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韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年

ニューズウィーク日本版 / 2024年4月15日 20時0分

3・11の後の日本でも、そういう話をよく聞いた。

最近、翻訳した韓国のインタビュー集に、事故の1年後に亡くなった潜水士の妻の話が出ていた。遺体収集には民間のダイバーたちがあたったのだけれど、作業の途中で亡くなった人もいたし(偶然ながら友人の高校の同級生だった)、その後に身体や精神を壊した人たちもいた。

ダイバーは犠牲者の最期の様子を見た唯一の人たちだった。沈んだ船の船室で、生徒たちの遺体は肩を組み、抱き合っていることもあり、手をしっかりつなぎ、もつれあっていることもあったという。つないだ手をはずして、1人ずつ抱きかかえて、292人を船から引き上げた。沈んだ船の中で見たことを、自分の家族にも話せなかったという。

「一刻も早く家族の元に返してあげたい」という思いで無理したことで、多くのダイバーが潜水病から骨壊死を起こして、二度と海にもぐれない身体になった。彼らは職業潜水士だったけれど、遺体収容はボランディアで行ったことであり、労災の対象にもならなかった。
そのうちの1人は4月8日の京郷新聞のインタビューで「今もパニック障害・不眠症・外傷後ストレス障害(PTSD)で睡眠薬や精神安定剤など8つの薬を飲んでいる」と語っていた。

過去の事件や事故に対して、「いつまで、そのことにこだわるのか?」という人もいる。でも今になって「やっと語れるようになった」人もいる。春が来るたびに、私たちはそうやって記憶を追加していく。記憶を語ってくれる人は、多ければ多いほどいいと思う。私たちはとても忘れやすいのだから。

セウォル号事件の記憶を語る映像

セウォル号事件の遺族について描いた映画『君の誕生日』予告編 映画カルチュア FilmIsNow Japan / YouTube 

犠牲者の捜索にあたった民間ダイバーの1人キム・サンウ氏による証言。 연합뉴스 Yonhapnews / YouTube 

修学旅行でセウォル号に乗り合わせた檀園高校の生徒たち。映像に出てくる遺品などは学校から1キロ離れた場所に教室と職員室をそのまま復元した「檀園高4.16記憶教室」にすべて移されて、事件の記憶を語り継いでいる。 주권방송 / YouTube




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