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重要なのは陰茎のサイズより精巣のサイズ…妊活の専門医が教える「精巣の大きさを簡単に調べる方法」

プレジデントオンライン / 2022年10月27日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RyanKing999

「妊活」ではなにが重要なのか。聖隷浜松病院リプロダクションセンター長の今井伸さんは「男性の立場で重要となるのは、陰茎よりも精巣。陰茎のほうがどうしても目立つが、妊活をするうえでは精巣の大きさを確認しておいたほうがいい」という――。(第2回)

※本稿は、今井伸『射精道』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

■不妊の原因は必ずしも女性側だけの問題ではない

第1条 妊活は二人の共同作業にて積極的に取り組むべし

僕はNHKの朝ドラが好きで、ここ10年くらいはだいたい欠かさず見ています。朝ドラの舞台は戦前であることが多いのですが、話の中で、今でいう妊活の場面がちょいちょい出てきます。そうした時に、ちょっとおかしいと感じる場面があります。子どもがなかなかできないと、女性だけの責任とされていることです。当時の人たちにとっては「男性にも責任がある」という発想がほとんどなかったことが分かります。「男性は種さえ蒔いておけば何とかなる」的な考えです。

最近は夫婦でブライダルチェックをするカップルも増えましたが、まだまだ「子どもができないのは女性のせいである」という考えの方は、多くいらっしゃいます。しかし実際には、WHO(世界保健機関)の報告によると、不妊の原因の約半数は男性にあることが分かっています。

ところが、リクルートライフスタイルが2018年に行った「不妊に関する意識調査」によると、不妊原因の半分は男性側にあることを「知っている」と答えた人は、男性で46.4%、女性で56.7%でした。調査対象になったのは「将来子どもが欲しいと思っている」20~40代の男女です。つまり、妊活に関心がある男女でこの数字だったわけですから、それ以外の男女については、さらに知らない確率は高くなると想像できます。

■「妊活」は夫婦二人の共同作業

僕が勤務するリプロダクションセンター(生殖医療専門施設)では、最近になってご夫婦で受診されるケースが増えてはきましたが、「妻に言われてしぶしぶ……」といった夫もまだ見られます。さらに、精液検査に対してネガティブな反応をする方や、中には「屈辱的」と口にする方もいらっしゃいます。

まだまだ、不妊治療において最初のアクションをとるのは女性が多いのが現状です。

しかし、当たり前ですが、子どもは夫婦二人で作るものです。お手伝い感覚やつきそい感覚を捨て、男性も妊活を自分の問題として主体的に関わるのだ、とマインドセットしましょう。夫婦二人の共同作業として、妊娠を目的としたセックスに取り組んでください。妻だけ、もしくは夫だけの孤独な戦いをしていては、子どもは作れないのだ、と肝に銘じてください。

■妊娠のメカニズムを知ることが妊活の第一歩

第2条 女性の月経周期と妊娠のメカニズムを勉強すべし

妊活を妻だけの孤独な戦いにせず、夫も主体的に関わるためには、女性の月経周期と妊娠のメカニズムについて、男性もよく理解しておくことが重要です。妊活の第一歩は、セックスをすることではありません。妊娠のメカニズムを学び、どうしたら妊娠が成立するのかを知ることです。

男性の精液は、毎回濃度や運動率は異なりますが、無精子症でない限り、ほぼ毎回の精液に精子が含まれています。精子は女性の体内で数日~1週間程度生存することができます。すなわち、男性が1回でもセックスをすれば、相手の女性は妊娠する可能性があります。

一方、女性の場合は、セックスをしても妊娠しやすい時期としにくい(しない)時期があります。このことを理解するためには、女性の月経周期について知る必要があり、妊娠のメカニズムを知るためには、女性の月経について勉強しなければならないのです。

正常な生理(月経)の期間は3~7日間、25~38日周期でやってきます。一般的には28~30日前後が多いでしょう。周期の変動は6日以内が正常とされています。そして、通常1回の月経周期に1回の排卵(卵巣から卵子が放出されること)があります。その排卵の14日後に子宮内膜がはがれ落ちて、月経が始まります。

つまり、月経周期の変動は、排卵する時期の変動によって決まるということです。

裏を返せば、月経周期から排卵日が推定できるということになります。

女性はおよそ1カ月(1回の月経周期)に1回しか排卵しないので、その卵子が存在している時に精子が卵子に出会わなければ受精卵ができず、妊娠もしないのです。

しかも、卵子は排卵してから24時間しか生きられません。したがって、精子が1週間生きているとしても、理論上、女性が排卵する約1週間前から排卵後1日以内のセックスでしか妊娠できないのです。

排卵日は、病院などで検査をしない場合は、月経周期から推定するしかありません。月経周期も必ず一定とは限らないため、ピンポイントで予測することはできません。しかし、相手の月経周期を知ることで、妊娠しやすい時期を推定することは可能です。

男性は、女性から妊娠を目指してセックスをする日を指定してもらうのではなく、自分でも相手の月経周期から妊娠しやすい時期を推定して、積極的に狙いに行くようにしてください(狙うべき日はこの後の第4条を参照)。

ベッドで愛を作る情熱的なカップル、2人の恋人の親密な前戯、自由なスペース
写真=iStock.com/Prostock-Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Prostock-Studio

■過度なプレッシャーは「排卵日ED」の原因に…

僕の診察室には「『今日は排卵日だからセックスお願いね』と妻から言われると勃たなくなるんです……」という男性が来ることが少なくありません。僕はこうしたケースを「排卵日ED」と呼んでいます。それほどに、男性のメンタルは繊細なものなのですが、僕はそういう男性たちには「自分で奥さんの排卵日を予測して、自分から積極的に狙いに行ってください」とお伝えしています。

人から言われるとやる気が出なくなるのに、自分で決めたことには一生懸命になれる、それがよくある男性の性なのです。自分から積極的にセックスに臨んでいくことで、排卵日EDも予防できると考えています。

■陰茎も大事だが精巣の大きさも大事

第3条 自分の精巣周囲に注意を払うべし(竿よりも玉が大事)

ずばり、妊活の主役はどちらかというと陰茎ではなく、精巣。つまり、竿よりも玉が大事です。思春期に二次性徴を迎えて最初に変化が起こるのは、精巣です。精巣が大きくなり始めてから、その他のところも大人の身体へと変わっていきます。

ところが、陰茎のほうがどうしても目立つため、その大きさは気にしたことがあるのに、精巣の大きさを気にしたことがある人は少ないのではないでしょうか。泌尿器科外来でも、陰茎の大きさや包茎についてはよく相談がありますが、「精巣が小さいのではないか」と言って受診される方は、皆無です。

精巣は、男性ホルモン(テストステロン)と精子を作る臓器で、左右の陰嚢(袋)内に1つずつあります。テストステロンは性欲や勃起に関係する大事なホルモンであり、精子はまさに子作りの主役です。つまり実際には、陰茎の大きさよりも、精巣の大きさのほうが重要なのです。

男性生殖器系解剖学の3D図解
写真=iStock.com/magicmine
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/magicmine

思春期前に2mL以下の容量であった精巣は、大人になると15~20mLまでに増大します。こんな劇的な変化を遂げるのに、あまり気にされないのは残念でもあります。

精巣は、一般に左より右のほうが大きいことが多く、日本人651人の調査によると、精巣の平均重量は右15.35g、左14.53gであったという報告があります(注1)

(注1)田坂登美、平賀聖悟、北村真、飯田宜志、黒川順二、飛田美穂、佐藤威「日本人正常精巣の重量およびサイズについての検討」『日本泌尿器科学会雑誌』77巻9号、1506~1510頁、1986年

ある程度正確に測ろうとすると、やはり病院に行かなければならないのですが、自分で簡単に精巣の大きさをチェックする方法があります。親指と人差し指でOKサインを作り、その輪の大きさより自分の精巣が大きければOK。順調に成長した正常な大きさです(注2)

(注2)池田稔、池田景子「お~い男子諸君!! たまには玉の大きさ気にしろよ! ~精巣自己触診の勧め~」『日本性科学会雑誌』30巻、1.2号、63~68頁、2012年

OKサインの輪より大きくなくても、それほど大きさが変わらなければ問題ありませんが、半分以下である場合には、少々心配な大きさということになります。その場合は、妊活中であれば、早めに病院を受診したほうがよいでしょう。

■精巣が大きすぎたりしこりがあるとがんの可能性がある

また、精巣がOKサインよりも2倍以上大きいとか、精巣の中にしこりがある、精巣が全体的に硬い(骨のような硬さ)といった場合も、早めの受診が勧められます。

精巣が大きくなる原因は2つあり、一つは水が溜まっているだけの場合、もう一つは腫瘍です。触った時に軟らかければ、陰嚢内に水が溜まっているだけの「陰嚢水腫」です。この場合はさほど健康に問題はありません。大きくて困る場合には、外来で水を抜く処置をするか、根治するための手術を行います。

一方、陰嚢を触った時に硬くゴリゴリした感触がある場合は、腫瘍ができている可能性があります。多くの場合は悪性腫瘍、つまり、「精巣がん」です。精巣がんは、10万人当たり1人が発症する、それほど多くはないがんです。しかし、20代、30代で最も多く発症するため、不妊治療で病院を受診した際に偶然見つかるケースがあります。

■精子の質が不妊の原因であることも…

また、不妊の原因となる「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)」が発見されることもよくあります。陰嚢の上部には、血管や精管(精子の通り道)や、神経、リンパ管が束になっている「精索」がありますが、その中の静脈が血液の逆流によって拡張した状態になることをいいます。

精巣は、体温より2~3℃低い温度環境に保たれることが、精子を作るのに良い環境なのですが、体温と同じ温度の血液が逆流してくることにより、精巣の中の温度が上がったり、内圧が上がったりすることで、精子を作る機能や精子の質が低下することが分かっています。

精索静脈瘤は男性不妊患者の30~40%に見られ、男性不妊の原因のなかで最も多いと言われていますが、一般男性の15%にも見られます。したがって、静脈瘤があっても健康に問題はなく、不妊にならない人もいます。

入浴時など、自分で陰嚢上部を見て、陰嚢の表面が血管で凸凹していているのが分かる場合は、一度専門病院(泌尿器科)で検査を受けることをお勧めします。

精索静脈瘤のGrade(グレード=重症度)
出典=『射精道』より

精索静脈瘤は、視触診と超音波検査で診断され、Grade2以上の場合は手術が勧められます(図表1)。精液検査で精子数や運動率の減少が見られない場合は、必ずしも治療は必要ではありませんが、なかなか妊娠しない場合は手術を検討します。

治療後は、だいたい7割ほどのケースで精液の所見が改善されます。

■妊娠することだけがセックスではない

第4条 生理が終わってからの2週間が勝負の時期と心得よ

効率よく妊娠を目指したいというのも人情でしょうから、本項ではそこをサポートするお話をしましょう。妊娠のメカニズムが理解できていれば、その辺りをうまくやることが可能になります。

月経周期と排卵日、妊娠しやすい期間の関係
出典=『射精道』より

たとえば、月経周期が28日の場合、排卵してから14日後に月経が来るため、月経が始まって14日目頃に排卵していることになります。正常な月経の期間は3~7日間、25~38日周期でやってきます(第2条参照)。25日周期の場合は、月経が始まってから11日目頃、35日周期の場合は月経が始まって21日目頃に排卵しているということになります(図表2)

排卵日当日よりも、排卵の1~2日前のほうが妊娠する確率が高いということを考えると、月経周期が正常な女性では、ほぼ月経が終わっている月経周期8日目からの2週間に妊娠しやすい時期があることが分かります。

なお、排卵してしまった後は、24時間以内に受精しなければ妊娠することはありません。つまり、排卵日の翌日以降は、いくらセックスをしても妊娠することはないのです。

とはいえ、「妊娠しないならセックスしない」ということにしてしまうと、セックスも味気ないものになってしまいがちです。勝負の2週間以外にも、変わらず気持ちののったセックスをすることが、妊活を乗り越えるためには重要なことだと思います。次項で詳しく触れていきましょう。

■リラックスしないと勃起はできない

第5条 排卵日はあえて気にすることなかれ

妊娠を目指してセックスをする場合、どうしても排卵日を過剰に気にするようになってしまいます。第2条で妊娠しやすい時期と妊娠しない時期があると言っておきながら、矛盾しているではないかと思われるかもしれませんが、これは「排卵日を特定しすぎない方がいい」という意味です。男性にとっては重要な意味を持ちます。

今井伸『射精道』(光文社新書)
今井伸『射精道』(光文社新書)

先に述べた「排卵日ED」の通り、排卵日を特定されてしまうと、男性は「今日は必ずゴールを決めなければならない(セックスをして射精しなければならない)」という責任を強く感じるようになります。男性が、それを大事なことだと思えば思うほど、その責任感から緊張が生まれます。そして、すでに述べた通り、緊張は勃起の大敵です。リラックスしていないと、勃起という現象は起きないからです。

こうして、排卵日という大事な日になると勃起できなくなる「排卵日ED」を発症するわけです。「失敗したら(射精できなかったら)どうしよう」と心配になって行為に集中できず、その結果、射精できずに終わる……などということもよくあります。行為が始まったらセックスに集中することが一番大事なので、無理もありません。

そもそも、排卵日は周期によって数日変動するものです。妊娠しやすい時期というのはピンポイントで特定されるものではなく、ある程度幅を持った期間を意味します。

妊娠可能な期間は、通常、排卵日までの6日間で、特に排卵日当日までの3日間に性交があれば、妊娠の可能性が最も高くなります(注3)

(注3)A J Wilcox, C R Weinberg, D D Baird「Timing of sexual intercourse in relation to ovulation. Effects on the probability of conception, survival of the pregnancy, and sex of the baby」N Engl J Med. 1995 Dec 7;333 (2 3) :1517―21.

■あくまでセックスは夫婦のペースで

また、排卵日当日にセックスをするより、排卵の1~2日前のほうが妊娠する確率が高いという報告もあります(注4)

(注4)A J Wilcox, C R Weinberg, D D Baird「Post-ovulatory ageing of the human oocyte and embryo failure」Human Reproduction 13: 394-397, 1998

医療機関で診察を受けている場合、「この日にタイミングをとってください(セックスをしてください)」と指定されることもしばしばですが、自分のペースを崩さないことも大事です。妊娠しやすい期間には幅があること、ピンポイントで指定されると緊張してうまくできなくなることなどを妻に話し、理解してもらった上で、ご夫婦でできる範囲でその期間にセックスをするとよいでしょう。

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今井 伸(いまい・しん)
聖隷浜松病院リプロダクションセンター長
1971年島根県生まれ。聖隷浜松病院総合性治療科部長。日本泌尿器科学会専門医・指導医。日本性機能学会専門医・代議員。日本生殖医学会生殖医療専門医。日本性科学会幹事、同会認定セックス・セラピスト。日本思春期学会理事。島根大学医学部臨床教授。’97年島根医科大学(現・島根大学)医学部卒業後、同大学附属病院を経て聖隷浜松病院に勤務。専門は性機能障害、男性不妊、男性更年期障害。講演会や各メディアを通じ正しい性知識の普及に努める。共著に『中高生からのライフ&セックス サバイバルガイド』(日本評論社)、『セックス・セラピー入門』(金原出版)、『中高年のための性生活の知恵』(アチーブメント出版)、監修に『シニア世代の愛と性セックス』(平原社)など。

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(聖隷浜松病院リプロダクションセンター長 今井 伸)

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