投資先と金額は「毎月積立」と同じなのに、利益率はもっと高い…投資のプロが考えた「週1回10秒チェック法」
プレジデントオンライン / 2024年3月28日 10時15分
※本稿は、投資塾ゆう『知識も時間もないですが、新NISAでほったらかし投資よりお金を増やしたいです』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■「積み立て投資よりも早くたくさん儲けたい」人はどうすべきか
かつて「老後2000万円問題」が話題になりましたが、新NISAを使って非課税の積み立て投資を10年、20年と継続していけば、老後までに2000万円の資金を用意することは決して難しくありません。積み立て投資は簡単で、知識も時間も経験も不要で、だれにでも勧められる投資法です。
しかし、積み立て投資を継続して少しずつ利益が積み重なっていくと、より多くの利益を獲得したいという欲が出てくる人もいます。積み立て投資は年によってパフォーマンスに差はあるものの、S&P500の場合は平均10%ほどの利回りで資産が増えていきます。こうした投資の効果を実感すると、もっと儲けたい、もっと早く利益を出して老後だけでなく今の生活も豊かにしたい、などと思うようになるものです。
そこで、積み立て以外の方法での投資に興味を持って、チャレンジする人も多くいます。それは大いに結構なことですし、実際にそこから本格的に投資の勉強をスタートして、個別株やFXなどで大成功する人もいます。
■安易に個別株、FXに手を出すと大損する
ただ、残念なことに、ステップアップにチャレンジした結果、お金を減らすという事態に見舞われる人のほうが圧倒的に多いのが現実です。個別企業の株式を買ったり、FXに挑戦したり、中には暗号資産に手を出す人もいるのですが、大きな損失を出して「やらなければよかった」という結果になりやすいのです。
個別企業の株式に投資する場合、良い企業に投資できれば市場全体に投資する積み立てよりもはるかに大きな利益を出すことができます。しかし、逆もまたしかりで、良くない企業に投資してしまうと、株価指数は上昇しているのにその企業の株価だけが下落して、大損してしまうという事態が生じます。
■草野球選手はメジャーリーガーには勝てない
個別株投資で成功するには良い企業や株価が上がる企業を見極めるため、決算書を読み込んで分析したり、ビジネスモデルの善し悪しや市場の成長性、競合と比較した際の強みや弱みを調べたりして企業の将来性や成長力を見極める必要があります。
さらにいえば、どんなに良い銘柄でも割高なタイミングで投資してしまうとうまくいかないので、買い時を見極めるためのテクニカル分析(チャートを見て、過去の値動きから将来の値動きを分析する方法)も欠かせません。
これらのスキルは一朝一夕で身に付くものではありません。しかも、株式市場はほったらかしの積み立て投資しか経験のない個人投資家と、莫大(ばくだい)な金額を動かし続ける百戦錬磨の機関投資家が同じ土俵で戦う場です。草野球の人数合わせで呼ばれただけのど素人が、メジャーリーガーを相手に試合をさせられるようなもので、まぐれで勝つことはあっても、勝ち続けることは至難の業です。
■シンプルな「マイナス5%ルール投資法」
そこでひらめいたのが、過去のデータに基づいた明確なルールがあればいいのではないか、というアイデアです。「ここまで下落したら、高い確率で勝てる」というわかりやすい基準があれば、勝率の高い急落局面とそうでない局面を一発で見分けることができ、普段は積み立て投資しかしない人であってもS&P500の一括投資で個別株投資に引けを取らない利益を得られるのではないかと考えて、研究を始めたのです。
そこで、過去50年の株式市場のデータを分析し、試行錯誤を重ねてたどりついた結論が、「▲(マイナス)5%ルール投資法」です。
私が試行錯誤の末にたどりついた▲5%ルール投資法は、とてもシンプルなルールに従って投資する方法です。具体的には、株価指数の中で世界一重要なS&P500が週間ベース(前週の金曜日の終値から今週の金曜日の終値)で5%以上下落したら買う、ただそれだけです。それ以外の時には買いません。
■前週の終値より5%以上下落するときだけ買う
たとえば、S&P500の前週の終値が5000ポイント、今週の終値が4750ポイントなら、5%以上下落しているので、▲5%ルールのシグナルが点灯していることになります。今週の終値が4800ポイントや4900ポイントなら、下落幅が5%に達していないので、シグナル点灯はなく、購入のタイミングではありません。
週末にだけ株価をチェックして、▲5%ルールのシグナルが点灯するのを確認した時に一括投資します。それだけで、投資の成果は大きく向上し、積み立て投資では得られない短期的な利益が得られるようになるのです。
では具体的にこの投資でどの程度の勝率や利益が期待できるのか、過去のデータで検証してみましょう。
■投資の成果で重要な「勝率」と「利益率」
投資の成果は、勝率と利益率という2つの観点から評価することが必要です。勝率はすべての投資のうち、どの程度の割合で勝てているかを示します。10回中5回利益を出しているなら勝率は50%で、9回利益を出しているなら90%ということになります。勝率だけで評価するなら、高いほど優れていることになります。
ただ、たとえ10回中9回勝てていても、それぞれの利益が小さく、たった1回の負けの損失額が大きすぎて9回分の利益を全部吹っ飛ばしてしまうようでは、意味がありません。
逆に、たとえ勝率が10%しかなかったとしても、1回の勝ちの利益がとても大きく、9回の負けの損失を合計しても利益が大きく上回るのなら、勝率が低くても実行する価値のある投資法ということになります。このため、どの程度の利益を出せているかを示す利益率も、合わせて検証する必要があります。
■毎月3万円分のETFを24年間購入すると…
S&P500に連動するETF「SPDR S&P500 ETF(以降、SPY)」を使って、より長い期間で▲5%ルール投資法を実行したらどうなるかについて検証してみましょう。
このETFはアメリカの株式市場に上場している商品で、S&P500指数に連動するためeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)とほぼ同等のパフォーマンスが期待できます。日本から円をドルに換えて投資したという想定で、2000年1月から直近の2023年12月までの24年間でシミュレーションしてみましょう。
SPYを毎月最初の営業日に、その時点でのドル円レートで3万円分を買い付ける投資を24年間続けたという想定で計算しました(図表1)。
この方法で積み立て投資のみを継続した場合、つまり月3万円の積み立て投資を24年間行うと、投資した総額は864万円になります。それが24年後には、4668万3939円に成長しています。利益率としては440%、投じた資産は約5倍に増えた計算です。さすが、20年も継続するとすさまじい成長率です。
一方、▲5%ルール投資法のみを実行した場合はどうでしょうか。シグナル点灯回数は30回、総額で1080万円(▲5%ルール投資法の1回あたりの投資額は、積み立て投資での年間投資額と同額の36万円。36万円×30回=1080万円)を投資した結果、7178万5881円に成長しました。利益率は565%、資金は6倍以上に増えた計算で、積み立て投資のみのケースを上回ります。
■併用型の利益率は「積み立てのみ」を上回る
そして最後に、積み立て投資と▲5%ルール投資法を併用した場合を見てみましょう。投資金額は1944万円で、投資を始めて23年5カ月後に1億円を突破し、2023年12月の時価評価は1億1846万9820円になりました。
利益率が最も高いのは▲5%ルール投資法のみの場合で、最も低いのが積み立て投資のみの場合でした。その中間となるのが併用型ですが、投資の額が大きい分、利益の額は併用型が最大となっています。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)を使って5年半投資した場合と同じ傾向が表れており、投資期間を延ばしても同様の成果を期待できると考えられます。▲5%ルール投資法は、過去5年半でも、20年以上継続しても、いずれも有効な投資法であることがわかりました。
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投資アドバイザー
証券会社の営業として7年働いたあと独立。組織のノルマから解放され、お客様のサポートに集中できるようになったことで、「直接アドバイスができない人たちに対して正しい投資知識を身に付けてもらいたい」と思い、YouTubeチャンネルを開設。登録者数は15.8万人、動画の高評価率は98.4%。多くの視聴者から信頼を集める。動画制作には過去データの分析に膨大な時間を費やす。
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(投資アドバイザー 投資塾ゆう)
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