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なぜ「口下手な営業のほうが売れる」のか…「ペラペラ喋る営業」がハイパフォーマーになれない意外な理由

プレジデントオンライン / 2023年11月29日 9時15分

ハイパフォーマーは「話が上手くない」(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/kuppa_rock

「売れる営業」と「売れない営業」はどこが違うのか。人事・組織コンサルタントの相原孝夫さんは「営業職のハイパフォーマーの多くは、必ずしも話が上手くない。ペラペラ喋るより、口下手でも顧客の話をじっくり聞くほうが信頼されやすい」という――。

※本稿は、相原孝夫『人望が集まるリーダーの話し方』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■ハイパフォーマーは「話が上手くない」

営業職のハイパフォーマー分析で発見したのは、ハイパフォーマーの多くは必ずしも話が上手くないということです。

実際、「口下手なほうが信頼される」という類のことを多くの人から聞きます。

昔と違い、今は情報があふれています。調べようと思えばいくらでも調べられます。だから短い時間で多くの情報を話す必要はないのです。ペラペラしゃべり出した瞬間、相手は売りつけられると思い警戒してしまいます。

■商品説明をすると売れなくなる

「商品説明をしてしまうとかえって売れなくなる」と聞いたこともあります。

自動車のディーラーマンで、ハイパフォーマーではあるものの、「車にはあまり詳しくないんです」という方がいました。

ディーラーマンですから、当然車の説明をします。しかし、お客様は車の説明を求めていない場合が多いと彼は言います。

「車はイメージ商品です」と彼は言い切ります。

「この車を買うと、どのように使えて、どんな楽しいことが起こりそうか、イメージを膨らませられれば、車は売れたも同然」と言うのです。

また、自分がしゃべるよりもお客様から話を聞くことを優先する、というこだわりも持っていました。

「話を聞いてもらうと、相手のことを信頼する」というケースが確かにあるのです。

■「結論を急がせない」ほうが信頼される

あるお客様は「家族でキャンプに行くときに乗って行ける、ある程度ごつい車がいい。一方で街中でもオシャレに乗りこなせる車がいい」という希望を持っていたそうです。

そこまで聞いて、初めて特定の車を勧めます。

「それなら、この車がお勧めです。一見ごつく、キャンプ場などでもけっこう目立ちますが、曲線が多く使われているので、街中でもオシャレなSUVとして違和感なく乗ることができます」
「また、この車は山道と街乗りとでシフトチェンジできる機能がついているので、どちらも快適に乗りこなすことができます」

そしてあえてクロージングをかけないのです。結論を急がせない。車や住宅など、大きな買い物の場合、契約を焦ると逆効果だというのです。

「急がずじっくりお考えください」と余裕を見せたりします。お客様もそう思っているので、その一言に共感し、担当セールスに信頼を寄せるのです。

こうなればもはや、車を買うときはこの人から買おうという考えに至っています。

■ハイパフォーマーは「すぐ返事をしない」

私はライフワークとして、延べ3000人以上に対してインタビュー・分析を重ねてきました。インタビューをしてみると、ハイパフォーマーとアベレージパフォーマーとの間に、はっきりと違う点が発見できます。

その1つに「質問に対して即答するか否か」という点があります。

腕を組む人のイメージ
写真=iStock.com/tadamichi
ハイパフォーマーは「すぐ返事をしない」(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/tadamichi

「即答するほうが優秀」であると一般的には見られがちかもしれません。

しかし、質問の内容や状況にもよりますが、じっくり考えて答えるべき質問にも焦って即答するような人は、ハイパフォーマーには見られません。

■アベレージパフォーマーほど焦って返答する

たとえば「10年後、担当されている事業はどのような状態にあると思いますか?」という質問に対し、きちんと整理された形で即答できる人はそうはいません。

アベレージパフォーマーの多くは、何かしら焦っており、即答できる質問でないにもかかわらず、即座に曖昧な回答を返したり、ごく一般的な言説を述べて終わったりします。

たとえば「今よりもさらにシェアを拡大し、競争力も増していると思います」とか、「激しいグローバル競争の中で、厳しい戦いを強いられていると思います」などです。

一方で、ハイパフォーマーの多くは質問に対して「なるほど」などと言っていったん受け止めて、しばし考えてから地に足の着いた回答をされます。

「環境変化の中で最も読みづらい点は……であって、そうした中でも確実に言えることとしては、我々がもし……という戦略をとったならば、……となっている可能性が高いであろうということです」など、きちんと考えているがゆえの具体性があるのです。

そうした所作からは自信と余裕が感じられます。

■自分を実力以上に優秀に見せたがる

アベレージパフォーマーとしては、どうやら「質問に対しては即座に明確に答えなければならない」などの強迫観念のようなものを持たれている人が多いということでした。

それゆえ、「答えられそうにない難しいことを聞かれたらどうしよう」との恐れがあり、浮足立っているわけです。

その裏には、自分を実力以上に優秀に見せたいとの思いがあるのかもしれません。

親指を立てる人のイメージ
写真=iStock.com/frema
自分を実力以上に優秀に見せたがる(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/frema

一方で、ハイパフォーマーは「自分に答えられないことは他の誰に聞いても答えられないだろう」というくらいの自信があるのです。

「どんなことでも聞いてくれ」というような余裕が感じられるわけです。

むしろ、いろいろと難しい質問をされることを楽しんでいる様子すら見受けられるものです。

ハイパフォーマーがなぜ即答しないのかと言えば、難しい質問に対してそれなりに時間をかけて考えてから回答するからに他なりません。

余裕を見せるためにあえてゆっくり回答しているというようなことはもちろんなく、ただ質問に真摯(しんし)に向き合っているにすぎません。

■自信があるリーダーほど「自己否定をいとわない」

上司の立場にある人は一般的に強弁しがちです。

自信満々に断定的に話す傾向があります。

その背景の1つに「上司は常に自分が正しいと思いがち」という点が挙げられます。

他者の意見に対して聞く耳を持たず、ひたすら自分の意見を通すことになります。それくらい自信がないとリーダーなど務まらないという見方もあります。

しかし、本当に自信があるリーダーは、自己否定をいとわないものです。

「もしかしたら違うのではないか」
「もっと良い方法があるのではないか」

とメンバーの意見にも耳を傾けることができるのです。多くの意見をとり入れて、成果をあげてきた経験があるので、それを当然と思っているのです。

■畑違いの部署では機能しなくなる

自分が正しいと思いがちな上司は、部下の意見に耳を傾ける習慣がないので、畑違いの部署に異動になったりすると、まったく機能しなくなることがあります。

相原孝夫『人望が集まるリーダーの話し方』(かんき出版)
相原孝夫『人望が集まるリーダーの話し方』(かんき出版)

下の立場の人に教えを乞うことをしないのです。

やがて部下との間に溝ができて、組織から孤立していくことになります。そうした状況でも、権威を示さなければならないと思い、さらにキツく当たるようになります。

聞く姿勢のある上司の場合、謙虚に教えを乞うことができます。

また、その分野の専門性はなくとも、効果的な質問をすることで問題点を洗い出したり、部下の発想を喚起したりします。

上司の役割は「部下が働きやすく、実力を発揮しやすい環境をつくること、他部署との交渉、上への上申などをサポートすること」と心得ているのです。

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相原 孝夫(あいはら・たかお)
人事・組織コンサルタント
株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長。早稲田大学大学院社会科学研究科博士前期課程修了。マーサージャパン株式会社代表取締役副社長を経て現職。人材の評価・選抜・育成および組織開発に関わる企業支援を専門とする。主な著書に『人望が集まるリーダーの話し方』(かんき出版)、『職場の「感情」論』『バブル入社組の憂鬱』『ハイパフォーマー 彼らの法則』(以上、日本経済新聞出版)、『仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか』(幻冬舎)などがある。

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(人事・組織コンサルタント 相原 孝夫)

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