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27歳年収466万円と嘘をつく会社の末路

プレジデントオンライン / 2019年1月30日 9時15分

「入社前の説明と違った」と転職後にトラブルになるケースがある。新しいタイプの縁故採用「リファラル採用」の普及に取り組む白潟敏朗さんは「転職希望者に同年代の最高年収額だけを伝えるなど、会社のネガティブな面を隠していると『嘘をつかれた』と感じ、すぐに辞められてしまう」という。人材不足にあえぐ企業が守るべきルールとは――。

※本稿は、白潟敏朗『知らない人を採ってはいけない』(KADOKAWA)を再編集したものです。

■労働力人口1週間に1万人減のインパクト

前回記事では、リファラル採用(社内外の信頼できる人脈を介した、紹介・推薦による新しいタイプの進化した縁故採用)の定義、動向、メリットおよびデメリットを紹介しました。

「社員の推薦と紹介による採用手法」と聞いて、サイバーエージェントのような大企業や、メルカリ、ビズリーチのような有名ベンチャー企業は上手くいっても、無名・中小企業では上手くいかないのでは? と感じる社長・人事部長もいらっしゃるかもしれません。

ご安心ください。「魅力向上型リファラル採用」であれば、たとえ無名の中小企業でも必ず成功します。ただし、成功のためには3つの前提条件をクリアする必要があります。

(1)社長と会社を好きな社員が1人以上いる
(2)嘘をつかない
(3)社長が耳の痛い提案を聴ける

■700万円かけても1人しか新卒を採れない

3つの条件をクリアし、トップが本気でリファラル採用に取り組めば、必ず上手くいきます。今や1人あたりの採用単価は100万円超えが当たり前です。先日お伺いした従業員300人の会社は、業界ではそこそこ知られた会社なのに1人あたり150万円かかっていると聞いて驚きました。700万円かけて1名しか新卒が採れなかったという悲惨な話すら聞きます。

図表1をご覧ください。労働力人口は2015年からの10年で600万人減少します。1年で60万人、1週間で1万人働く人がいなくなります。この流れは、しばらく変わりません。

さらに図表2をご覧ください。人手不足倒産の件数が毎年増えています。5年間で2.5倍増、2017年には114社が、人がいなくて倒産しています。2018年の上期は70社なので、おそらく140社以上の会社が倒産するでしょう。

求人広告に何百万円もかけたり、年収の35%という高い費用を人材紹介会社に払って採用しても、すぐに辞められるようなことが続いたら、中小企業にとっては死活問題です。大企業だって高みの見物とはいきません。しかし、今さらハローワークで優秀な人材は採れません。多くの企業、とくに中小企業の社長や人事部長はこのようなジレンマに陥っているのではないでしょうか。

■採用時に嘘をつく巨大なリスク

リファラル採用成功の3つの前提条件のうち、まず頭に叩き込むべきは「嘘をつかない」ということです。「魅力向上型リファラル採用」では、会社をアピールするための資料「アピールブック」を作成します。

「アピールブック」作成の際には、「嘘をつかない」ことを社長とプロジェクトメンバーに必ず約束してもらいます。入社したらバレる課題を隠した状態で面接に進み入社すると、「おいおい、佐藤なんであの時教えてくれなかったんだよ! こんなの聞いてないからやめるよ!」ということが起こります。

すると、紹介した社員も責任を感じやめてしまうダブル退職が起きてしまいます。これは最悪の事態で、絶対に避けなくてはなりません。

さらに、紹介した社員と友人・知人の信頼関係もこわれてしまいます。これがリファラル採用をするうえで究極のリスクです。すべての課題を開示することで、このリスクがゼロになります。

図表3をご覧ください。

■年収「27歳466万円、35歳610万円」は誤解を招く

求人掲載サイトの募集要項には年収が「27歳466万円、35歳610万円」というような表記をしていることがよくあります。もちろん最も高い年収の社員の年収を掲載しているのであれば厳密にいうと嘘ではありませんが、求職者からすると「自分は27歳だから466万円くらいもらえるのかな」という誤解を招く可能性があります。これでは、リファラル採用はうまくいきません。

このような年収の表記方法ではなく、同年代の社員の中で「最低の月給と年収」「最高の月給と年収」「平均の月給と年収」の6つを開示します。求職者は最低年収を見て、生活できるかどうかを確認し、最高年収で夢の高さをイメージする、そこそこ頑張れば平均でこのくらいもらえるかなあと想像できます。まずは、給与情報で嘘をつかない、大きく見せない。これは大前提です。

■会社の恥ずかしい課題も事前に開示する

もちろん、会社として恥ずかしい課題も開示します。図表4をご覧ください。

給料が安い、固定賞与がない、社員の定着率がよくない、上司のマネジメントが良くない、成長が鈍化している……このような課題もすべて開示します。そうすることで、入社後の「こんなはずじゃなかった」退職を防げます。

求職者・学生が最も欲しがっている情報は「会社の課題」であり、ネットの情報を検索し必死に調べます。このような課題を会社から誠実に正直に開示することで、求職者・学生からの誠実ポイントは上がります。

しかし、正直に書くことで「この会社の課題開示は素晴らしいが、ここまでの課題があると入社するのはどうかなあ?」となってしまう可能性もあります。課題は正直に伝えるだけで終わりではありません。

課題の解決の方向性を、図表5に示すような「3年後はこんな会社になります(中期経営計画)」に示します。そして「3年後うちの会社はこう変わっていくんだ」ということをセットで求職者・学生に伝えることで、課題解決の方向性を示せます。

たとえば、給料が安いという課題については、3年以内に「年収の平均上昇率15%」「業績連動型賞与の導入」というような取り組みを開示します。「現在は課題が多い会社だが、社長と我々で3年間で課題を解決し、魅力的な会社をつくっていくんだ! ○○さんも一緒に魅力的な会社づくりをしませんか?」といったような誘い方をします。その誘いに魅力を感じた方には入社してもらえます。

■「受け入れてもらいたいこと」を明確に

この中期経営計画に課題の解決の方向性だけではなく、社長が考えるN年後の「なりたい姿」を併せて記載し求職者・学生にアピールしていきます。

白潟敏朗『知らない人を採ってはいけない 新しい世界基準「リファラル採用」の教科書』(KADOKAWA)

2つ前の図「前提条件(2):嘘をつかない」の図を再度ご覧ください。図の下の方に「受け入れてもらいたいこと」という箇所があります。これは、会社で変えるつもりがない仕組みやルール、決まりごとなどです。すなわち、社長が想いやこだわりをもって取り組んでいること、事業の性質上仕方がないことです。人によっては、課題だと思うかもしれませんし気にならない方もいるでしょう。ここをごまかして、誰にでも好かれようとすれば、入社後に感じたギャップでやはり退職してしまうことになります。

「受け入れてもらいたいこと」は、踏み絵の役割も果たします。気になるなら入社しない、気にならないなら入社する。求職者・学生はいずれかの判断をします。「受け入れてもらいたいこと」を事前に開示しなければ、先ほどの課題と同様に大変なことになるので、正直にすべてを開示します。

来てほしいあまり、少しでも会社をよく見せたいというのは人の性です。しかし、待っていれば大量に応募が来る時代ならまだしも、労働力人口激減時代にこれをやってしまうと、いつまで経っても社員の定着率は上がりません。何よりも、「自社に確実にマッチする人」を「最短距離で」「確実に」採ることが目的のはずです。

そのためには、入り口で自社を大きく見せたり、職場の課題をうやむやにしないことです。課題は課題できちんと洗い出し、明確にして、解決できることから解決していけば、会社の魅力も向上していきます。手間はかかりますが、採っては退職……を繰り返していては未来はありません。嘘をつかずにネガティブ情報も最初から開示する。これが、自社に確実に合う人を確実に採っていく最短距離なのです。

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白潟敏朗(しらがた・としろう)
リファラルリクルーティング 社長
1964年神奈川県三浦半島油壷生まれ、宮崎県宮崎市青島育ち。埼玉大学経済学部経営学科を卒業し、1990年に監査法人トーマツに入社。経営、戦略、業務、IPOのコンサルティングを経験。1998年からISOコンサルティング会社・審査会社の立上げ。2006年にトーマツ イノベーション株式会社設立、代表取締役社長に就任。2014年10月に独立し、白潟総合研究所を設立。2017年にリファラルリクルーティング株式会社、2018年に1on1株式会社を設立。

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(リファラルリクルーティング(株)/白潟総合研究所(株) 代表取締役社長 白潟 敏朗)

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