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「良い商品なのになぜか売れない…」マーケティングに失敗する会社が抱える3つの問題点

プレジデントオンライン / 2023年1月4日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

自社商品を売るために、どのようなマーケティングを展開すべきか。グロースマーケティング事業に取り組むソルブレイン社長の櫻庭誠司さんは「ウェブ施策がうまくいったことに満足して、最終的な利益につなげられない企業が多い。この『部分最適の罠』にはまらないことが重要だ」という――。

※本稿は、櫻庭誠司『未来をつくるグロースマーケティング』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

■成功の方程式はないが、失敗の典型例はある

モノを売るための最適な仕組みは、時代によって変わる。これを逆からとらえるなら、「永久不変のマーケティング成功の方程式」などはないといえます。

企業ごとのビジネスモデルに紐づく独自のバリューチェーンの中に潜む、それぞれのボトルネックを解消し、モノを売るための仕組みをより洗練させ、増益へとつなげていくのが、マーケティングです。

企業の現状や課題によって成功の方程式はさまざまですが、一方でマーケティングにおける失敗には、典型例といえるものがあります。それを知り、意識的に回避すればマーケティングの成功率を高めることができるはずです。

大きくは、次の三つの理由でつまずいている企業が多いです。

■失敗の理由① 「部分最適の罠」にはまってしまう

マーケティングに関して、プロモーションや市場調査といった部分的なとらえ方をすると、必然的に「マーケティングの成功」もまた部分最適にとどまります。

そして、こうした狭い範囲での成果にばかりとらわれ、一喜一憂してしまうと、企業活動の本来のゴールである最終利益に意識が向かなくなりがちです。これを私は「部分最適の罠」と呼んでいます。

初めてマーケティングに取り掛かろうとする企業は、数値が見えやすいウェブ施策から取り掛かることが多いのですが、数値に踊らされないよう注意が必要です。

ウェブサイトを軸としたマーケティングにおいてはCPA(顧客獲得単価)やCVR(コンバージョンレート)といったデータが具体的な数字として出てきて、しかも容易に取得する事が可能です。

本来、これらの数値は事業活動全体でみると一部の指標でしかないのですが、そこにフォーカスして事業全体のKPI(重要業績評価指標)として用いてしまうケースを、さまざまな企業で見てきました。

そうなってくるとそこで設定した「KPIの達成=事業目標の達成」になって事業活動を行ってしまいます。典型的な「部分最適の罠」です。

■ゴールはあくまで最終的な利益

仮にプロモーションがうまくいき、予想をはるかに超えるPV(ページビュー)が得られたとしても、ユーザーに魅力が伝えきれずCV(コンバージョン)までのアクションにつながらなければ利益にはなりません。

また、プロモーションの成功により注文が殺到した場合でも、それに対応できる生産体制やオペレーションが整っていなければ、対応できず、売上も伸ばせず、顧客満足度は下がり、利益を伸ばすことは難しくなるでしょう。

利益につながらないなら、そもそも予算をとってまでその施策を行う意味が失われてしまいます。

マーケティングを考えるにあたっては、ゴールはあくまで最終的な利益であるというのを忘れず、部分最適ではなくバリューチェーン全体の最適化を目指すのが、正しい方向性であるといえます。

部分最適より、全体最適。

言葉にすると当然のことのように感じるでしょう。それにもかかわらず、部分最適の罠にはまる企業が後を絶たない理由はなぜでしょうか?

■外部委託したくても専門会社は圧倒的少数

多くの企業が、部分最適になっても満足いく結果が求められず、100点満点の結果を求め、部分最適の中でPDCAをまわし始めます。真面目な社員であればあるほど、与えられた環境の中で結果を出そうとし、もがきながら部分最適の沼にはまっていくのです。

すると、そもそもの構造に無理があるので結果はなかなか出ません。

そうすると次の打ち手は「外部専門業者の活用」になってきます。

ただ、マーケティングサポートを掲げる会社は星の数ほどありますが、本書で定義するマーケティングを提供する専門会社は、実は圧倒的少数です。

「マーケティング 相談」といったキーワードで検索をかけると、膨大な数の会社がヒットしますが、一部大手を除いてその大半は、「メディアプロモーション」「ウェブ広告」など、事業領域が限定的です。たとえばSEO対策を提供する業者は、「特定のウェブサイトを検索エンジンで上位に表示する」という分野の専門家であり、メディアへの露出やブランディングなどは、専門外のところが多いでしょう。

こうした業者はいわば、部分最適に特化したサービスを提供しているといえます。

■短期的な業績で一喜一憂してしまう

それら限定した部分に課題を抱える企業にとっては極めて心強い存在であり、その手を借りることで部分的には改善し、短期的に業績を伸ばすことももちろんできますが、一方で「モノを売るための仕組みづくり」という企業活動全般に関わる課題を担うのは、難しいというのが実情です。

業者側からしても、自社が担うべき目標は全部クリアしたのに「それが最終的な成果につながらない、どうすればいいのか」といわれても、返答に困るでしょう。

このように、事業領域が限定的な会社にマーケティングを丸投げして、「これで成果があがる」と安心してしまうというのが、よくある失敗例です。結果として成果は部分最適にとどまり、前述のような「施策の成果は出ているのに、最終利益が増えない」という状況が生まれてしまうのです。

■失敗の理由② データの連動不足

部分最適の罠は、組織内にも存在しています。

特に大企業においては、社内に広告部や営業部といった多くの専門部署が存在していますが、それゆえにマーケティング活動がぶつ切りになってしまいがちです。各部門がそれぞれ成果や目標を目指す、すなわち部分最適ばかりが重視され、ともすれば「営業部と制作部がライバル関係にある」というような競い合いが生まれます。こうした関係性の悪化は、各部門が部分最適の視点しか持てないからこそ出てくるものでしょう。

多くの企業がこうした状況に陥った結果、起きてくるのが組織内でのデータの連動不足です。企業内の各部署でデータの取り扱い方法が異なるなどした結果、本来であれば横断的に確認すべきデータや、全体最適を達成するために欠かせないはずのデータが、一つの部署だけで処理されてしまうのです。

■営業部と生産部の「断絶」がロスを生む

本質を考えるなら、注文を獲得する営業とそれを作る生産など、あらゆる企業活動は連鎖する関係にあるはずで、それを表すのがバリューチェーンという概念です。ごく単純化して例を挙げると、営業部が受注状況を月一や週一の頻度でしか生産部に共有していないとするなら、生産部では当然、最適な生産量を判断するのが難しく、ロスが生まれやすくなってしまいます。

また、システム自体が独立しているという問題もあります。営業部と生産部でデータの引き渡しが行われる場合でも、営業支援と生産管理のシステムが違えば、営業部から届いたデータを生産部で一度、生産管理システムに入力しなおすという手間が出てきます。

このようなデータの連動不足がいくつも存在し、結果的にそれがロスを生んでいるケースは本当に多くあります。その結果、部署ごとの成果が最終利益に直接結びついていかないのです。

■失敗の理由③ 中小企業に多い「人の問題」 

全体最適が進まない背景には、各部署の連動不足に加え、人の問題が隠れていることも多いです。

先ほどの大企業の例でいうなら、現場で働く社員たちの視野が、自分の成績や部署への貢献といった部分最適にとどまっていると、各人がデータ連動の重要性に気づくことができず、「めんどうだから」「作業が増えることになるから」とデータ共有をせずに済ませてしまいがちです。

これを補うには、各人が入手したデータを基幹システムにこまめに入力するような仕組みの導入や風土の醸成が必要になるでしょう。実は、このような人の問題もまた、モノを売るための仕組みづくり、すなわちマーケティングの範疇にあるものといえます。

中小企業においては特に、人の問題がマーケティングを阻害しているケースが多いと感じます。

さまざまな情報を示すインフォグラフィックスと働く人々の手元
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

■「今のままでいい」と変化を嫌う人の弊害

まず経営者自身が、ここまで述べてきたようなマーケティングに対する誤解を抱いているようだと、当然ながらマーケティングは一向に進みません。「集客だけしてくれればいい」「今の仕組みの中でやってほしい」といった要望をよく受けますが、そうした部分最適、部分的改善の発想では、マーケティングで成果を挙げるのは難しいといえます。

また、過去の成功体験が壁となることもよくあります。「これまでうまくいっていた」「今のままで困らない」というような理由で、経営者がIT化やシステム化、新たな仕組みの導入に消極的であると、現代マーケティングの要ともいえるデータが効率的に集まらず、マーケティングに支障が出てしまいます。

組織においても、同様のことがいえます。どんな会社でも、変化を嫌う人というのは一定数存在しているものであり、新たなシステムを導入したり、時代に合った仕組みを作ったりする場合には、必ず反対するものです。そうした反対勢力が幅を利かせていると、効果的なマーケティングを行っていくための環境がなかなか整いません。

■状況を一変させたマーケティングのDX化

数あるマーケティングの施策において、技術革新によりもっとも大きな変化があった分野の一つが、広告でしょう。

過去を振り返れば、広告に対する費用対効果というのは、ずっとあいまいなままでした。

百貨店王と呼ばれたアメリカの経営者、ジョン・ワナメーカーは、広告について次のような言葉を残しています。

「私が広告に使っているカネの半分は無駄とわかっている。問題は、どちらの半分が無駄かわからないことだ」

新聞やテレビといったマス広告が主流であった時代、広告の効果測定は難しく、ワナメーカーのようにどれくらいの費用対効果があるのか見えぬままに広告を出し続けていた経営者はたくさんいたはずです。

しかし、テクノロジーの進化によって、広告の在り方が根底から変わりつつあります。

いまや、消費者の行動データはクラウド化によって限りなくリアルタイムで把握することができます。さらには、モバイルデバイスの普及により、ハードウェア側からも行動データを集めることが可能です。

これまで技術的に不可能だったり、コストがかかりすぎたりして出来なかったことでも、技術やサービスをうまく組み合わせることによって、リアルタイムに精度の高い分析ができるようになりました。

これによりマーケティングの精度が大きく上がったのは間違いありません。

以前は勘や経験に頼らざるを得なかった広告の出稿を、データを根拠として理論的に選択できるようになったのです。

■問われているのは「緩慢な死か、改革か」

製造や流通といった、広告以外の領域でも、同様のことが起きており、適切なデータを集め、分析できればコストの最適化が図れ、それが最終利益に直結するような時代になっています。

櫻庭誠司『未来をつくるグロースマーケティング』(クロスメディア・パブリッシング)
櫻庭誠司『未来をつくるグロースマーケティング』(クロスメディア・パブリッシング)

現代において、過去のマーケティングの常識は、今やまるまる書き換わっているといっていいでしょう。そんな中、いつまでも従来の勘や経験に頼った手法に固執していると、企業としての競争力は失われ、衰退するのは確実です。

過去の成功体験を胸に抱き、緩慢に死んでいくか。それとも未来を見据えて、バリューチェーン全体の改革に着手するか。

マーケティングの進化は、経営者にこうした厳しい問いを投げかけるものであると、私は考えています。

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櫻庭 誠司(さくらば・せいじ)
ソルブレイン社長
2008年に仙台で株式会社ソルブレインを創業。当初はマーケティングの一部分に特化したサービスを提供していたが、時代の変化とともに価値提供の形を柔軟に変えながら一貫して企業のマーケティングの課題解決を手がけてきた。2014年よりグロースマーケティング事業を立ち上げ、企業の持続的な成長の実現に取り組む。著書に『未来をつくるグロースマーケティング』(クロスメディア・パブリッシング)がある。

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(ソルブレイン社長 櫻庭 誠司)

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