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花粉症の人は「網膜があっけなく破れる」恐れがある…「100年視力」のために絶対やってはいけないこと

プレジデントオンライン / 2023年12月24日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

平均寿命が延びる一方で、目の寿命は長くても70歳までといわれている。眼科外科医の深作秀春さんは「100歳まで視力を維持するためにも、絶対に目をこすってはいけない」という――。

※本稿は、深作秀春『100年視力』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

■視力検査で「正視」の人は非常に少ない

年を重ねると、多くの方に「近視」「遠視」「乱視」「老眼(老視)」が見られます。

視力検査は、非常に身近な視機能の検査ですが、これは、遠方5メートルの距離で視力表を見るものです。

水晶体を厚くして焦点を合わせようとするのを「調節」といいます。この調節が入ると、焦点の位置が変化して、安定した検査ができません。調節が入らない、この5メートルの距離での視力を測ります。

このとき、見ているものからの光は平行な光線として目に入ってきて、平行光線は角膜でまず内側に曲がります。内側に曲がった光はさらに次の水晶体という凸レンズでより内側に曲がります。2段階に光が曲げられて内側で重なる焦点を結びます。

ところが、この光の屈折や焦点の位置に異常が起こると、くっきりとは見えなくなります。それが、「近視」「遠視」「乱視」です。

5メートル離れたこの距離で1.0ほど見える目を「正視」といいますが、現代は正視の人の割合は、非常に少なくなっているのが現実です。正視の人の目の長さ(眼軸/角膜から網膜までの長さのこと)は、約24ミリほどです。

■たった1ミリ伸びるだけで視力1.0→0.1まで低下

一方で、「近視」の人は、この5メートルの距離で視力表がよく見えません。近視の人の目は、長くなっていて、たとえば視力が0.1の人では、眼軸は25ミリまで伸びています。

眼軸が長いほど、入ってきた光の焦点を結ぶ点は目の内部(網膜の手前側)に来てしまい、遠方がよく見えません。近視の目は、伸びてしまった目、ということです。

覚えておいていただきたいのは、眼軸が1ミリ伸びるだけで、視力が1.0から0.1まで落ちてしまうということ。わずか1ミリの差と思うなかれ。「目が伸びる」ということは想像以上に大きな問題です。

【図表】「正視」「近視」「遠視」と網膜
出典=『100年視力』(サンマーク出版)

強度近視の人では、眼軸が30ミリほどの人は日本にも多いのです。遺伝的な近視もありますが、後天的には、眼球が柔らかくて、眼圧によって目が伸ばされて長くなり、近視が進みます。

一方で、「遠視」とは目(眼軸)が短い目です。

平行に入ってきた光線が結ぶ焦点が、目より外側にはずれてしまいます。「遠視」の人は、遠方を見る際も、遠視の部分を調節するために、毛様体筋が緊張して水晶体を厚くしてカーブを強くし、光をより強く曲げなくてはなりません。このために、常に目が疲れます。

とくに近くはより調節が必要なので、より見えにくいのです。つまり調節力が落ちて近くが見えにくい「老眼」を早くから感じます。

■子どもを見て内斜視かも? と思ったら眼科へ

ただし、子ども時代は眼軸が短いので遠視であることが一般的です。しかし、遠視が強すぎると、それを調節しようとして、より強く、水晶体を膨らます調節をします。この調節は近くを見る行為なので、調節と同時に目を内側に寄せる輻輳(ふくそう)反射が起きます。

このために、通常より強い調節によって、内側に向くのもより強くなることで内斜視となります。これを、「調節性内斜視」と呼びます。

このような調節性内斜視はメガネで治せるので、内斜視手術をしてはいけません。

しかし、学校の視力検査では遠視を見落とすことが多い。子どもで著しく集中力がないとか、近くを見ていて内斜視が起きたなどがあれば、眼科で正しい視機能検査を受けてください。

繰り返しますが通常、小児では眼軸が短くて「遠視」の目です。これが成長に従って眼軸が伸びて遠視が軽くなります。

成長につれて眼軸が伸びるのは、一般的に6歳から12歳の間です。つまり小学校時代に眼軸が伸びることで近視化し、通常は思春期頃までに治まります。

■近視の子どもが増えている根本原因

子どもの目の話を続けますが、近年の子どもたちの近視化率は、我々の子ども時代の約2倍以上です。

原因となっている社会的要因で注目すべきは、子どもたちが太陽光の下で十分に活動しないことです。

昭和の子どものように外でみんなで遊んだり、運動したりすることなく、近年の子どもたちは、小学生のうちから家の中で過ごしたり、塾に行ったりしている。それが、近視が増えている大きな原因です。

目の組織の多くは膠原線維という線維でできています。この膠原線維は太陽の紫外線や紫青の短波長可視光線を浴びて、太くなったり、互いにくっついて束になったりして、眼球が硬くなります。眼球が硬くなれば、眼圧で伸びにくくなり近視化も防げます。

太陽光を浴びる時間が短ければ、膠原線維が細く弱いために、眼球の圧力によって、目がどんどんと伸ばされてしまうのです。

近視を予防するために、6歳から12歳の間は、毎日2時間は外で太陽光を浴びるよう、大人が気をつけてあげるのが望ましい。子どもは大人と違って代謝がよく、体内の抗酸化物質が豊富なので、太陽光の紫外線の問題はあまりありませんから、子どもの外遊びにサングラスの必要はありません。

■大人になっても視力が下がるなら病気の可能性

20歳を過ぎても近視化が止まらない場合、眼軸が非常に長い強度近視となります。

強度近視は眼球が長く伸びるために、視神経が圧迫されて血流も悪くなり、多くが緑内障となります。また、網膜が伸び切ってしまい、網膜の端である鋸状縁近辺で網膜に裂け目が出ます。これが大きくなると網膜剥離となるのです。

強度近視は病気であり、メガネでも視力矯正は難しくなります。

6歳から12歳までの子どもは、太陽光を浴びて膠原線維を太く硬くすることで、眼軸が伸び続けて強度近視となるのを防ぐとお伝えしましたが、紫外線によって膠原線維を太くすることで眼球の硬さを保つ方法は、大人にも効果的で、紫外線で近視治療をする機械があります。

紫外線吸収率を上げるビタミンB点眼をして、医療用紫外線を目に30分浴びせる方法です。しかし、大人は子どもにくらべて新陳代謝が悪いので、紫外線による細胞障害が起きて、白内障を進めてしまう可能性もあり、マイナス要素もあります。

強度近視の場合、比較的若い人でも軽い白内障があるならば、白内障手術で多焦点レンズ移植術を行えば裸眼で1.2以上の視力が出て、どこもよく見えるようになります(乱視・老眼も治ります)。白内障がない場合には、有水晶体眼内レンズのICL移植での近視矯正治療ができます。

■かゆくても、目をこすってはいけない

目を大切にするために、してはいけないことがあります。

それは、「目をこすらない」ということ。なあんだ、そんなこと? と思うなかれ。目が何ものにもまもられていない、むき出しの臓器であることは先述したとおりですが、衝撃に「劇的に」弱いということを何度も強調したいと思います。

眼鏡を上げて、目をこすっている女性
写真=iStock.com/seb_ra
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/seb_ra

私はよく「豆腐のように扱ってください」と言いますが、まさに、ぐちゃっとつぶれてしまうような、やわらかく繊細なもの。そんな目を「こする」ことは、非常に大きな衝撃を目に与えてしまいます。

近年、アレルギー疾患が非常に増えています。毎年2月頃からスギ花粉が飛び始めますね。2023年は前年より10倍も多かった、などとニュースで報じられていました。

目がかゆいと、しょっちゅうこすったりします。このアレルギーのひどい人にはアトピー性皮膚炎がある人もいます。目をこすったり、軽く叩いたりする力は大したものではないですが、毎日、何百回もこすっていると、外傷となります。

プロボクサーが顔に受けるパンチなどによって、目に外傷を受け、網膜剥離や白内障を起こすことがありますが、そのような選手たちも、数多く深作眼科を訪れます。そんなボクサーたちと同じように、目をこすることで、それと同じ症状を負うことがあるのです。

■花粉症、近視の人は網膜が簡単に破けてしまう

アレルギーがあって目をこする人と、パンチを浴びるボクサーに、同じ目の障害が起こるのか? 疑問に思うかもしれませんが、目をこすることの1回の外傷力は小さくても、数千回や数万回も目をこするうちに、ボクサー同様に目は大きく傷ついてしまうのです。

深作秀春『100年視力』(サンマーク出版)
深作秀春『100年視力』(サンマーク出版)

アトピー性皮膚炎の患者さんには、若い人でも白内障や網膜剥離だけでなく、「円錐角膜」という角膜の異常も起こりやすい傾向があります(円錐角膜とは、目を常にこすることで、角膜の線維の梁構造が壊れてしまい、弱くなった角膜部分が眼圧で外に出っ張ってしまう状態のこと)が、それもこの「こすってしまう」習慣ゆえです。

また、アレルギーがない人でも、強度近視の症状がある人は、目が長く伸びた状態になっているため、網膜周辺部が伸ばされて薄くなっています。目がかゆいからとこするだけでも、薄い網膜は簡単に破れ、網膜剥離になる人もいるのです。

花粉症のハイシーズンには多くの網膜剥離の患者さんが来院します。そしてその多くが、アレルギー性結膜炎で目をこすったくらいで網膜剥離になるなんて、と驚きます。

とにかく、目は「豆腐のように」扱うこと。こすってはいけません。

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深作 秀春(ふかさく・ひではる)
深作眼科院長 眼科外科医
1953年神奈川県生まれ。運輸省航空大学校を経て、国立滋賀医科大学卒業。横浜市立大学附属病院、昭和大学藤が丘病院などを経て、1988年深作眼科を開院。これまでに20万件以上の手術を経験。アメリカ白内障屈折矯正手術学会(ASCRS)にて常任理事、ASCRS最高賞を20回受賞。世界最高の眼科外科医を賞するクリチンガー・アワード受賞。『視力を失わない生き方 日本の眼科医療は間違いだらけ』『緑内障の真実』(以上、光文社新書)、『世界最高医が教える 目がよくなる32の方法』(ダイヤモンド社)、『視力を失わないために今すぐできること』(主婦の友社)など著書多数。

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(深作眼科院長 眼科外科医 深作 秀春)

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