福知山線脱線事故で妻と娘を亡くした遺族「黙っていることはできんのです」
マイナビニュース / 2024年4月28日 6時0分
日本テレビ系ドキュメンタリー番組『NNNドキュメント’24』(毎週日曜24:55~)では、JR福知山線脱線衝突事故の遺族の信念に迫る『命を運ぶ電車 JR福知山線事故19年 安全への道標』(読売テレビ制作)を、きょう28日に放送する。
遅咲きの桜が街を彩っていた2005年4月25日午前9時18分頃、兵庫県尼崎市でJR福知山線の車両がカーブで激しく脱線。乗客106人と運転士が死亡、560人が負傷した。
兵庫県宝塚市の淺野弥三一さん(81)は、あの朝、妻の陽子さん(当時62)と次女の奈穂さん(42)を自宅から送り出した。2人は、千葉の親族を見舞うため、弥三一さんの妹・ちづ子さん(当時55)とともに新大阪駅に向かう途中で事故に巻き込まれた。
妻と妹を亡くし、娘が重傷を負った弥三一さんは、事故後、ひとつの決意を胸に生きてきた。「あの事故を二度とではなく、絶対に起こしてはならない」。そのためには、JR自らが事故原因を分析し、安全体制を構築することが重要だと考えた。元社長らの刑事裁判には一切足を運ばず、JR西日本とともに指針作りを目指した。
「安全フォローアップ会議」は2014年4月に結論を導き出し、JRは「安全」の監査を徹底するため、初めて「外部の目」(海外のコンサル)を加えることを決めた。遺族と加害企業の合同作業は大きな成果を達成したが、事故後19年という歳月とともに記憶の「風化」は著しい。当時を知る経営幹部は、わずか1人。22年1月の大雪では、京都でおよそ7,000人の乗客が列車内に閉じ込められるなど、安全対策に疑問を感じざるをえない事案も起きている。今年2月にはJR神戸線で330メートルのオーバーランが発生した。
淺野さんに台湾政府から連絡がきたのは、昨年8月のこと。今年1月に台湾鉄道が企業化される前に、ぜひ日本の鉄道事故やその後の取り組みについて遺族の立場から話をしてほしいという依頼だった。現地では、18年と21年に起きた2つの鉄道事故の遺族とも交流した。
知床の観光船事故や羽田空港の航空機炎上事故など、私たちの日常に、乗り物の事故は必ず存在する。ヒューマンエラーは防ぐことはできないのか…。悲劇を繰り返さないためには「事故を起こした企業が自らの組織にメスを入れる勇気が重要だ」と語る。事故から19年。淺野さんは初めて心の底に置いていた感情を吐き出した。「女房と妹と2人もっていかれて、黙っていることはできんのです」…遺族として、人として、冷静に「乗り物の安全」を求める続ける淺野弥三一さんの19年を伝える。
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