日本テレビを見て育った中高年が現在の日テレ番組を面白く思えない理由?
メディアゴン / 2016年3月14日 7時30分
高橋秀樹[日本放送作家協会・常務理事]
* * *
筆者は少年時代、日本テレビ(以下、日テレ)のバラエティ番組を見て育った。それが間違いない理由もある。筆者が生まれた山形県では、民放が日本テレビ系列の山形放送(YBC)しかなかったからである。
テレビと言えば日テレ。TBS「8時だョ!全員集合」なんて見たこともなかった。その当時、日テレの番組や出演者はブラウン管の向こうでキラキラ輝いて見えた。日テレが映し出す「テレビの国」はピカピカの光線を振りまいていた。昭和35年から40年代の話である。
「シャボン玉ホリデー(1961〜1972)」は歌と踊りとコント。テレビショウの見本である。クレージーキャッツというミュージシャンとして一流の人たちが、なぜ、あんなに上手にコントを演じられるのか。筆者は谷啓さんのコントが好きな「通好みの子ども」であった。ザ・ピーナッツは決して演歌は歌わなかった。
「11PM(1965〜1990)」は夜、ひとりだけ起きてきてこっそり女のハダカを見ていると、母親に見つかった。大橋巨泉という人は遊びならなんでも上手。麻雀、釣り、ゴルフも玄人はだしで、オルガンまで弾ける。朝にまるで弱い朝丘雪路さんはセクシーだ。
後に筆者も巨泉さんとは一緒に仕事をするようになるが、ほんとうによく知っている裏方の心もわかるテレビ怪人だった。ああいう人になりたいと思ったものだ。
「笑点(1966〜現在)」。居並ぶ大喜利の落語家は、誰ひとり面白いと思わなかったが、あの司会をしている立川談志という人はすごい。この人に大喜利の方に回って欲しいと思ったものだ。
「笑待席(1973〜1983)」には、その立川談志と前田武彦がタキシードで出てきて、一本のマイクの前で時事ネタを30分喋るだけの番組。打ち合わせもないのに見事に漫才になっている。「自分は大人になったら2人のようなことが出来るようになるんだろうか」と真剣に悩んだものだ。ところで、この番組のことを人に話しても余り覚えている人がいない。
「コント55号のなんでそうなるの?(1973〜1976)」に出てきた坂上二郎という人を見て、「なんて面白い人なんだ」と思い、それに比べて萩本欽一という人は「笑いの拾い屋」で、特に面白いことは言わないのだ・・・と思って見ていた。その当時は、欽ちゃんのフリが二郎さんを面白くしていることに気づいていなかった。
後に筆者が欽ちゃんと仕事をすることになったとき「僕は、二郎さんのほうが面白いと思っていた気持ちを忘れないようにしたいです」と、生意気なことを言ってしまった。思い出すと、顔から火が出るほど恥ずかしい。
「ゲバゲバ90分(1969〜1971)」はコント作家の作家性がいきていた、ショートコント勝負の番組。後年、「また『ゲバゲバ』をやろうよ」という話になって、20人近い作家が集まったものの、演出家ともめただけで、ひどい出来の、本物とは似ても似つかない醜悪な番組になってしまったことがある。
日テレのドラマといえば「2丁目3番地(1971)」だ。主演・石坂浩二、浅丘ルリ子。今調べて分かったが脚本家もすごい。倉本聰、向田邦子、佐々木守。
「熱中時代(1978〜1981)」は主演・水谷豊。
「傷だらけの天使(1974〜1975)」の主演は萩原健一、水谷豊。脚本は市川森一ほか、監督は深作欣二、恩地日出夫、神代辰巳、工藤栄一が並ぶ。カツドウ屋(映画)さんがつくったドラマだったのだ。
「俺たちの旅(1975〜1976)」。主演・中村雅俊、田中健、津坂まさあき。脚本は鎌田敏夫、畑嶺明、桃井章。筆者は上京していちばんに江ノ電に乗りに行ったことを思い出す。
以上、全て日本テレビ番組であり、日本を代表する名番組たちだ。しかし、その一方で、今の日本テレビに対して筆者が持っているイメージは、「泥臭い」「洒落ていない」である。
必ず見ていた日テレ番組といえば、昔は「今夜は最高!(1981〜1989)」だったが、これは大人の事情で終了させられたと聞く。
現在でも放送している日テレ番組で毎週見ているものといえば「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!(1989〜現在)」だ。ただし、昔はあった冒頭の松本と浜田の喋りがなくなってからは、見る価値のない番組になってしまった。
視聴率では日本テレビの1強4弱と言ってもよいと思う。だが、「VTRをみてしゃべって、VTRをみてしゃべって、VTRをみてしゃべって、VTRをみてしゃべって」・・・全部同じしゃべりの番組のように見えてしまうのである。
つまり、現在の日テレには、チャレンジングな企画先行の番組がないのである。リスクを取って番組作りをしていない気がするのである。だから筆者は今日も、4チャンネルを見ることはなくなってしまう。
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