ディズニーの魔法が消えた日
ニューズウィーク日本版 / 2013年12月13日 12時40分
アマンダ・スミス(19)はカリフォルニア州のディズニーランドが大好きだ。「あそこにいると、娘の顔がすごく明るくなる」と母デビーは言う。でも10月に訪れたとき、アマンダは息が苦しくなって倒れてしまった。
アマンダは遺伝子の一部に命に関わる欠損があり、深刻な発達障害や聴覚障害を示し、自閉症気味でもある。原因不明で呼吸が止まり、蘇生措置が必要になることもある。だから普段は病院のICU(集中治療室)で生命維持装置につながれているが、たまに体調がいいときはICUを脱け出して、ディズニーの「魔法の国」を訪れる。
しかし今後は、それも難しくなる。米ディズニー社の障害者優遇制度が変更されたためだ。そもそも今回倒れたことで、外出許可ももらえなくなる恐れがある。
アマンダが倒れた前日の10月9日、ディズニーはカリフォルニア州のディズニーランドとフロリダ州のディズニーワールドで新たな障害者向けの優遇制度を導入した。従来の「ゲストアシスタンスカード」に不正利用が多かったため、新しい仕組みに変えたのだという。
以前の制度では、障害のある来園者はアトラクションを優先的に利用することができた。身体や感覚に障害があり、長い行列に並んで待つことが困難な人とその付添人は、いつでも行列の先頭に案内してもらえた。
しかし残念ながら、この制度を悪用する人がいた。一部の元従業員などが障害者用パスを不正に入手して法外な値段で売りさばき、障害のない人々が行列に並ばないでアトラクションを楽しめるよう計らっていたのだ。
そこでディズニーは障害者用パスを廃止し、新たに障害者用アクセスサービスカードを導入した。一般用の「ファストパス」と同じように、先に時刻を指定しておくことで長い行列に並ばなくて済む仕組みだ。
「悲劇の王国」の体験談
それで不都合のない人もいるだろうが、心理的な障害があって「待つこと」が苦手な人たちは困る。「待ち時間が長いと、パニックやかんしゃくといった望ましくない行動が出てしまう」と、自閉症の息子ニコラス(8)を持つサム・ローは言う。
自閉症のタイラー・プレスリー(12)も、パニックを起こさずに行列で待つのは苦手だ。タイラーの母ステイシーは、新たなプログラムが導入された後に息子をディズニーランドに連れて行ってみたが、やはりうまくいかなかったと言う。
「息子がいら立って自分の腕をたたき、大きな音を立てたりすると、よその母親たちが離れた場所に子供を連れていった。まるで息子が感染症患者みたいに。みんなが私たちのほうを指さして笑い、息子にひどい言葉を浴びせた。これが世界で一番幸せな場所なの? 『魔法の国』の魔法はどこに行ったの?」
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