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高級車、時計にお金を使う人は大損している…「幸福感を上げるには何にお金をかけるのがベストか」の最終結論

プレジデントオンライン / 2023年9月10日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Botina Inna

幸福になれるお金の使い方は何か。心理学者のキャサリン・A・サンダーソンさんは「有効なのは自分のためではなく、友人や家族、そして見知らぬ人など、他の人のためにお金を使うこと。また、モノではなくコトにお金を使い、他の人と共有体験すること」という――。

※本稿は、キャサリン・A・サンダーソン『ポジティブ・シフト 心理学が明かす幸福・健康・長寿につながる心の持ち方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、本多明生訳)の一部を再編集したものです。

■体験にお金を使うことが一番お得な理由

これまで、お金を増やしても幸福になれない理由を説明することに重点を置いてきました。しかし、良いニュースがあります。幸福をもたらすお金の使い方があるのです。幸福感を高めるお金の使い方の一つは、友人や家族、そして見知らぬ人など、他の人のためにお金を使う、という方法です。心理的な幸福感にとって、それ以上に良いお金の使い方はあるのでしょうか? 商品にお金を使う人(モノを消費する人)と比べて、人生経験にお金を使う人(コトを消費する人)の方が、持続的な幸福感を多く得ることができます18※。

つまり、大きな試合のチケットやブロードウェイのショー、あるいは豪華な旅行などにお金を使うことは、幸福感を高めるための素晴らしい方法です。一方、高級車や時計、靴などにお金を使うことは、幸福感に一瞬の影響を与えるだけです。ペンシルバニア大学のポジティブ心理学センターのマーティン・セリグマン所長は「物質的なものは、すべてフレンチバニラアイスのようなものです。一口目は最高ですが、七口目になると、段ボールをかじったときのような最悪の味に変わります」と述べています19※。

したがって、バスルームの改装や模様替えにお金を使うのではなく、思い出作りのためにお金を使うようにしましょう。

残念ながら、どのようにお金を使えば、最も幸福を得られるのか、についての人々の予測は、かなりの程度一貫して間違っています。人はモノを買えばもっと幸せになれる、と考えているのです。それは、人はモノを持ち続けることで、繰り返し使用したり楽しんだりすることができるからです。一方で、体験することは一瞬であり、一時的な幸せしか得られません。

ある研究は、買い物が自分にどれだけの幸福をもたらすのかを研究参加者に考えてもらいました20※。その結果、商品にお金を使うほうが、体験にお金を使うよりも幸福感が得られる、と考えた人が圧倒的に多いことがわかりました。ところが、2~4週間後に同じ人に、購入したものに対してどの程度の幸福感が得られたのかを尋ねたところ、体験にお金を使った人の幸福感のほうがはるかに高かったのです。

なぜ、モノにお金をかけるよりも、コトにお金をかけたほうがいいのでしょうか? それは、私たちが体験することを期待し、他の人と体験を共有し、追体験することができるからです。

■期待する喜び

何週間、何カ月も前から、どこに行こうか、何を見ようか、などと考えて、計画を立てて旅行に出かけたことはありますか? もし、そういう経験があるのであれば、それは素晴らしい方法です。期待することで、一つの出来事からより多くの幸せを搾り取ることができます。子どもたちがクリスマスの朝を待ちわびるのは、何日も何週間も前から素敵なプレゼントを開ける喜びを予感して、その日を味わうためでもあるのです。(ドイツ語には「後のお楽しみが一番の喜び」ということを意味する「VorfreudeistdieschönsteFreude」という表現があるほどです)。

作家A・A・ミルンの「くまのプーさん」の中には、期待することの喜びを的確に表現した名言があります(訳注:A・A・ミルン(著)石井桃子(訳)(1940)クマのプーさん、岩波書店、岩波少年文庫より引用)

「そう…」と、プーはいいました。「ぼくはいちばん─」と、ここまでいってから、プーはかんがえこまなくてはなりませんでした。なぜかというと、はちみつを食べることは、ずいぶんといいことではありましたが、たべるよりちょっとまえに、ほんとうにたべているときより、もっとたのしいときがあります。でも、プーは、それをなんと呼んでいいのかわかりません。

くまのプーさんを描いた1996年のカナダの郵便切手
写真=iStock.com/PictureLake
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PictureLake

もちろん、この言葉とは「期待すること」です。

ただし、私の言葉をそのまま鵜呑みにする必要はありません。科学的な研究によると、何か経験を期待する人は、そうではない人と比べて、より大きな楽しみを得ていることが証明されています。例えば、ある研究は、大学生にチョコレート評価に参加することを求めました21※。研究参加者の半数は、ハーシーのキス・チョコレート、あるいはハグ・チョコレートをすぐに食べて、そのチョコレートを食べる楽しさを評価しました。もう半数の研究参加者は、30分間待ってから、チョコレートを食べて、同様の評価を行いました。研究結果を予測できるでしょうか?

30分間待たされた学生は、すぐに食べることができた学生と比べて、そのチョコレートのことをずっと好きだ、と回答したのです。このように、私たちが体験にお金を使うことで、もっと多くの幸せを得ることができる理由の一つは、新たな有形財を得ることを期待するのと比べて、体験することを期待したときの方がはるかに楽しいからです22※。

待ちに待ったヨーロッパでのバカンス、何を見て、何を食べようか、そんな楽しみを頭に思い描いてみてください。それでは次に、車や大型テレビ、新しいコンピューターなど、有形財がもうすぐ手に入る、と期待することで得られる喜びについて思いを巡らしてみてください。多くの人にとっては「早く新しい財布を持ちたい!」というモノの到着への期待は、「早くマチュピチュが見たい!」という旅に対する期待と比べて、はるかに小さな幸福感しか生まないことがわかります。

この研究結果を知ってから、私たち夫婦は子どもたちへのクリスマス・プレゼントの内容を抜本的に改めることにしました。高価な品物を購入する代わりに、何らかの体験にお金を支払うようにしたのです。ある年は「ハミルトン」(訳注:大人気ミュージカル)のチケット、別の年は「ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ」(訳注:人気ダンス番組をモチーフにしたエンタテインメント・ショー)ツアーのチケットをプレゼントすることにしました(ただし、このチケットは11歳の少女には相応しい選択ではなかった、と思います)。息子たちへのプレゼントは、ボストン・セルティックスやボストン・ブルーインズの観戦チケットなど、いつもスポーツにまつわる体験を中心にしています。

このように、大切な人のために何か買い物をするときは物品を購入するのではなく、スパ(訳注:温泉などを備えた健康増進施設)の一日券やコンサートのチケット、お気に入りのレストランのギフト券など、体験できることにお金を支出することを検討してみてください。

■共有体験の効果

体験にお金を使うことのもう一つのメリットは、人は一人で使うために品物を入手する傾向が強いのに対して、体験は他者と共有する傾向がある、ということです。例えば、旅行や観劇は一人よりも友人と行くことが多いでしょうし、新しい財布や時計、ノートパソコンは共有するためではなく、自分が使うために購入することのほうが多いのではないでしょうか。大切な人たちと経験を共有しようとする、このような傾向は幸福感に大きく影響する可能性があります。例えば、著名な徒歩旅行者で放浪者であるクリス・マッキャンドレスは「幸福は分かちあえたものだけが、ほんものである」と記しています23※。

ある研究は、体験にお金を使う場合と品物にお金を使う場合、そして一人だけの目的のためにお金を使う場合と社会的な目的のためにお金を使う場合で、幸福感に対する相対的なメリットを比較することで、この疑問を直接検証しました24※。この研究は、お金を使うベストな方法について、一体、どのようなことを教えてくれたのでしょう?

第一に、自分で使う予定の財布や時計を買う場合よりも、家族みんなで楽しめる新しい大型テレビを買う場合の方が、より大きな幸福感が得られることがわかりました。この研究結果は、品物にお金を使う場合と体験にお金を使う場合のどちらにも当てはまります。つまり、友人とコンサートに行く、夫婦で旅行するなどの社会的な共有体験にお金を使った人は、一人でスポーツイベントに行く、一人で旅行するなどの単独での体験にお金を使った人と比べて、満足感が高かったのです。

プロジェクションスクリーンで映画を見ている
写真=iStock.com/petesphotography
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/petesphotography

しかし、幸福感を最もよく予測したのは、夫婦で旅行を計画したり、家族全員でブロードウェイを観劇するなどの社会的な共有体験にお金を使うことでした。実際、社会的な共有体験は、単独での体験や品物にお金を使った場合と比べて、幸福感に大きな影響を与えていました。これらの結果は、体験にお金を使うこと、特にその体験を大切な人たちと共有することが幸せに大きな影響を与えることを示唆しています。

■追体験の効果

カリブ海にあるオールインクルーシブ・リゾートでリラックスした1週間の旅、ローマでの刺激的な美術館や史跡巡りの旅、「ヨセミテ国立公園」へのハイキング旅行など、素敵な旅行をした、と想像してください。今度は、あなたが新車、高級腕時計、毛皮のコートなど、所持品に大金を使ったことを想像してください。

どちらの支出のほうが他の人と共有する可能性が高いでしょうか?

予想がつくと思いますが、私たちは、所持品にお金をつかったことよりも、体験したことを他の人に話す場合の方がはるかに多いのです。さらに、体験について話すことで、元の出来事に対する楽しみが増します25※。

私たちは、自分の旅を人に語るのが大好きです。語ることで、その体験を心の中で追体験しているからです。このように、体験は振り返ることができるというポイントは、その出来事を価値あるものにします。

高額の所持品を同じように購入した場合、その話を他人とするのはあまり楽しいことではありません。最初のうちは、新車を買ったことをちらっと話すかもしれませんが、購入したときのことや運転した経験を他人に話し続けることはまずないだろうと思います。

この研究の著者であるアミット・クマールは「モノはどうしても慣れることで『消えていく』のです。かつて愛用したウォークマンは、今では時代遅れです。ところが、体験は、

映画『カサブランカ』で、ハンフリー・ボガート(訳注:映画俳優)がイングリッド・バーグマン(訳注:映画俳優)に『僕たちには一緒に過ごしたパリの思い出があるさ』と語ったように、記憶や物語の中で生き続けます」と述べています。

■ワールドシリーズ・チケットのジレンマ

私の兄弟のマットは、プロ野球チーム「シカゴ・カブス」のシーズンチケットを長年所有しています。2016年10月、彼はワールドシリーズの試合のために持っている4枚のチケットをどうするか、というとても変わったジレンマに直面しました。

キャサリン・A・サンダーソン『ポジティブ・シフト 心理学が明かす幸福・健康・長寿につながる心の持ち方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、本多明生訳)
キャサリン・A・サンダーソン『ポジティブ・シフト 心理学が明かす幸福・健康・長寿につながる心の持ち方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、本多明生訳)

選択肢の一つは、それは本当に特別な機会なので、奥さんと2人の子どもたちと一緒に試合観戦に行く、というものでした。もう一つの選択肢は、そのチケットを売って1万ドルをゲットする、というものでした。

本章をご覧頂いた皆さんは、マットへの私からのアドバイスを想像することができると思います。幸福に関する実証的な研究に基づくと、ベストな答えは2つあります。

一つ目は、もちろん、家族と一緒に試合に行って、その共有体験を楽しむことです(そして、そのときの記憶を長く味わい、思い出すこと、です)。もう一つの良い選択は、チケットを売って、そのお金で、ディズニーランドやグランドキャニオン、ハワイなどに家族で旅行する、というものです。どちらを選んでも、新車やリビングルームの家具を買うよりも大きな幸せが得られるはずです。最終的に、マットの家族は、試合観戦に行って、リグレー・フィールド(訳注:イリノイ州シカゴにあるカブスの本拠地の球場)でカブスのワールドシリーズ優勝を奇跡的に目撃することができました。

マットとその家族にとっては、1万ドルを手っ取り早くゲットするよりも、試合観戦に行くことにお金を使う方がずっと良い選択でした。彼らは試合に行くことを期待し、家族で試合観戦に出かけて、この唯一の体験について他の人と話をしながら、この夜のことを思い出し続けているのです。これこそ、お金で買える幸福、です。

(心理学者 キャサリン・A・サンダーソン)

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