「習い事&遊び」のやめ時を間違ってはいけない…小6秋に「もう受験をやめる」と言いだす子の特徴
プレジデントオンライン / 2024年4月4日 10時15分
※本稿は、安浪京子『勉強とメンタルの悩みを解決!【決定版】中学受験をするきみへ』(大和書房)の一部を再編集したものです。
■中学受験を控え、お稽古事はいつまで続けていいか
今、どんなお稽古事をしているのかな?
お稽古事といっても、時間の短いもの、体力を必要としないもの、長時間拘束されるもの、日々の練習が必要なもの……といろいろあるよね。
好きで続けているお稽古事を「受験だから」とバシッと切られちゃうのは辛いよね。次の中で、きみの気持ちに近いものはあるかな?
みんな私の教え子の例です。
教室が楽しくて、息抜きにもなって、6年12月まで続けていました。
○週1回のピアノ
毎日ピアノを練習していたけれど、6年になるタイミングで一旦お休み。勉強の気分転換として、好きなタイミングで弾いていました。
○週2回の野球
キャプテンになり、週末も試合で模試がなかなか受けられず、翌日の振替模試を利用していました。野球が大好きで責任もあったから、6年9月の最後の大会まで勉強と両立させ、すき間時間をぬって、勉強を頑張っていました。
○週2回のサッカー
夏期講習を休んで合宿に参加していたけれど、6年になるタイミングで一旦お休み。でも身体は動かしたいので、12月まで週1回、個人レッスンを受けていました。
○週3回のスイミング
水泳の後はヘトヘトで勉強の体力が残らず、5年の夏に週1回に減らし、6年になるタイミングで入試が終わるまでお休み。
お稽古事をいつまで続けるかは人それぞれだし、「○○になったらいったんお休み」とあらかじめ決めておくのもありだけど、
○お稽古事が忙しくて勉強時間が取れない
のように、身体や時間が悲鳴を上げ始めたら付き合い方を考えよう。
塾のカリキュラムや学習内容的に、5年生開始時、5年生秋、6年生開始時、6年生夏、といったあたりで考える子が多かったかな。
■「カジュアルな英語」と「野球やサッカー」は大違い
お稽古事は、内容によって必要な時間と労力がかなり異なります。
例えば、1回1時間程度のカジュアルな英語ならば、ほぼ負担になりません。
一方、野球やサッカー、スイミングは、1回あたりの時間も体力も大きく消耗します。
よって「この時期になったらお稽古事は整理すべし」とは一概に言えませんし、お稽古事が子どもの息抜きや励みになっているならば、それを一方的に取り上げることはできません。
ただ、勉強とお稽古事の両立が大変になるタイミング、つまり受験生のハードさが一段上がる時期はあります。それは次の4つです。
○5年生秋 夏期講習後はさらに難度が上がり、学校が始まると両立が難しくなる。
○新6年生 塾の日数が増え、宿題量が増え、難度が上がる。
○6年生夏 夏期講習の拘束時間が長く、宿題も多い。
もちろん、これらは一般論です。このタイミングでスパッと見切りをつけるのではなく、実際に両立してみた上で、成績が下がってきた、元気がなくなってきた等「やっぱり難しそうだ」となった時が、話し合うタイミングです。
■やめづらい“チームスポーツ”との付き合い方
さて、お稽古事の中でもチームスポーツとの付き合い方は非常に悩ましいですよね。本人が続けたいと強く思っている場合はさておき、本当はやめたいと思っていても「誰もやめないからやめにくい」「ポジション上やめられない」という葛藤があったりします。
また、模試と試合が被ることが頻繁にあり、「試合には勝ち進んで欲しいけれど、そうすると次の模試も受けられない」「模試を受けさせたいから雨になって欲しい」等、アクセルとブレーキを同時に踏むようなジレンマに陥ります。
チームスポーツは人間関係も絡むため、“我が家の事情”と割り切ることも難しく、どのご家庭も本当に悩まれていました。
しかし、やはり最後は「本人がどうしたいか」。続けるメリット、デメリットをお稽古事、受験の両側面から家族で徹底的に話し合い、「やめるならば後悔しない」「続けるならば両立させる」と腹をくくって前を向くことが大切だと思います。
ちなみに、お稽古事をやめると「さあ、これで勉強に集中できる」と親は肩に力が入りますが、子どものスイッチはそう簡単に入りません。
今までは短期間で集中して取り組んでいた勉強も、時間ができることでダラダラし始めます。これは生活ペースが大きく変わるためです。1~2カ月間は様子を見てあげてくださいね。
■何としても受験させたい親へ反抗しやすいタイミング
小学校に入学すると、「友達と遊びに行ってくる!」との言葉が頼もしく、一緒に遊ぶ子ができて良かった……とホッとしましたよね。
ところが塾に入って生活スタイルが変わり、宿題が終わらない、テストで思うように点数が取れない、となると、
「遊んでいる時間はないでしょ」
「この点数でよく遊びに行く気になれるね!」
と、大人はつい思ってしまいます。
そして、友達と遊びたいという子どもの健全な気持ちを一方的に封じこめるとどうなるか……。まず、親に嘘をついて遊びに行くようになります。
そして塾から「お子さんが来ていません」と電話がかかってきて事態が判明し、
「嘘をつくのは人としてどうなのか!」
と叱責の対象がさらに広がって、子どもはさらに親に何も言わなくなります。
あるいは、
「友達と同じ(公立)中学に行く! 受験やめる!」
と宣言することもあります。
遊びを禁じて勉強を最優先させる親御さんは“何としても受験させたい”という方が多く、子どもはその親の気持ちを逆手にとって反抗するのです。
この「もう受験やめる」宣言、実は“6年秋”というタイミングが多いのです。
■週1回、放課後に思い切り遊ぶ日を作る
親からすれば「ここまでがんばってきて、なぜこのタイミングで⁉」「なぜあと少しがんばれない⁉」としか思えないでしょうが、当の子どもにとっては一番ハードな時期。
気力も体力も限界の中、遊びに行きたいというささやかな希望もあっさり潰され、何もかもどうでもよくなってしまうのです。
例にもれず教え子が6年秋に「受験しない宣言」をし、いろいろと気持ちを聞きました。すると、本人の中で実は受験するか・しないかは五分五分。ただ、今の状況がつらく、遊んでいる友達が羨ましくて仕方がない、と。
そこで「週1回、放課後に思い切り遊ぶ日を作るのはどう?」と提案したら笑顔で快諾。冬休みまでは毎週水曜日(学校の授業が早く終わり、塾もない)、暗くなるまで友達とサッカーをしていました。そもそも成長期なのに体を動かさないと、ストレスもたまりますよね。
そしてその子は、中学受験を乗り越えて熱望校に合格し、楽しく通っています。もし週1の放課後デーを作らなかったら、不満とストレスを抱えたまま、「(親)勉強しなさい!」、「(子)受験やめる!」の押し問答が続いていたかもしれません。
遊びも勉強も0か100かではなく、最適なバランスを探ることが大切。そのバランス感覚を養うことも、中学受験の学びのひとつではないでしょうか。
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算数教育家・中学受験専門カウンセラー
株式会社アートオブエデュケーション代表取締役。関西、関東の中学受験専門大手進学塾で算数講師を担当。プロ家庭教師歴約20年。中学受験のプロ家庭教師として、きめ細かい算数指導とメンタルフォローをモットーに、毎年多数の合格者を輩出している。中学受験親向けのセミナーも多数開催。新著に『中学受験 男の子を伸ばす親の習慣』『中学受験 女の子を伸ばす親の習慣』(共に青春出版社)
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(算数教育家・中学受験専門カウンセラー 安浪 京子)
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