ファンタジーでおなじみの剣『エクスカリバー』は『アーサー王伝説』を翻訳した宮廷詩人の誤訳がきっかけで生まれた!?
ニコニコニュース / 2024年4月3日 18時30分
今回紹介するのは、れぎゅらーさんがニコニコ動画に投稿した『【ファンタジー武器をゆっくり解説】第二回 エクスカリバー』という動画。
音声読み上げソフトを使用して、同人ゲーム『東方Project』のパチュリー・ノーレッジとレミリア・スカーレット、フランドール・スカーレット姉妹の三人のキャラクターが、ファンタジー作品の登場する武器である『エクスカリバー』の歴史について解説を行います。
■石に刺さった剣というイメージは半分不正解!?
パチュリー:
まず、エクスカリバーについて他に何か知ってることはある?レミリア:
確か石に刺さってて、「王の資質を持つ者しか抜くことが出来ない」みたいな? 例えばこんな感じ?
パチュリー:
いや逆! これだと下から持ってシャッターを開ける容量で抜かなきゃいけなくなるじゃない!レミリア:
腰悪くしそう。パチュリー:
それはさておき、「石に刺さった剣」という設定は半分正解、半分不正解といったところね。
パチュリー:
エクスカリバーの話をする前にまず所有者であるアーサー王の説明が必要ね。アーサー王は5~6世紀頃の、ブリトン人の君主とされているわ。ブリトン人とは現在のイギリス国土の大半を占めるグレートブリテン島の原住民のことね。
つまり簡単に言うと、大昔のイギリスら辺の王様がアーサー王よ。レミリア:
すごいざっくり言ったわね。パチュリー:
アーサー王の物語はブリテンを中心としたヨーロッパの各国で人気を博し、多数の文献が執筆されたわ。だから石に刺さった剣をエクスカリバーとしている書籍もあるけど、最初からそういう設定だったわけではないわ。
映画やアニメでたびたび取り上げられている「アーサー王の物語」。エクスカリバーの歴史を知るには「アーサー王の物語」の歴史を紐解く必要があります。エクスカリバーについて「これだけ音節がいい武器名もないよな」「エクスカリバーって聖剣というか王の剣なんだよな」というコメントが寄せられました。
■エクスカリバーの起源は神話にさかのぼる!
パチュリー:
最初は西暦700~950年頃までに成立したケルト神話。その中でもアルスター神話群と呼ばれている文献から話を始めるわ。この文献の中に『カラドコルグ』もしくは『カラドボルグ』という剣が登場するのだけど、これがエクスカリバーの原型ではないかと言われているわ。レミリア:
あまり似てないね。
パチュリー:
ただしアルスター神話群にはアーサー王に関する記述はなく、この剣も別の戦士が所有していたとされているわね。更にアルスター神話群よりも後、マビノギオンという物語の中に、アーサー王が所持している剣として『カレトブルッフ』という剣が登場しているわ。
これは先述の『カラドコルグ』のことを知っていた詩人が、それにちなんでカレトブルッフという剣を創造しアーサー王の所有物としたのではないかと言われているわね。更にブリタニア列王史という書籍で、アーサー王の剣はまた名前を変えて、今度は『カルブルヌス』といおう名前で呼ばれるようになるわ。
ブリタニア列王史は歴史書という体を取ってはいるのだけど、その内容は歴史的整合性はなく、偽史書という扱いをされているそうです。剣の名前の変遷について「カリバーン…ソニックと暗黒の騎士のナマクラ刀かな」「何故かエクスカリバー以外は全部アーサー王ガン無視で関係ない話に出てきたりもする」といったコメントが寄せられました。
フランドール:
いちいち名前を変えているのは理由があるの?パチュリー:
カリブルヌスに関しては鋼鉄を意味するカリュブスと掛けたのでは? と言われているわね。もちろん言語的な問題もあるでしょうね。マビノギオンはウェールズ語で記されているのに対し、ブリタニア列王史はラテン語の書物だからね。
神話として伝承された物語にはエクスカリバーの原型になっていると思われる剣の名前が多く登場しているようです。しかし、まだ『エクスカリバー』という言葉は登場しません。
『カリブルヌス』→『エスカリバーン』
パチュリー:
まず先程の『カリブルヌス』は英語に訳されて『カリバーン』に名前を変えるわ。
パチュリー:
更にアーサー王伝説はフランスに渡るわ。そこでも様々なエピソードが後付されていくのだけど、フランスの宮廷詩人クレティアン・ド・トロワが『カリブヌルス』の事を『エスカリブール』と記しているわ。レミリア:
もう何がなんだか。ってエス?フランドール:
あれ、そんなの今までどこにもなかったよね?
パチュリー:
そう、ここで今まで登場しなかった”ES”がなぜか付属されたの。理由は英語における“And”的な役割を持つフランス語で”ET”というのがあるんだけどこの”ET”を”ES”と書き間違え、それをカリブルヌスのフランス語表記『カリブール』と繋げて書いてしまった為ではないかと言われているわ。でも”ES”の由来に関してはっきりしたことはわかっていないの。
なんとイギリスのアーサー王伝説のエクスカリバーに一番近い言葉が生まれるのはお隣、フランスの翻訳事情が関係していたようです。「誤字のせいかもしれないとかたまげたなぁ」「伝言ゲームの弊害やな」といったコメントが寄せられました。
■ついに『エクスカリバー』の誕生へ!
パチュリー:
経緯はわからなかいけど、このときについた”ES”がまた英語に訳されたとき、新たな問題が起こったの。英語にはESに相当する言葉がなかったのよ。だから近しい単語に変換されたのだけど、そのときに選ばれたのがEXよ。ESがEXに変換された結果、『エクスカリボー』と呼ばれるに至るわ。
パチュリー:
そしてサー・トーマス・ロマリーが記した『アーサー王の死』という書籍の中では高らかに『エクスカリバー』と呼ばれるにいたり、それが定着したのね。簡単にまとめると、最初は違う名前だったのだけど、伝言ゲームを繰り返すうちにいつの間にかエクスカリバーと呼ばれるようになった、という感じね。レミリア:
途中よくわからなかったけど、伝言ゲームと言われてなんとなく分かったわ。
ようやく現代の私達になじみのある『エクスカリバー』という言葉にたどり着きました。「最終的に一番かっこよくなって良かった」「熱い中世ロマンス文学の系譜」と歴史ロマンに思いを馳せるコメントが寄せられました。
■エクスカリバーは2本ある。石に刺さった剣、泉の精から授かった剣、どちらが正しいの?
パチュリー:
もう一つ混乱するような事を言ってもいいかしら エクスカリバーは2本あるわ。先程出てきた、アーサー王の死という本があるじゃない? この本はアーサー王の出自から王に至るまで、そして配下の騎士団の話、そして最後の戦いまでをまとめた、アーサー文学の集大成とも言える作品よ。ただ、マロリーが執筆を開始したのは1450年代。既に多くのアーサー文学が誕生していたわ。それはつまりそれだけ多くのエピソードが創作されていたという事よ。実はエクスカリバーに関して、石に刺さった剣というエピソードの他に、もう一つ有名なエピソードがあるの。それはアーサーが王になった後に泉の精から授かったというものよ。
パチュリー:
マロリーはアーサー王の死の中で、これら2つのエピソードを採用しどちらもエクスカリバーとして扱ってしまったわ。その結果エクスカリバー2本という矛盾が生じたの。この矛盾を解消するために更にエピソードが創作されていくわ。例えば石に刺さった剣は『カリブルヌス』。これが戦いの中で折れるなどしたため、折れた『カリブルヌス』を泉の精が鍛え直したのが『エクスカリバー』とかね。
パチュリー:
幸か不幸か、エクスカリバーは頭に”EX”とついているからね。鍛え上げたなんてエピソードはエクストラを意味する”EX”とは相性が良かった。結果そのまま定着してしまったということね。レミリア:
結局何が本当なんだろう?パチュリー:
ちなみにエクスカリバーは剣よりも鞘の方が協力だと言われているわ。この鞘を身に着けている限りは絶対に傷を負うことはないの。アーサー王が亡くなった原因も、この鞘を無くしてしまったためと言われているわ。
上記の出来事について「一本がFateで言うカリバーンで金床にささった選定の剣、もう一本がカリバーンが折れた後にマーリンに相談し湖の妖精より貸し与えられた剣だったっけ?」と補足するコメントが寄せられていました。
アーサー王伝説に登場する『エクスカリバー』についての解説をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画をご視聴ください。
▼解説をノーカットで視聴したい方はコチラ▼
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