地上波向きではないアイデアを…異色バラエティー『大脱出』が生まれるまで 藤井健太郎×DMM TVタッグの舞台裏に迫る
ORICON NEWS / 2024年5月17日 7時0分
動画配信サービス「DMM TV」では、TBS『水曜日のダウンタウン』演出の藤井健太郎氏がプロデュースを手掛けた、DMM TVオリジナルバラエティー『大脱出2』が独占配信されている。
【動画】クロちゃんが藤井健太郎Pに物申す!「埋められるのはNGです!」
人気芸人たちが目隠し状態で部屋に囚われ、さまざまな罠が仕掛けられている部屋から限られた情報を頼りに脱出を試みる。その様子を鋭いツッコミを入れながら見守るのは、前作から引き続き出演するバカリズム、小峠英二(バイきんぐ)。
今作で囚われたのはクロちゃん、みなみかわ、高野(きしたかの)、井口(ウエストランド)、お見送り芸人しんいち、みちお(トム・ブラウン)ら前回の地獄を経験した芸人たちに加えて、森田哲矢&東ブクロ(さらば青春の光)、酒井貴士(ザ・マミィ)らが新たに地獄の門をくぐることとなった。
ORICON NEWSでは、この刺激と知性あふれたバラエティーを仕掛けた藤井氏と、今作のエグゼクティブプロデューサーでDMM TVコンテンツ部オリジナル制作グループ責任者の久保田哲史氏の対談取材を行った。対談の前編では、前作の『大脱出』が立ち上がった経緯に迫る。
■藤井健太郎は「この番組を見たい」という“何か”を作れる人 出発点は「クロちゃんを埋めたい」
――DMM TVさんとして、藤井さんにコンテンツ作りをお願いしようと思ったきっかけを聞かせてください。
久保田
DMM TVを立ち上げるにあたり、オリジナルコンテンツはやはり顔になるものなので、どういう方向で、どういう意味を持たせたらいいんだろうと考えました。そこでバラエティーはやはり、作り手が重要だなと。藤井さんは、TBSの水曜午後10時という多くの方が見ている枠で『水曜日のダウンタウン』という、非常に評判のいい作品を作っていらっしゃる。そんな藤井さんに、DMM TVでやってもらうためには、地上波ではできないある種の自由さや、クリエイターとしての藤井さんのテンションが上がるような場を用意することが大切だと思っていました。
あとは、DMM TVのバラエティーとして、DMM TVのメインユーザーが20〜40代の男性であることを踏まえて、「男性が楽しめるコンテンツ作り」をテーマのひとつとして持っています。藤井さんの『水曜日のダウンタウン』は女性の方もたくさん見ていると思いますが、やっぱり男性も大好物な番組じゃないですか?そこの部分と、地上波の番組とは違って、お金を払って見るということを考えると、フックの部分や「この番組を見たい」という“何か”を作れる人じゃないといけない。そういう風に考えると藤井さんしかいないとなりました。
――藤井さんはオファーを受けて、どうでしたか?
藤井
配信に向けてちゃんと番組を作ったことがなかったので、まず単純に「新しいこと」という意味での興味がありました。バラエティーのコンテンツで、何話かにわたってストーリーが続いていくものは作ったことがなかったですし、そういうもの自体が世の中にあまり存在していなかったので、「ぜひ!」という感じで。
――藤井さんからのテーマは「クロちゃんを埋めたい」だったんですよね?
久保田
最初聞いた時、びっくりしましたね(笑)。「さすがだな!」と思って。「こんなことやりたいんです」という構想を話してくださったのですが「山の中に埋まってるクロちゃん…みたいなイメージでやりたいんですよね」と。どういうところから発想してくるんだと。
藤井
配信コンテンツについて持っているなんとなくの知識として、やっぱり目を引くビジュアルが大事かなと。なので、そのへんのビジュアル逆算で「クロちゃんが首まで埋まっている」っていうのはアリかと思っていました。それに、そのアイデア自体は昔からあったんですけれど、地上波ではダメだったので(DMM TVでやれるとしたら)ちょうどいいかなと。そこを出発点に、色々と肉付けをしていったという形でしたね。
■藤井「見たことないことをやりたい」 『大脱出』1作目は驚異的な反響
――企画会議などで、配信だとやりやすいと感じた部分はありましたか?
藤井
逆に配信だからルールの厳しい部分も一部あったりもするのですが、基本的にはテレビよりも柔軟な部分が多い気はしました。我々としても、当然「ここまでだったら大丈夫かな」と、考えながら提案をしているのですが、そんなに「これはダメ」と言われたものはなかった気がします。
大場剛(『大脱出』制作に携わったDMM TVコンテンツ部 オリジナル制作グループ シニアプロデューサー)
普段、たくさんの方からコンテンツ企画をご提案いただくのですが、みなさんバラエティー制作スタッフなので当然「面白い」を一番に表現した企画書を持ってきてくれるんですよね。でも、藤井さんの場合、それ以上に「視聴者が驚く」「誰もやったことがない」にこだわった企画をあげてきてくれるんです。結果、それを映像にした時、他番組では味わえない、新しい刺激やワクワク・ドキドキを感じる作品になるんですよね。この作り方って本来エンタメの原点だと思うんですけど、この発想をできるクリエイターは本当に少ない。世の中にコンテンツが飽和し、面白いだけではヒットさせるのが難しい今、「驚き」や「新しさ」を着想に企画を考えるからこそ多くの人の心を揺さぶることができるし、それを独自の感覚で映像に落とし込むことができるのが藤井さんのすごさだと思います。
久保田
以前に比べてコンプライアンスへの意識が高まり環境が変わったバラエティー界で、海外で言うところの「ショーランナー」的な立場で番組を引っ張ることができるクリエイターって、そんないないと思うんですよ。
――そうした、新しさというのは、藤井さんの中でも意識している部分ですか?
藤井
なるべく「見たことがない」ものをやりたいなとは考えていますかね。それは視聴者に向けてもそうですが、自分としても、成功したパターンを使えば安全ではあるけど、作る楽しさは徐々に損なわれてきちゃうので、多少大変であっても違うことをやりたくなっちゃいますね。小さいポイントでもいいから、何か新しいものが必ず入っているようにはしたいなと。
――テレビでは視聴率という指標で判断をされていると思いますが、DMM TVさんとしては、そうした指標みたいなものはありますか?
久保田
もちろんあります。ある意味、視聴率よりもシビアなところがあって、他の配信プラットホームと同じで、詳細な数字が出てきます。オリジナル番組は、この作品を見るためにどれだけDMM TVの会員になってもらえるのかが、最も大事な指標です。そこは『大脱出』にも期待した部分ですが、シーズン1の時は突出した数字を叩き出して驚きでした。そういったこともあったので、大脱出2も期待していますし、個人的にはシーズン100ぐらいまで(笑)、藤井さんがうちとやりたいなと思っていただける限りはずっとやっていただきたいというのは、正直な気持ちです。
とはいえ「いいものを作りたい」というのがクリエイターにとって一番大切だと思うので、『大脱出3』になるのか、他の企画なのか…はまだこれからですが、引き続き期待しています。
※後編では、今回の『大脱出2』について、全話の配信が行われたタイミングだからこそ、ネタバレも含んだ秘話に迫っていく。
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