常に多かった作品としても知られています。というのも同作のアニメスタッフは家に半年以上帰れないほどブラックな環境下に置かれており、そのひとりであった板野氏いわく、倒れて吐血してやっと家に帰らせてもらったそうです。そんな過酷な制作現場にスタッフはおろか制作進行まで逃げ出し、素人同然の学生がOPの絵コンテを務めなければならないほど現場は切迫していました。
ちなみにその絵コンテを担当した学生は、ガイナックス元代表取締役社長の山賀博之さんであり、駆り出された学生のなかに、のちの「エヴァンゲリオン」シリーズを手がけた庵野秀明さんも参加していたことは知る人ぞ知るところでしょう。山賀さんも後年のインタビューで「(マクロスは)テレビで放映する商業作品なのに、作り方は自主制作並み」と当時を振り返っていました。
もちろんそんな状態のまま制作が順調に進むわけもなく、第11話「ファースト・コンタクト」ではついに動画が間に合わず、まるで「紙芝居」のような仕上がりになっていたのです。もはや「作画崩壊」というより「動画崩壊」といったほうが正しいような有様で、ネット上でも「『マクロス』11話はマジで紙芝居」「静止画の連続が平然と放送されたのを見たときの衝撃といったら……」「初めて目にした作画崩壊が『マクロス』だったから大概のことでは驚かない(笑)」といった声があがっていました。
とはいえそんな『マクロス』第1作目が放送されて以来、『マクロスプラス』『マクロスゼロ』『マクロスF』などの新作がつぎつぎと制作され、今や40年以上続く人気シリーズです。それもこれも過酷な状況下にありながらギリギリのところで踏ん張った、当時のアニメスタッフたちの功績ではないでしょうか。
■大人気アニメの意味深すぎる最終回に「ぽかーん」?
タイトルにある「√A」の「A」は、アニメのAとも、「アオギリの樹」のAとも考えられているようです。 画像は『東京喰種トーキョーグール√A』キービジュアル (C)石田スイ/集英社・東京喰種:re製作委員会
2015年1月に放送されたアニメ『東京喰種トーキョーグール√A』も、『マクロス』とはまた違った理由で物議を醸した作品です。原作コミックスは全世界累計4700万部を突破した人気作で、2014年7月にTVアニメシリーズ第1期が放送、『東京喰種トーキョーグール√A』はそのあとに放送された第2期にあたります。
第1期はほぼ原作通りの展開を迎え、最終回では喰種集団「アオギリの樹」の幹部ヤモリによる拷問のすえ、主人公の金木研(カネキ)が覚醒するラストで幕を閉じました。本来ならこのあとカネキは「あんていく」を去り、月山習たちとともに「反アオギリ」として行動しますが、第2期では「あんていく」を去ったあと「アオギリの樹」に加入するというまさかの展開を迎えます。
というのも第2期は、原作者の石田スイ先生が描き下ろしたオリジナルストーリーで、原作とは異なる展開が描かれているのです。もちろんこのifストーリーを評価する声も多く見られますが、一方で「原作通りにしてほしかった」という声も少なくありません。
また最終回はかなり意味深なラストで幕を閉じるうえ、物語終盤ではカネキがただひたすら歩く描写が延々と繰り広げられたため、ネット上では「え、理解が追いつかない。最後どうゆうこと?」「どうしてこうなった……」「√Aの最終回は何度見ても泣ける」「見終わった後の余韻がすごい」などと賛否両論が巻き起こりました。
最終回がいろいろな意味で「伝説」となった『東京喰種トーキョーグール√A』に対して、アニメ第1話が話題になった作品がアニメ『ありふれた職業で世界最強』です。
同作はシリーズ(紙+電子)累計発行部数600万部を突破した白米良先生の同名小説を原作にした物語で、2019年7月にアニメ第1期が放送されています。物語の内容はいじめられっ子の主人公がクラスメイトとともに異世界へ召喚され、気が付けば世界最強になっていた……という異世界転送もののお約束ともいえる内容なのですが、そのアニメシリーズでは原作における重要な設定や場面がことごとく省略されていました。
たとえばこれがコミカライズ版だと、まず異世界に召喚された生徒たちは慌てふためき、この国の住人である教皇の口から「彼らが召喚された理由」や「異世界の世界観の説明」などが語られ、クラスメイトたちによる話し合いが行われています。対してアニメ第1話ではそもそもこの教皇は登場せず、主人公のナレーションによって召喚された理由がパパっと語られると、つぎの瞬間には状況を理解し、己の使命を全うしようとするクラスメイトたちが映し出されるのです。
それはまるでダイジェスト映像かのような展開で、原作を知らない視聴者のなかには終始ぽかーんとなった人も多いのではないでしょうか。実際にネット上でも「テンポはいいけれどダイジェスト感は否めない」「まるでマンガ1巻の話なんてなかったみたいな感じ」といった声があがっていました。
とはいえ、良くも悪くもこれだけ話題になるのは、それだけ原作やアニメそのものが愛されている証拠ともいえそうです。物議を醸した部分も一種の見どころとして、今回あげた3作品をあらためて鑑賞してみてはいかがでしょうか。
(ハララ書房)
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