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名古屋のものづくりの現場から生まれた、唯一無二のアップサイクル品

ニューズウィーク日本版 / 2024年4月17日 18時5分

当初は、金型のパーツをそのまま使うのとは異なる案もあったが、編集部への提案も経て、方向性は決まっていった。近藤さん、そして久保さんも東京から名古屋に飛んで、アルプススチールの工場にトロフィーの「素材」を選びに行った。

トロフィーは、5部門の部門賞と最優秀賞で計6つになる。200~300あったパーツの中から、「素材」として面白い形のものが選ばれた。形状や穴の位置は1つ1つ異なるが、どれも鉄製なので、サイズは文庫本程度と小さいのに、とても重量感がある。

「鉄の塊で、さびていたり、汚れていたりもしたけれど、そのままでもいいんじゃないかと思うぐらい、かっこいいと思ったんです」と、久保さんは振り返る。「SDGsは、自分たちがもともと持っている価値観を変えていくことでもある。物を作っては、捨ててきた価値観。だとすると、トロフィーの在り方も変わっていい」

どの素材を使うかが決まると、研磨機で研磨し、角を取り、さびを防ぐ加工を施した。近藤印刷では、真鍮の板にインクの接着性を向上させる処理を施し、久保さんの設計どおりに、それぞれ「ニューズウィーク日本版SDGsアワード ○○賞」と受賞企業名をUVインクジェットプリンターで印字して、カットした。その真鍮の板をアルプススチールで鉄のトロフィーに貼り付け、底部には合成皮革を貼り付けて、特製トロフィーは完成した。

「SDGsアワード2023」の授賞式会場で撮影した完成品の特製トロフィー。「環境部門賞」「社会部門賞」「経済部門賞」「脱炭素部門賞」「地域課題部門賞」「最優秀賞」の6種類あり、1つ1つの形状が異なる Photo: Hiroshi Endo

SDGsに取り組む多くの企業からよく聞くのが、「エコやエシカルを前面に押し出さないほうがうまくいく」という声だ。押しつけがましいと感じると、一部の消費者は敬遠してしまうのだろう。

だから、近藤さんも久保さんも長谷川さんも「かっこいい」にこだわり、廃材由来かどうかに関わらず、「受賞した人が、もらってうれしいトロフィーにしたい」と取り組んでくれた。

それを実現するのが、職人の技だったり、デザインの力だったりする。今回、近藤印刷でもアルプススチールでも、60代~70代のベテランの職人が喜んで関わってくれたと聞く。近藤さんはまた、「価値を何倍にもできる」と、デザインの重要性を力説する。

近藤印刷、アルプススチール、久保さんと、3者の協力のおかげで、唯一無二の「SDGsアワード」特製トロフィーが完成し、受賞者の皆さんにも喜んでもらえた。この小さな協業は、ものづくりの現場に潜む大きな可能性を、私たちに垣間見せてもくれた。

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