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気前のいい祖父母はいずれ続かなくなる…孫に小遣いを執拗に求められたときに切り返す"秀逸な言葉"

プレジデントオンライン / 2024年4月26日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/JGalione

老後を楽しく賢く暮らすための知恵は何か。精神科医の保坂隆さんは「『カニは自分の甲羅に合わせて穴を掘る』という言葉もあるが、人も自分の財布のサイズに合わせて、ちゃんと暮らしを軌道修正していく知恵を持ち合わせている。『身の丈で生きる』というのも、老後の知恵のひとつだ。現役時代のように十分な収入があるとは限らないリタイア後は、気前のいいおばあちゃん、おじいちゃんをいつまでも演じる必要はない」という――。

※本稿は、保坂隆『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

■「いくらあれば、不安ではないのか」に対する答え

生命保険文化センターが行った「生活保障に関する調査」(2022年度)によると、老後の生活に関して、82.2%が「不安感あり」と回答しています。

不安の内訳を見ると、なんと79.4%が「公的年金だけでは不十分」としています。要するに、老後の不安の大半はお金に関することで占められているのです。

「ええ、私もそう……」

本書の読者の中にも、うなずかれる方が少なくないでしょう。

そんな人には、こうお尋ねしたいと思います。

「あなたは、いくらあれば、不安ではなくなるのですか?」

精神科の患者さんを長年診てきた経験からすると、この質問に対する答えはありません。

不安に思う人は、はたから見て「十分にあるじゃないか」と思うほどお金を持っていても、「もしハイパーインフレになったら……」などと不安の種を探してくるでしょう。どんな状況でも不安を感じるのです。

逆にそうでない人は、「これだけで大丈夫なの?」と言いたくなるくらいの状況でも、それほど不安は感じない……。

不安だと思うから不安になる。それが不安の正体ということなのですね。

■あなたのお金に対する不安を雲散霧消するために

本書の「はじめに」でも触れたように、私はこれまで「老後ほど自由で、自分らしく、自分が好きなように人生を楽しめる時期はない」と繰り返し述べてきました。

お金についても同様です。

家族を抱え、とくに子供を教育しなければならない間は、どうしてもお金が必要になります。でも、子供たちを自立させ、場合によっては老いた親の面倒をみなければならない場合もあるでしょうが、あなたは今、ひとり身です。

それでも、経済的な不安は残るかもしれません。

でも今、あなたに必要なのは、その不安から逃げることではなく、自分らしいお金の使い方の知恵を絞ることではないでしょうか。

それが不安と向き合うということです。

そして、その姿勢が身についてきたとき、あなたのお金に対する不安は雲散霧消していることでしょう。

■「カニは自分の甲羅に合わせて穴を掘る」の精神

厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」(令和4年度)によると、その平均受給額は、国民年金が5万6316円、厚生年金が14万4982円となっています。

年金をもらう年齢が近づいてくると、自分が受け取る年金額についての知らせが届きます。それを見て、多かれ少なかれ不安を覚えるのは当然というべきかもしれません。

しかし、「この額では足りない……」といくら嘆いてみても、天からお金が降ってくるわけではなく、この範囲でなんとか暮らし、足りないぶんはこれまでの蓄えを取り崩していくほかないのが老後の暮らしです。

現役時代に稼いでいた額と比べて不安になるのはわからないではありませんが、住宅ローンや子供の教育費など、「人生の二大出費」は終わっていることが多いでしょう。では、この先、どんな出費があるのでしょうか。

生活費は当然必要ですが、あと大きなところでは医療費(介護費用)程度ではないでしょうか。たしかにひとり老後ともなると、入ってくるものは少なくなりますが、そのぶん、出ていくものも少なくなるのです。

「案ずるより産むがやすい」というように、実際に年金暮らしを始め、半年もして慣れてくると、不安を口にする人はめっきり減ってくるようです。

「カニは自分の甲羅に合わせて穴を掘る」という言葉もありますが、人も自分の財布のサイズに合わせて、ちゃんと暮らしを軌道修正していく知恵を持ち合わせているのです。「身の丈で生きる」というのも、老後の知恵のひとつでしょう。

なんとかなる。なんとかやっていく――。これが年金暮らしの心得です。

レシートを見ながらお金の計算をする老夫婦
写真=iStock.com/PonyWang
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PonyWang

■老後に細かすぎる人生プランは不要

勤勉で真面目な人が多い日本人は、何をするのも一生懸命。やり始めたら目的に向かって、わき目もふらず努力する人が多いものです。それはいわゆる老後を迎えても変わりません。

しかし、60代後半~70代ともなると、体力も気力もだんだん下降気味になり、そこであまり張り切りすぎるとスタミナ切れになって、途中で投げ出すようなことになりかねません。

節約にしても、シンプルな暮らしぶりについても、息の長いスタンスで続けることに意味があるのですから、一過性のイベントで終わらせてしまっては、意味がありません。

このことは「人生プラン」にもいえます。いや、「人生プラン」という総論にこそ、細かすぎない、ゆるい設定を考えるべきではないでしょうか。

高齢になっても、人生に目的や目標を持つのは悪いことではありませんが、あまりにストイックになるのは考えものです。

いちいち「今日はプランにない無駄遣いをしてしまった」「このところダラダラしすぎているのではないか」などと気に病んでいたのでは、すぐに疲れてしまいます。

若い頃ならともかく、プランどおりに進んでいるかをいちいちチェックするのはいかがなものでしょうか。

「3年後までには蓄えを5割増しにする」「1年後には体重を○キロ落とす」などと具体的にプランを設定して、達成できていたら喜び、そうでなかったら落ち込むというのは、悠々自適を旨とする「ひとり老後」にはまったく似合いません。

老後に細かすぎる人生プランは不要。自分には少し甘いくらいでちょうどいいのです。大切なのは自分のペースを守ること。それだけです。

■かわいい孫にもお小遣いは与えすぎない

ひとり暮らしをしているところに、子供や孫が遊びに来てくれるのはうれしいものです。そんなとき、孫にお小遣いやプレゼントをあげて、「おばあちゃん(おじいちゃん)、大好き!」なんて言われたら、なんでもしてあげたくなってしまうかもしれません。

お金に余裕のある現役時代は、それでもいいかもしれません。しかし、リタイア後は現役時代のように十分な収入があるとは限りません。年金だけでは足りず、預貯金を切り崩して生活しているシニアも多いはずです。

このような暮らしをしているのなら、気前のいいおばあちゃん、おじいちゃんをいつまでも演じる必要はないと思うのですが、いかがでしょうか。

そんなことを続けていると、孫は祖父母に何かしてもらうのが当たり前と思うようになり、「いつでも頼めばお小遣いがもらえる」「買ってくれないのはおかしい」と、思い違いをすることにもなりかねません。

二人の孫にお年玉をあげる人
写真=iStock.com/kohei_hara
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

■中学に入学した孫にお小遣いをあげると

長年おつきあいのある、ひとり暮らしの女性患者さんからこんな話を聞きました。

「私には、中学に入ったばかりの孫がいます。お正月のこと、久しぶりに息子夫婦と里帰りしてくれたので、感謝の気持ちもあってお年玉に1万円あげました。年金暮らしで生活に余裕はありませんが、とても喜んでくれたので、そのときは『あげてよかった』と思いました。その後、ゴールデンウィークにも遊びに来てくれたので、お小遣いを5000円あげました。もちろん、喜んでくれましたよ」

先日、その彼女のもとにお孫さんから電話があったそうです。

「『夏休みも、おばあちゃんのところに遊びに行きたいのだけど、パパとママは忙しくて一緒に行けそうもないんだ。だから、電車賃を出してくれない?』と言うんです。1万円くらいほしいと言ってきましたけど、それほど余裕があるわけではないので即答できませんでした」

もちろん、お孫さんに「年寄りから金をむしり取ってやろう」という気持ちはないのでしょうが、お小遣いをあげることがたび重なると、孫はおばあちゃんを財布代わりと見てしまいそうです。

■包み隠さず孫にすべて伝える

では、そうした思い違いをさせないためにはどうしたらいいのでしょうか。

「おばあちゃん(おじいちゃん)は年金という国から出るお金だけで暮らしているので、それほど生活に余裕があるわけじゃないんだよ。だから、一年に一度くらいしかお小遣いはあげられないからね」

と、包み隠さず孫に伝えることです。

保坂隆『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』(明日香出版社)
保坂隆『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』(明日香出版社)

ほとんどのシニアは、「そんなことを言ったら孫に嫌われてしまう」「二度と遊びに来てくれなくなる」という不安から、なかなか本音を言えないようです。

しかし、それでは孫との関係が愛情ではなく、単なるお金のつながりになってしまうでしょう。

言うまでもありませんが、孫へお小遣いをあげるために食事を抜くとか、お金を借りるというのは、もってのほかです。

孫のおねだりを拒絶するのはつらいものがあるかもしれませんが、そうすることが孫のため、孫への愛情だと理解してください。

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保坂 隆(ほさか・たかし)
精神科医
1952年山梨県生まれ。保坂サイコオンコロジー・クリニック院長、聖路加国際病院診療教育アドバイザー。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学精神神経科入局。1990年より2年間、米国カリフォルニア大学へ留学。東海大学医学部教授(精神医学)、聖路加国際病院リエゾンセンター長・精神腫瘍科部長、聖路加国際大学臨床教授を経て、2017年より現職。また実際に仏門に入るなど仏教に造詣が深い。著書に『精神科医が教える50歳からの人生を楽しむ老後術』『精神科医が教える50歳からのお金がなくても平気な老後術』(大和書房)、『精神科医が教えるちょこっとずぼら老後のすすめ』(海竜社)など多数。

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(精神科医 保坂 隆)

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