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日本のGDP「4位転落」は危機的状況...最大の問題は、「一喜一憂する必要なし」という認識の甘さだ

ニューズウィーク日本版 / 2024年3月15日 11時0分

OLEKSII LISKONIH/ISTOCK

<日本だけが長期にわたって成長できず、普通に成長してきたドイツに抜かれた現状の厳しさを認識できていない経済界の大問題>

日本のGDPがドイツに抜かれ、世界順位は4位に転落した。以前から予想されていた事態ではあったが、最大の問題は経済界にまったくといってよいほど切迫感がないことである。

多くのメディアでは、日本のGDPがドイツに抜かれたと報じているが、これは正しい認識とは言えない。諸外国の中で日本だけがほぼゼロ成長であり、他国は普通に成長しているので、日本の順位が一方的に下がっているにすぎない。

このままの状態を放置すれば、近くインドに抜かれる可能性が高く、中長期的にはブラジルやインドネシアなどに追い付かれることもあり得るだろう。これは異常事態であり、日本経済は危機的状況にあるとの認識が必要だ。

内閣府が2024年2月15日に発表した23年のGDP(名目値)は、前年比5.7%増の591兆4820億円だった。ドル換算すると4兆2106億ドルとなり、ドイツとの順位が逆転している。

国内では4位転落を受けて「ドイツの経済は好調ではない」「物価や為替の影響が大きい」など、何とか事態を矮小化しようとする議論が活発だが、これらはほとんど意味をなさない。

日本の経済規模は30年前に比べてマイナスに

過去30年におけるドイツの平均成長率(実質)は約1.2%。これに対して日本の成長率は約0.7%しかない。同じ期間でドイツの経済規模は2.3倍に拡大したが、ドルを基準にすると日本はなんとマイナスになっている。

ドイツの人口は日本の3分の2にとどまっているにもかかわらず、日本とドイツのGDPが同水準ということは、ドイツ人は日本人と同じ仕事をしていても1.5倍の賃金をもらっていることになる。同じ仕事でありながら、ドイツ人の3分の2しか稼げないというのは日本の生産性が極めて低いことを意味しており、一刻も早くここから脱却しなければ、次々と他国に抜かれていくことになりかねない。

最大の問題は、ここまで状況が深刻化しているにもかかわらず経済界にまったく危機感がないことである。多くの国民が生活苦を訴えるなか、GDPの順位低下について日本商工会議所の小林健会頭は、「購買力平価で考える必要がある」「一喜一憂する必要はない」など、にわかには信じ難い発言を行っている。

政府の対応は十分とは言えないが、新藤義孝経済再生担当大臣からは「日本がさらなる構造改革を行い、新しく経済成長できるステージを一刻も早く作らなければいけない。世界の国々は物価が上がり、それに見合う賃金の上昇で経済を成長させていくことを実現している」との発言が出ている。

少なくとも政府は事態の深刻さについて理解しているとみてよいだろう。

購買力平価という「別のモノサシ」を持ち出す間違い

もし経済界が主張しているように、購買力平価で全てを評価するのであれば、「かつて日本の1人当たりGDPは主要先進国の中でトップだった」といった類いの話は全て否定されてしまう。

これまで日本の産業界は全て名目値で議論してきたはずであり、都合が悪くなると別のモノサシを使うというのは、文明国家としてあってはならないことである。

資本主義社会では、経済界が状況を正確に認識する一方、政府の認識が甘いという事態がよく発生するが、今の日本はまったく逆の状態となっている。社会をリードすべき経済界がこの状況では成長など望むべくもない。



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