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マイホームに"一生住む"は間違いのワケ

プレジデントオンライン / 2015年12月29日 12時15分

(左)家計再生コンサルタント、マイエフピー代表取締役、ファイナンシャルプランナー 横山光昭氏(右)家計の見直し相談センター代表、ファイナンシャルプランナー、CFP認定者、宅地建物取引主任者 藤川太氏

いつまで働けるか、病気にならないか、年金はいくらもらえるか……。年をとるたびに不安になるが、今からできることはあるのか。人気ファイナンシャルプランナーの2人が、「老後の金」をテーマに語る。

■マイホームに「一生住む」は間違い

――ビンボー老後に陥る最大のポイントはどこにあると感じますか。

【藤川】たぶん横山さんのところに集まる相談は、ギリギリの生活を強いられている“苦しみ系”が多いでしょ。

【横山】そうなんです。年収で言えば300万~800万円が中心で、老後どころか今、目先が切羽詰まっているという方も多い。

【藤川】私のところへくる相談は、苦しみ系がどんどん減っていて、世帯年収800万円以上の方がほとんど。とはいえ、実際にシミュレーションすると、将来的にはビンボー老後に陥りかねない方が半分以上。つまり、自覚症状がない人ばかりなんです。

【横山】自覚症状という意味では、目先が切羽詰まっている人のほうが、はっきりとあります。ただ、お金がない。

【藤川】二極化の表れといえるのかもしれませんね。

【横山】かつてのように、多重債務で借金まみれというケースは少なくなりましたが、カードのリボ払いの借金が数十万円から100万円程度、常にある人が増えています。そうなると、必然的に老後も苦しくなることが見えてくる。だから本人も家計のマネジメントをしなければならないという自覚だけは持っているわけです。

【藤川】一方、ある程度所得が高い人の場合は、支出の生活習慣病系の方々が多く、自覚はあっても深刻に考えていない。年収800万円以上で、ふだんの生活支出にも多少ゆとりがある家庭のほうが、老後のリスクに対する自覚が乏しくなりがちな分、危うい。そういう人たちが貧乏老後に陥る要因としては、「家」がすごく大きい。家に高すぎるお金を投入してしまうと、ほかのところにお金が回らなくなる。

――「家」のように長期的なお金のマネジメントが必要なものは、どのように考えればいいですか。

【藤川】そもそも、家を買うなら、売ることを考えて買わなければダメ、というのが私の持論です。でも、多くの人は家を買うときに「ここに一生住む」と覚悟を決めてしまっている。実際には、たとえば介護が必要になったとき、それに適した家とは限らないし、介護施設に入るとなれば家を売る局面も出てくるわけです。購入する年齢よりも、5年、10年で売る、という出口も考えて買うことをお勧めします。

都心ならば、マンションが多いでしょうけど、マンションは時間が経てば経つほど、価格が下落します。とくに最初の15年はマンション販売業者の利益の部分と住宅設備の部分の減価償却が一気に進む。それを考えると、15年待つよりも10年ぐらいで売ってしまうというのが、実は一番お得なはずなんです。10年であれば、お風呂を取り替える必要もない。価値が残っていると1.2倍、1.3倍と、こちらの言い値で高く売りやすい。それが15年、20年経つと、ただのコンクリートの箱としての評価しかされなくなってしまうわけです。

【横山】当然、立地も重要ですよね。駅から近いとか。都内ならどこでもいいという時代はとうに過ぎました。

【藤川】日本の人口は15年後に1100万人減りますから、駅から離れている、郊外である、地方であるといった物件は、ガラガラになります。すでに、リゾートマンションの中にはタダでも買ってもらえない物件がたくさんある。たとえば温泉を引いていて、管理費や修繕積立金などを合わせると月5万円以上かかるような物件とか。都内のマンションや戸建て住宅でも似たようなケースは売りにくい。そんな物件を子供が相続させられてもありがた迷惑。自分が老人ホームに入るから売ろうと思っても、買い手がつかない物件も多いのです。

――「おひとりさま」を決め込んだ独身女性の間では、マンションを購入する人が増えているように見えます。

【藤川】派遣社員や契約社員で年収300万円前後の方が購入しているケースが珍しくありません。それでローンを組めるのだから、われわれとしては驚きですね。実際、そうした女性をターゲットにしたマンション購入講座も盛んに開かれています。

【横山】でも、全部仕組まれているように見えますね。

【藤川】物件の価格としても高め、ローンの金利も高め。3000万円前後で、東京23区内の物件が多い。彼女らは自分でも「買える」ということに価値を見出しているんです。それが一つのステータスというか、マンションを買える自分というのにご褒美をあげたい感じなのでしょう。

【横山】マンションの販売業者の中には、ローンの返済額は、月々の家賃より安いと説明するケースもあるようですが、実際には、ローン以外に税金や管理費、修繕積立金など様々な費用がかかり、賃貸より安くすむなどとは、なかなかいきません。

【藤川】マンション関連の支払いに苦しんで、食べる物もまともに食べずに、友達から飲み会に誘われても断って、家で紅茶を飲んでくつろぐのが楽しみみたいな感じになってしまう。収入のほとんどを家に持っていかれて。

【横山】そもそも、そういう貯金もなくて、将来の収入もどうなるかわからない状態で、住環境を求めるところが間違っている。

【藤川】男性の場合、いつか結婚できると思って郊外のファミリータイプのマンションを買ってしまう方もいますが、私だったら都心に投資用マンションを買います。狭いワンルームだったら、中古で、1000万円以内でいくらでも出ていますよ。それで一生涯の自分の家がフィックスできるんだったらアリだと思いますし、そこに住まないなら貸せばいい。

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藤川太
家計の見直し相談センター代表。ファイナンシャルプランナー、CFP認定者。宅地建物取引主任者。
1968年、山口県生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了後、大手自動車メーカー勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。累計2万世帯超の相談実績を誇る。著書に『やっぱりサラリーマンは2度破産する』『年収が上がらなくてもお金が増える生き方』など多数。
 
横山光昭
家計再生コンサルタント。マイエフピー代表取締役。ファイナンシャルプランナー。
司法書士事務所勤務を経て、同社設立。個別の相談・指導では、お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムを生かし、これまで7000人以上の赤字家計を再生した。著書は累計57万部を超える『年収200万円からの貯金生活宣言』シリーズを代表作とし、著作累計86万部となる。

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(ファイナンシャルプランナー 藤川 太、家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭 小澤啓司=構成 小原孝博=撮影)

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