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お金持ちになると"小さな喜びを味わう能力"を奪われる…「幸せになるためのお金の使い方」5大原則

プレジデントオンライン / 2024年5月2日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/catchlights_sg

幸せになるお金の使い方は何か。昭和女子大学総長の坂東眞理子さんは「ハーバード大学ビジネススクール教授のマイケル・ノートンとブリティッシュコロンビア大学教授エリザベス・ダンはは、幸せになるためのお金の使い方として『経験を買う』『ご褒美にする』『時間を買う』『いま払ってあとで消費する』『他人のために使う』の5つの原則を挙げている。食欲や性欲や所有欲などの欲望を満足させる幸福は長続きしないが、『経験』にお金を使うことは思い出を豊かにする」という――。

※本稿は、坂東眞理子『与える人 「小さな利他」で幸福の種をまく』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

■幸せな人生を築くための賢いお金の使い方

私は、お金は幸福にとってある程度は必要だけれど、どれだけ持っているかより、その使い方が重要ではないかと考えています。

しかしお金に関しては「どう稼ぐか、どう貯蓄するか(どう倹約するか)、どう増やすか」という助言や指導の本はたくさん書かれていますが、「幸せな人生を築くための賢いお金の使い方」について書かれたものは、ほとんど見られません。

お金をブランド品などの贅沢品に使っても満足感はすぐに薄れ、幸せにはつながらないのです。

どういうお金の使い方が幸せをもたらすのかを考えることは重要です。特に必要経費以上の収入や資産のある人にとっては、賢いお金の使い方を身につけるのは教養のひとつです。

人間には適応能力があり、同じように贅沢や恵まれた環境でもすぐに慣れて、ありがたみを感じなくなります。高額の宝くじに当たって有頂天になっても、一年後には幸福度がほかの人と変わらなくなるという研究もあります。

■富は小さなよろこびを味わう能力を奪う

お金や、それによって得られる欲望の達成から得られるよろこびは、「へドニア」(快楽主義)に属するよろこびで、特に短い間しか持続しない傾向が強いようなのです。

バーゲンセールのバッグでなく、その100倍以上の価額のブランド品を買ったり、中古のボロ車から最新性能の新車に乗り換えたりすれば満足感が高まり、幸せになると思うかもしれません。

でも、欲しいものを手に入れ、夢が実現すればすぐに「あたりまえ」となって、幸せは長続きしません。むしろ無駄遣いをしてしまったと後悔するかもしれません。

「サイエンス・オブ・ハピネス」の研究をリードする心理学者でカリフォルニア大学教授のソニア・リュボミアスキーは「何かを持てば幸せになる、何かになれば幸せになる」という思い込みは「幸せの神話」だといっています。神話であって現実ではないということです。

また富は人々に最高の経験をもたらすが、小さなよろこびを味わう能力を奪うとも語っています。

■いまも私の心を温める母を連れ出したハワイ旅行の思い出

食欲や性欲や所有欲などの欲望を満足させるへドニアの幸福は長続きしません。それより行ったことのない場所に旅行するとか、友人やパートナーとの休暇や外出といった「経験」にお金を使うことは思い出を豊かにします。

また、自分の成長や子どもへの教育にお金を使うことは、自分の心を豊かにしてくれるだけでなく、将来の豊かさをもたらしてくれる投資です。

たとえば親しい友人たちと一緒に旅行や食事をすれば、共通の経験を分かち合うことができます。私も大学時代の親しい友人四人と故郷の温泉に行った旅の思い出は、そのうちの二人がなくなってしまったいまは、かけがえのない思い出となっています。

母親を連れ出したハワイ旅行では、彼女がどんなによろこんでくれたか、母がなくなったいまも私の心を温めてくれます。

ハワイのワイキキビーチの風景とフラワーネックレス
写真=iStock.com/Maridav
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Maridav

安定的な収入が確保できることは必要ですが、いまを充実させるように賢くお金を使うと人は幸福になり、長い目で見ると将来の人生の成功の可能性を高めます。

無駄遣いや、バカな浪費でなく、私は幸せな人生のためには「無形資産」への投資が必要だと思っています。貯蓄や不動産のような有形資産への投資ではなく人間関係、健康、知識・スキル、教育などの無形資産への投資です。

こうした無形資産への投資――無形資産を増やすための行動こそ「与える」ことなのではないでしょうか。

人助け、感謝、応援などを与えることが人間関係を豊かにし、自分や家族への教育が、将来につながる無形の資産となるのです。

利他的行動は将来への投資なのです。

■いまを充実させ、幸せになるためのお金の使い方

いまを充実させ、幸せになるためのお金の使い方として、ハーバード大学ビジネススクール教授のマイケル・ノートンとブリティッシュコロンビア大学教授エリザベス・ダンは「経験を買う」「ご褒美にする」「時間を買う」「いま払ってあとで消費する」「他人のために使う」の5つの原則を挙げています。

フェリーツアーに参加する若いカップルの観光客
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

モノを手に入れたよろこびは一過性でしかなく、時間がたつとそのありがたみが薄れますが、経験に対する支出は時間がたっても思い出として残り、満足感が増します。

もちろん「経験を買う」といってもすべてが幸せをもたらすわけではありません。飲酒、薬物、賭博、買春などの「経験」にお金を使うのは後悔と罪悪感をもたらし、健康を損ね、場合によっては人生を破壊してしまいます。

幸せと満足をもたらす経験として、ノートンは次のような条件を挙げています。

①誰かと共有し、社会的つながりを実感できる
②これから先も何度でも語りたくなるストーリーが生まれる
③ありたい自分や、なりたい自分をしっかりと実感できる
④比較できない特別な経験ができる

■特別な経験として忘れられない5日間の旅

たとえば私は2012年の夏、女性の副首相との縁があって生まれてはじめてロシア連邦の一つの国・サハ共和国を訪れました。サハ共和国は日本の8倍以上の土地に98万人しか住んでいない、東シベリアの広大な土地に広がる極寒の地です。

レナ川をさかのぼり、シャーマンの祭りを見たり、氷の殿堂で夏でも零下20度の寒さを体験したり、いまでも鮮やかな記憶が残っています。

それによって仕事がうまくいったとか、論文が書けた、旅行記を書いたなどの具体的なメリットはありませんでしたが、その5日間の旅は、いまでも特別な経験として、忘れられない記憶となっています。

亡くなった母を京都旅行に連れ出したことも忘れられません。私の出張と日程を合わせた、暑い時期のあわただしい旅でしたが、母は修学院離宮の説明や、祇園の山鉾の細かいディテールを何度も思い出して語ってくれたので、そのたびに私は、いいことをしたなと心がほっこりしてうれしかったものです。これは①と②のミックスです。

そんなよい経験もあって、私は依頼された外国講演は時間さえあれば引き受けてきたのですが、ワルシャワ大学、ベネチア大学などでの講演は大学同士の交流協定にも結びつき、とても幸せな経験になりました。

■効果のある時間を買うのは、生きたお金の使い方

では次の「ご褒美にお金を使う」のはどうでしょう。何かやり遂げたとき、仕事を頑張ったとき、いつもより少し高価な食事や、飲み物、あるいはちょっとしたアクセサリーなどを自分へのご褒美にすると、幸せな気持ちが高まります。

自分だけでなく、子どもや友人などにも、一生懸命頑張ったらご褒美をあげるのも、人との結びつきを強めます。

三番目の「時間を買う」は、より大切なことに時間を使うためにお金を使うことです。

たとえば、忙しいワーキングマザーがお掃除サービスや料理のテイクアウトを利用するのはけっして無駄使いではありません。

それによって子どもとゆっくり過ごす時間が生み出せるし、疲れすぎてイライラしないですみます。そんな効果のある時間を買うのは、生きたお金の使い方だと思います。

掃除をすると気分転換になってすっきりし、幸せを感じるという人はお掃除を外注しないでしょうし、料理が大好きな私は外食より家で調理するほうが好きですから、外食やテイクアウトはあまり利用しません。

人によって時間の価値は異なるので、自分が幸せな時間だとは思えない時間を減らすためにお金を使うのです。

■ビルゲイツ、ザッカーバーグが財団をつくり寄付をする理由

「いま払ってあとで消費する」というのは、たとえばパック旅行に申し込む、予約でディズニーランドやコンサートのチケットを手に入れることなどです。実際に楽しむのはいま現在でなくても、行くまでの楽しみでワクワクして幸せになります。

一番すばらしいお金の使い方は「他人のためにお金を使うこと」だそうです。利他的なお金の使い方が一番満足感が高くなるのです。

マイクロソフトの創業者で億万長者のビル・ゲイツは、自分の財産でビル&メリンダ財団をつくり、世界中の子どもたちを助けるなどの公益活動にいそしんでいます。

フェイスブック(現メタ)創業者のマーク・ザッカーバーグも、子どもが生まれたのを機に、資産を寄付しました。

アメリカでは大富豪は公益的事業に寄付するべきだという文化があって、自分の能力を十分に発揮してバンバンお金を儲けるが、そのお金を財団をつくったり寄付をして税金として国に納めるより世のため人のために使うのが、もっともかっこいい生き方だとされています。

大富豪でなくともふつうの人にも寄付文化が根づいており、大学や公益団体に多くの寄付が寄せられています。

寄付金でいっぱいの瓶とThank youと書かれたハート
写真=iStock.com/CatLane
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/CatLane

■宗教が持つ弱者に対する温かいまなざし

よく母親は、自分は食べないで子どもに美味しいものを譲ります。それは「偉大な母性愛」とみなされますが、母親は自分で食べるより、美味しそうに食べる子どもの姿を見る幸福感に浸っているのでしょう。

私も、孫や子どもが、トウモロコシやメロンを美味しい、美味しいと食べるのを見ると、自分だけで食べるより、ずっと幸せな気分になります。

子どもや家族だけではありません。困っている人を助けることも人を幸せにします。貧しい人に対する寄付は、仏教では「布施」、イスラムでも「喜捨」として信者に義務づけられています。

自分のために使わず、ほかの人に贈り物や寄付をする、社会的な活動にお金を使うと人間は幸せになるのです。

対象が同じ宗教の信者とか、出身校や出身地が同じとか、共通性があるほうが、より幸せを感じるのだと思います。

2013年のL・B・アキニンの調査によれば、136か国のデータを地域別に考察したところ、どの地域においても献金や寄付などの社会的支出をしているかどうかが、幸福感に大きな影響がありました。

ビル・ゲイツのように巨額なものでなくても、社会のためにお金を支出するという行為は寄付する人の自尊感情を高めてくれます。

坂東眞理子『与える人 「小さな利他」で幸福の種をまく』(三笠書房)
坂東眞理子『与える人 「小さな利他」で幸福の種をまく』(三笠書房)

キリスト教では「汝の隣人を愛せよ」といい、仏教では「利他の慈愛」を説きます。現代の心理学や経済学でも同じように、利他的な行動が幸せになると示しているのは、人類が生き延びるためには助け合いが不可欠で、その社会的DNAが深く刻まれている種族だけが生き延びてきたのです。

その精神が自分を幸せにするだけでなく、現実の世の中を明るくし、危機を生き延びさせてくれます。

自然を収奪し、破壊して成長し続けた現代文明は、気候変動やパンデミックを制御できなくなっています。私たちは自己の利益だけを追い求めることをやめ、利他主義に変わることが必要になっています。

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坂東 眞理子(ばんどう・まりこ)
昭和女子大学総長
1946年、富山県生まれ。東京大学卒業後、総理府(現内閣府)に入省。内閣総理大臣官房男女共同参画室長。埼玉県副知事。在オーストラリア連邦ブリスベン日本国総領事。2001年、内閣府初代男女共同参画局長を務め、2003年に退官。2004年、昭和女子大学教授、同大学女性文化研究所長。2007年に同大学学長、2014年理事長、2016年総長。2023年に理事長退任。著書に300万部を超えるベストセラーの『女性の品格』(PHP研究所)のほか『70歳のたしなみ』(小学館)など多数。

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(昭和女子大学総長 坂東 眞理子)

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