進次郎氏が「入閣→育休」という極秘シナリオ
プレジデントオンライン / 2019年8月9日 18時15分
■超異例ずくめだった「官邸での結婚会見」
「私ごとで大変恐縮ですが……」
7日午後2時ごろ、首相官邸でクリステルさんとともに記者団の前に立った進次郎氏は、慎重に言葉を選びながら結婚の発表を始めた。多くの記者は、東京五輪関連で、新しいイベントの話でもするのかな、というぐらいに考えていたため、仰天の発表だった。
そもそも首相官邸での結婚発表など前代未聞。発表前には2人そろって菅義偉官房長官、安倍晋三首相に結婚を報告している。安倍氏は同日夕、わざわざ記者団の質問に応じ「大変驚きましたが、令和時代の幕開けにふさわしいカップルだなと思いました。30数年前に私が結婚の報告を、(進次郎氏の)お父さんの小泉純一郎先生にしに行った時のことを思い出しました」と笑顔で語っている。
発表以降、テレビは2人の結婚話一色になった。それまでワイドショーの主役は、日本選手として42年ぶりのメジャー制覇を果たした女子ゴルフの渋野日向子選手だったが、彼女は画面から一瞬のうちに消えた。渋野選手が「話題がそっちに行ってくれて(ゴルフに専念できて)助かる」とコメントしたほどだ。
■近い将来のファーストレディーが決まった?
2人の結婚は、なぜここまで注目されたのか。事前に一切報道されない「サプライズ婚」だったこと。政治とマスコミの世界で誰もが知る有名人カップルだったこと。いろいろあるが、最大の理由は「近い将来総理になる人物」が結婚したからではないか。
産経新聞とFNNが6月16、17両日に行った合同世論調査によると、「9月の自民党総裁選で選出される次期総裁にふさわしい人物」では、小泉進次郎氏が26.9%でトップだった。2位は安倍首相の25.2%、3位は石破茂元幹事長の24.1%だった。この結果をみる限り、国民のなかでは「首相候補」の筆頭にあるといっていいだろう。
通常、政治家は選挙に出る前に家族を持つ。国会で当選を重ねて「首相候補」になる頃には、子どもも大人になっているのが常識だ。一方、進次郎氏は38歳にして立派な「首相候補」だが、これまで独身だった。「首相候補」が結婚するのは日本では極めて珍しいことなのだ。
多くの国民は2人が結婚するというニュースを見て、進次郎氏とクリステルさんが近い将来、2人で政府専用機のタラップを上り、ほほ笑みながら手を振る姿を想像したことだろう。今回の結婚を「将来のファーストレディーが決まった」という意識で受け止めたのだ。
さらに言えば、年明け早々に生まれる予定の子どもが、数十年後に首相の座についているかもしれない。進次郎氏は国会議員としては4世議員。クリステルさんのおなかの中にいる子が5世として政界で活躍する可能性は高いのだ。どちらに似てもビジュアル的には魅力的な政治家になるだろう。
そう考えるとロイヤルファミリーの結婚に近いインパクトがあるのだ。
■進次郎氏の入閣「いいと思う」と菅氏
進次郎劇場は、結婚で終わりそうにない。月刊誌『文藝春秋』(9月号)で進次郎氏は菅氏と対談しているが、菅氏の発言が興味深い。
司会のジャーナリスト・田崎史郎氏が、9月の内閣改造、党役員人事を念頭に「進次郎さんはもう閣僚になっていい?」と質問すると、菅氏はすかさず「私はいいと思います」と回答。さらに「次の自民党総裁選で進次郎さんはポスト安倍の有資格者だと思いますか」と聞くと「ええ、私はそう思いますよ。早すぎるということはない」。思いっきり進次郎氏を持ち上げている。
2人が対談した段階の菅氏は、進次郎氏の結婚話を知らなかったようだが、結婚により進次郎氏の「商品価値」は、さらに高まった。安倍氏や菅氏が、人事の目玉として進次郎氏の白羽の矢を立てようとしないほうがおかしい。
■「まず隗より始めよ」で、「育休」か
臆測は臆測を呼ぶ。来年、2人の間に子どもが誕生するのを受けて、進次郎氏が「育休」を取るのではないか、という見方が出ているのだ。
進次郎氏は年金保険料に一定額を上乗せし児童手当の増額などに充てる「こども保険」を提唱するなど、子育て政策に力を入れている。子どもができるのを機に「育休」を取り、父親が子育てに参加しやすい社会に向けた旗を振ろうと考えても不思議ではない。
国会議員には、明確な育児休業制度が制度上ない。現実的には、本会議の欠席届をその都度出すというようなことになるのかもしれない。閣僚になればさらにハードルが高くなり「臨時代理」を置くというような議論になることも予想される。これらは、国民の暮らしのルールを定めるはずの国会が、子育て制度については遅れていることを示している。
■元祖「育休」宣言議員は、あの「ゲス不倫」男
国会議員の育休というと、当時衆院議員カップルだった宮崎謙介、金子恵美両氏の件が記憶に新しい。2016年に金子氏が出産するのを前に宮崎氏は「男性の育児参加を推進したい」と、「育休取得を目指す」と宣言したのだ。これに対し当時の菅氏が「育休を取るための議員立法を目指せばいい」などと支援の動きが広がりつつあった。
ところが、金子氏が出産した直後、宮崎氏が不倫していたことが発覚。「イクメン議員」は「ゲス不倫議員」に転落。宮崎氏は議員辞職し、記念すべき育休国会議員の第1号は誕生しなかった。
国会改革を提唱している小泉氏が、自ら「新しく父となった国会議員」となった立場を使って身をもって国会の改革を提起することは十分あり得るだろう。
■若い女性たちの支持を高める効果が期待できる
もし「育休」の取得を考えている場合、国政に支障が出るのを極力避けるために、入閣要請があっても断るとの見方もある。しかし、これは凡人の発想かもしれない。
進次郎氏は、父親の純一郎氏がそうであったように、問題を大きく見せて現行制度の矛盾を世間にさらけ出し、世論に訴える、という思考の持ち主だ。だからあえて入閣し「育休大臣」となるのを目指すことも十分あり得そうなのだ。
このシナリオは安倍政権にとっても都合がいい。男性の育児参加を進めるパフォーマンスは、若い女性たちの支持を高める効果が期待できる。
内閣改造や党役員人事は9月に予定される。麻生太郎副総理兼財務相、二階俊博党幹事長ら超ベテラン議員が続投するかどうかばかりに注目が集まっていた人事だが、大きな注目要素が加わった。
(プレジデントオンライン編集部)
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