東北大、中性子星での存在が予想されるクォーク物質に関する新理論を提唱
マイナビニュース / 2024年4月13日 8時30分
東北大学は4月10日、核子(陽子や中性子)などの複合クォーク粒子である「ハドロン物質」から、ハドロン物質が相互に重なり合うような超高密度物質において開放されるクォークが作るとされる「クォーク物質」へのクロスオーバー領域の物理を記述するべく、「クォーク・ハドロン双対模型」を構築したと発表した。
同成果は、東北大大学院 理学研究科 物理学専攻の古城徹准教授、米・ワシントン大学の藤本悠輝研究員らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する機関学術誌「Physical Review Letters」に掲載された。
クォークは通常は単体では存在できず、3個セットの「バリオン」か、2個セットの「中間子(メソン)」となり、これらのクォーク複合粒子は「ハドロン」と呼ばれる。ただし、桁外れの圧力が物質に加わると、バリオン内のクォークの自由度が顕在化し、クォークを基本的自由度とする「クォーク物質」になることが予想されている。
そのクォーク物質が存在するかも知れない領域が、半径10kmほどの天体に太陽の1~2倍の質量が詰まった中性子星の中心付近。原子核物理の典型的な密度の単位として、標準核物質密度n0=0.16fm-3が用いられるが、中性子星の中心領域の密度は5n0程度にも達しており、これは核子同士が互いに重なり合うほどに高密度で、クォーク自由度が顕在化している可能性があるという。
中性子星には質量の上限があり(それを超えるとブラックホールになる)、それを決めるのが、物質が持つエネルギー密度(ε)と圧力(P)を関係づける「状態方程式」(EOS)。EOSが「硬い」という場合、考えているエネルギーにおける圧力が大きいことを意味する。
近年、中性子星の質量上限が更新され続けており、現在は太陽質量の約2.1倍に達している。つまり、中性子星内部は従来考えられていたよりもずっと硬い可能性がある。低密度領域においては比較的柔らかいEOSが示唆されているため、なぜEOSが高密度で急激に硬くなるかわかっていなかったとのこと。
そうした中で「ハドロン物質とクォーク物質は滑らかなクロスオーバー転移でつながっている」という考え方が徐々に浸透してきているという。クォークは、低密度ではハドロン同士の相互作用の担い手として現れ、高密度へと向かうにつれ熱力学的における基本的自由度へと進化するのである。しかしクロスオーバー領域を具体的に記述しようとすると、基本的な自由度がハドロンかクォークなのか明確でないことによる困難に直面する。そこで研究チームは今回、同領域の物理を記述すべく、「クォーク・ハドロン双対模型」を構築することにしたという。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
広島大など、中性子星の自転の急加速現象「グリッチ」の仕組みの一端を解明
マイナビニュース / 2024年4月25日 20時36分
-
アモルファス材料における力の伝播メカニズムを解明 〜高強度・高耐性粉体材料の新規開発に期待〜
共同通信PRワイヤー / 2024年4月22日 14時0分
-
アゾポリマーへのスキルミオン構造のダイレクトインプリントに成功! -物質へのトポロジカルな準粒子の生成、消滅、操作への第一歩-
PR TIMES / 2024年4月12日 15時45分
-
英物理学者P・ヒッグス氏死去、「ヒッグス粒子」存在予言 94歳
ロイター / 2024年4月10日 10時1分
-
重力子と一部の性質が共通する「カイラル重力子モード」の合成に成功
sorae.jp / 2024年4月8日 21時0分
ランキング
-
1GWのUターンラッシュでスマホを活用する技 道路の渋滞情報と、電車の混雑状況を確認しやすいアプリはどれ?
ITmedia Mobile / 2024年5月5日 19時25分
-
2iPhone8でのプレイができなくなるかも?ジンオウガ狩猟中の不具合は次回アップデートで改善予定【モンハンNow】
ガジェット通信 / 2024年5月6日 6時30分
-
3「広告の女の子誰!?」「かわいいな」 ポカリの新CMに出演、ファッション誌で活躍する2人が注目集める
ねとらぼ / 2024年5月3日 8時15分
-
4『ポケモンGO』普段、日本じゃゲットできないポケモンに会える!48時間の“激レア色違い”が熱い「ライバルイベント」ポイントまとめ
インサイド / 2024年5月4日 0時0分
-
5「意味不明な満足度」「ビビリます」 サイゼリヤで1万円分食べてみたら……? コスパ良すぎてもはや恐怖
ねとらぼ / 2024年5月5日 17時0分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください