鳥越俊太郎、都知事選唯一の公約「がん検診100%」に医者がNO
プレジデントオンライン / 2016年7月26日 9時15分
究極の後出しジャンケンと騒がれた鳥越俊太郎氏の東京都知事選への立候補。知名度から先行しているとされる鳥越氏だが、どうも雲行きが怪しい。メディアから政策に関する質問を投げられると「わからない」「これから勉強する」と繰り返すばかり。単にみこしとして担ぎ上げられただけで、政策については民進党などの野党連合に完全に丸投げということか。あるいは自前で急ごしらえの政策を準備するつもりか。いずれにしても都知事としての資質に疑問を感じざるをえない状況だ。
また、鳥越氏にとって唯一オリジナルの公約といえるのが都民の「がん検診100%」だが、こちらについては医学界から疑問の声が湧いている。元・東京大学医科学研究所特任教授で、NPO医療ガバナンス研究所の理事長を務める上昌広(かみ・まさひろ)氏はこう語る。
「これまでがん検診を受けていた人は、家族にがんの人がいたり、自分ががんを心配している、ハイリスクの人が多かったと考えられます。このような人は、検診を受ける十分なメリットがありました。しかし、リスクが高い人、低い人を問わず、全員が検診を受けることになれば、多くの『偽陽性』の人が出てくる可能性があります」
偽陽性とは、実際にはがんではないが、一次検診において、「がんの疑いあり」と診断されること。しかし、その後の精密検査で実際にがんだった人は胃がんでは2.3%、乳がんでは4.6%と非常に低い確率だ。(大阪府立成人病センター がん予防情報センター発表)
もしも100%検診が実現されれば、それだけでも莫大な税金が投入されることになるが、偽陽性と診断された人も負担を強いられる。検査費用だけではない。結果が出るまで、自分はがんなのではないかとおびえる心理的な負担もある。さらに上氏が指摘するのは、がんと認知症との兼ね合いだ。
「これから東京は急速に高齢化します。それにともない高齢者のがん患者も増えていきますが、高齢者の場合、認知症との兼ね合いで議論する必要があります。数年前、英国の医学誌の編集長が『がんで死にたい』という内容の論文を書いて話題になりました。認知症の究極の予防策は、認知症になる前にがんで死ぬことだという皮肉な意見です。これからの東京で求められるのは、とにかくがんを見つけて治療しさえすればいいという旧来の価値観の押し付けではなく、成熟した大人の意見です。がん検診だけを取り上げて議論することは、ややバランスを欠いています」
がん検診100%を達成したところで、それが都民の幸せにつながるのかというと、決してそうではない。たしかにがんを早期に発見できる可能性はあるが、それ以上の不幸を撒き散らしかねないのだ。
■がん、高齢、公約丸投げ……知事の資質に疑問あり
がん検診への並々ならぬ熱意は、鳥越氏自身の闘病体験から来たものだろう。氏はこれまでがんのために4回の大手術を経験している。2005年に直腸がんを患うと、07年には転移により左肺を一部切除、同年8月には右肺も手術。09年、今度は肝臓に転移し、切除手術を受けた。氏が一私人であるならば、「がんと粘り強く闘う勇敢な人」という評価は間違いないのだろうが、都知事選候補となると、体力的な不安を払拭することは難しい。そもそも年齢だけを考えても、有力候補者とされる小池百合子氏や増田寛也氏は64歳、鳥越氏は76歳と、ちょうど一回り年齢が上だ。はたして、がん手術後の76歳男性に都知事のようなハードな仕事は可能なのだろうか。
「一般論として、年齢的にはかなりきついでしょう。がんの闘病を繰り返せば、どうしても体力は低下してしまう。少なくとも体力の点では他の2人の候補より見劣りがします」(上氏)
政策の不透明感を晴らすためにも突っ込んだ話を聞きたい都民は多いだろうが、都知事選候補者の討論が行われる予定だったフジテレビの『新報道2001』に関して、増田寛也氏がツイッターで「鳥越氏が出演を見合わせて中止になった」と発言。今のところ、話題になるのが会見などでの言い間違いばかりというのはいただけない。
▼本件で指摘した事項に関し、事実の確認を求めたところ、鳥越俊太郎事務所より下記の回答があった。
鳥越候補は、東京都のがん検診受診率について、「まずは50%、最終的には100%を目指します」としています。
偽陽性のがんの発見は、がん検診の受診率が向上すれば、おおむねそれに比例して増加するものと推測されます。偽陰性や偽陽性、過剰診断など、がん検診に不利益があることは承知していますが、現在50%にも達していない東京都の受診率を向上させていくことの方が、都民の利益になるとものと考えています。早期発見・早期治療により、健康長寿社会を目指したいと思います。
また、鳥越候補の体力面については、4年前のホノルルフルマラソンを完走し、今も週3回はジム通いをしていくことなどから、指摘は当たらないと思います。
(ジャーナリスト 唐仁原 俊博 時事通信フォト=写真)
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