九大、卵子と精子のエピゲノム修飾「DNAメチル化」に関する謎の一端を解明
マイナビニュース / 2024年4月25日 20時33分
九州大学(九大)は4月24日、代表的なエピゲノム修飾の1つである「DNAメチル化」について、マウスを用いた動物実験で、卵(卵子)および精子のDNAに正確に付加するタンパク質の機能的役割を明らかにしたことを発表した。
同成果は、九大 生体防御医学研究所の久保直樹特任講師(現・大阪大学 微生物病研究所 遺伝子機能解析分野 特任講師)、同・佐々木裕之特別主幹教授(九大 高等研究院 兼任)らの研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。
ヒトをはじめとする二性生物は、卵による母親由来の遺伝子と、精子による父親由来の遺伝子が受精によってそろうことで、両方の遺伝情報を受け継いだ新たな個体を誕生させる仕組みを持つ。受精後に両親由来の遺伝情報が正確に機能することで、受精卵が分裂や分化を繰り返し、最終的にその生物個体の1つ1つの細胞が形成されることになる。
エピゲノム制御とは、ゲノムに対して後天的に付加される情報のことであり、DNAメチル化修飾はその重要な1つで、受精後の遺伝子の働きを制御する重要な役割を担う。DNAの4塩基(アデニン、チミン、シトシン、グアニン)のうちのシトシンにメチル基という化学修飾を加えることで、遺伝子の発現が調節される(通常、遺伝子の活性が抑制される)。これにより、細胞分化や発生が影響を受け、たった1つの受精卵から始まって、さまざまな細胞が生まれるのである。
メチル化修飾は受精後に働くが、実は受精卵となる前、卵と精子の段階ですでに、そのDNAの各領域に的確に同修飾が付加されていることが明らかにされている。DNAメチル化修飾の確立機序を解明するため、これまで世界中で数多くの研究が行われてきたが、同修飾を担う2つのタンパク質(DNAメチル化酵素)「DNMT3A」と「DNMT3L」が、いかにDNAの各領域で的確にメチル化修飾を付加するのか、その詳細な機序についてはまだ不明な点が数多く残されているとする。
そこで研究チームは今回、DNMT3AとDNMT3Lの両タンパクが共通して持つ「ADDドメイン」に着目。そのタンパク部位の機能的役割を実際に生物(マウス)で解析するため、ゲノム編集によりそれぞれのADDドメインに変異を導入し、両方の機能が欠損したマウスと、その卵と精子の詳細な解析を行うことにしたという。
解析の結果、両タンパク質のADDドメインの機能を喪失した雄マウスでは、精巣が縮小しており、精子の数、運動能も有意に低下していることが判明。それに対し、雌マウスの卵巣、卵のサイズ、形態は、野生型と比較してほとんど変化は見られなかったとした。
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