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夫が「男性更年期かも」と思ったらどうすればいいですか?60歳の夫が心配です【Dr.新見の更年期あかるい相談室】#3

OTONA SALONE / 2022年5月28日 21時0分

青年期、壮年期などと同じような時期の呼び方として、女性の閉経の前後5年を更年期と呼びます。

日本人の閉経の平均は50歳のため、45~55歳は更年期にあたる人が多数。この時期に女性ホルモンの分泌が急激に減少するため、更年期障害と呼ばれる状態に至る人もいます。

乳がんのセカンドオピニオンを中心に診察する医師の新見正則先生は、丁寧に私たちの訴えに耳を傾けながら、「だいじょうぶ!更年期は絶対終わるから!」と太鼓判を押してくれる力強い味方。そんな新見先生に「質問以前の質問」をまとめて聞くシリーズです。

【Dr.新見の更年期あかるい相談室】#3

Q・定年後元気がなくなった夫。「男性更年期」かもと思ったら、どうすれば?

夫はこの春60歳の定年を迎えましたが、嘱託社員として元の職場で勤務を続けています。今は週に2日出勤、3日リモートです。

 

コロナ前は同僚や取引先との飲み会が多く、さらに週末ごとに精力的にゴルフやお付き合いに出かけていたのに、コロナ以降はお付き合いがゼロになり、そのまま定年となりました。家から積極的には出なくなったのはコロナで仕方ないとして、この春定年してからは週末もベッドに横たわったままゴロゴロしていることがぐんと増えました。

 

最近、男性更年期という言葉をよく見かけます。私も更年期世代ですが、それほど寝込まず済んでいます。でも、もしかして夫が更年期?と思います。夫にどう切り出せばいいのか、また、どういう病院に連れていけばいいのでしょうか?

 

(あゆみさん・52歳 更年期症状の度合い/不調が出ることもあるが、なんとか乗り切れそう)

 

A・診察してもらえる病院が極めて少ないのが実情です

昭和を生きてきた私たちにとって、50代60代は大きな節目でした。閉経や定年はひとつの「区切り」でしたよね。でも、時代は急激に変わり、ポストメノポーズをいかに楽しむかが重要になりました。成人してから閉経までが約30年、でも100歳まで生きる時代ならばこのあとが50年あります。男性も女性も、定年前後のこの時期から人生をいかに楽しむか、ここからが勝負です。

 

さて、あゆみさんのご主人はそもそも、ご自分では男性更年期の可能性などお考えにもなっていないのではないでしょうか? 周囲が心配して病院に連れていくにしても、本人にどう切り出せばいいか、非常に悩むと思います。

 

まず、ぼくの知る中で「男性更年期」という分野は順天堂医院泌尿器科の堀江重郎先生がいちばんのご専門です。堀江先生は順天堂医院に「メンズヘルス外来」をご開設です。が、順天堂は初診予約の際に診療情報提供書(紹介状)が必要ですので、いちどはお近くのどこかの病院にかかっていただく必要があります。

 

近隣の泌尿器科や内科に電話をかけて、男性更年期を診察してもらえますか?と片っ端から聞いてみてください。また、男性更年期外来、メンズヘルス外来も探してみてください。

 

男性は自分のホルモン由来の不調に気づきにくいんです

人生の更年期にはホルモン減少に伴って身体に不調が現れる、これは男女ともに共通する身体の仕組みですが、男性の場合は睾丸(精巣)が死ぬまで働いて男性ホルモン・アンドロゲンを産生するため、減少はゆるやかに起きます。女性のエストロゲンのように短期間で激減するわけではありません。

 

男性更年期障害は「LOH症候群」とも呼ばれます。加齢男性性腺機能低下症候群、Late-onset hypogonadism、略してLOH症候群です。診察に使う指標としてAging Maleʼs symptons(AMS)質問票というものがあります。17の項目に5段階で答えてもらいます。

 

ご主人が当てはまりそうかどうか、以下の内容を見てみてください。また、ご一読いただくと、驚くほどに女性の更年期と共通する項目があることがわかると思います。

 

◆AMS質問票

なし…1点  軽い…2点  中程度…3点  重い…4点  非常に重い…5点

1・総合的に調子が思わしくない

2・間接や筋肉の痛み

3・ひどい発汗

4・睡眠の悩み

5・よく眠くなる、しばしば疲れを感じる

6・いらいらする

7・神経質になった

8・不安感

9・体の疲労や行動力の減退

10・筋力の低下

11・憂うつな気分

12・「絶頂期は過ぎた」と感じる

13・ 力尽きたと感じる

14・ひげの伸びが遅くなった

15・性的能力の衰え

16・早朝勃起の回数の減少

17・性欲の低下

合計26点以下…正常 27~36点…軽度 37~49点…中程度 50点以上…重度

出典/「加齢男性性腺機能低下症候群診療の手引き2022」

 

男性の「元気がなくなっていく」境目は55歳くらいから

堀江先生は、簡単に言えば「アンドロゲン(その主要成分であるテストステロン)を補えば元気になる男性がいっぱいいるよ」とおっしゃっています。なお、このテストステロン補充療法(TRT)は現在のところ2~3週に1回ずつ注射のために通院する必要があります。

 

ぼくは日本初のセカンドオピニオン医で、現在も男女問わずがんの患者さんのセカンドオピニオン相談に乗っていますが、ぼくの外来で男性更年期を訴える患者さんはほとんどいらっしゃいません。ただし、それはぼくが「加齢だよ」とアドバイスすることが多いからで、その中に男性更年期が入っている可能性は大です。前述の通り男性は睾丸の機能が落ちないため、女性の更年期ほどには強いギャップが起きず、結果的に本人もはっきりとは不調に気づかないままなのかもしれません。

 

経験上、55歳を境に元気がなくなっていく男性は結構います。会社で昇進の可能性がなくなるのは55歳ごろで、ちょうど子どもが巣立ったり、親の介護が始まったりという時期でもあります。女性の更年期と同様に、男性にも環境的な圧力が働くんです。

 

おかしいなと気づいたのならば、家族が助言してあげてください

さて、ご主人が男性更年期かどうかという点ですが、乱暴に言えば男性ホルモンを注射して元気になるのなら、それは男性更年期だったと言えるでしょう。いわば「薬に診断させる」という方法です。

 

男性の場合、急に射精できなくなった、EDになったというようなわかりやすい変化があるならばおかしいなと気づけますが、基本的にだんだんと機能が落ちていくので、男性自身にも自分の男性性がどういう状態にあるのかさっぱりわからないんです。だから、一緒に暮らすご家族が「おかしいな」と思うのならば、助言して、受診を促してあげるのはとってもいいことだと思います。でも、それだけゆっくりと低下していく機能なのならばそれは加齢のためなのかもしれず、判断がとても難しいですね。

 

ご主人の調子が悪いようだと思ったとき、もしかしたらこういう診療科に送り出せば治療ができるのかもしれない、話を聞いてもらえるのかもしれない、そういう窓口があるということを知っているだけでも、ご家族の安心度が上がると思います。

 

ぼくは確実な抗がんエビデンスのあるフアイアという生薬を啓蒙していますが、これにしても、これを飲めという話ではなく、あくまでも「安心できる道具としてフアイアもある、だから悲観しなくて大丈夫ですよ」と患者さんに寄り添う材料に過ぎません。ご家族で抱え込むのではなく、治療機関につなげるのが大事です。相談に乗ってもらっただけでも気持ちは変わりますので、ぜひ相談してみてください。

 

 

お話/新見正則医院 院長 新見正則先生

1985年 慶應義塾大学医学部卒業。98年 英国オックスフォード大学医学博士取得(Doctor of Philosophy)。2008年より帝京大学医学部博士課程指導教授。20代は外科医、30代は免疫学者、40代は漢方医として研鑽を積む。現在は乳がん患者に対するセカンドオピニオンを中心に、漢方、肥満、運動、更年期など女性の悩みに幅広く寄り添う自由診療のクリニックで診察を続ける。がん治療に於いては、明確な抗がんエビデンスを有する生薬、フアイアの普及も行う。

 

 

≪新見正則医院 院長 新見正則さんの他の記事をチェック!≫

 

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