働き方改革で医師の労働環境は本当に改善される?
PR TIMES / 2024年3月15日 11時45分
労働環境に対する不満は医師の離職につながるリスクも
登録している医師会員数が32万人以上である、医療従事者専門サイト「m3.com」のデータベースを有するエムスリーグループで医療人材ビジネスを展開するエムスリーキャリア株式会社(代表取締役:沼倉敏樹、本社:東京都港区)は、現役医師733人に向けて「医師の働き方改革」に関するアンケートを実施しました。
調査期間:2024年1月29日~2月9日
医師の働き方改革として、2024年4月から医師に対して時間外労働の上限規制が適用されます。
長時間労働が常態化している現在の労働環境を是正して、医師の心身の健康を確保する取り組みです。
上限規制を目前に控えた今回のアンケートでは
「不満に感じる”労働時間にカウントされない時間”」
「医師の働き方改革をきっかけに転職を考えているか」
等、労働環境に関する調査を行っております。
結果を通して、医師がどんなことに不満をもっているのか、その不満は医師の働き方改革によって改善されるものなのかを分析していきましょう。
はじめに
■医師の約4割が過労死ラインを超える労働をしている
「令和元年 医師の勤務実態調査」によれば、病院に勤めている常勤勤務医の約4割が「過労死ライン」といわれる月80時間以上の残業をしており、その倍の160時間を超える人も約1割というデータが出ています。
つまり、病院の常勤医師は長時間労働が常態化しており、過労死を含む労災事故が起こってもおかしくない状況だといえるでしょう。
[画像1: https://prtimes.jp/i/40067/16/resize/d40067-16-4af8194aed7cf952a961-0.png ]
出典:厚生労働省「令和元年 医師の勤務実態調査」
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000652880.pdf
■診療以外の作業にも多くの時間が割かれている
さらに医師によっては、学会発表の準備や研修医の指導、論文の執筆や研究など、診療以外にも多くの時間が費やされています。
これらの作業は「自己研鑽」とされて、労働時間にカウントされないことも多く、各医療機関ごとにどこまでを労働時間とカウントするかは判断が分かれます。
院内での作業にも関わらず自己研鑽とみなされてしまう作業が多いと、時間外労働時間に上限が設定されても、実質的な労働時間はほとんど変化しないのではという懸念があります。
アンケート結果から見えてくる医師の本音
■「労働時間にカウントされない時間」だが、不満に感じる作業時間
まずは、現状労働時間とみなされない、医師の作業時間の回答をみていきましょう。
先ほど述べたように、医師には診療以外にも様々な作業が存在しているのですが、その中には「労働時間にカウントされない時間」も多くあります。
では、それらの作業に対して医師はどう感じているのでしょうか。
■暗黙のルール「自己研鑽」に多くの不満が寄せられた
[画像2: https://prtimes.jp/i/40067/16/resize/d40067-16-8e50ab06a3d331a74817-0.png ]
「労働時間にカウントされない時間」だが、不満に感じる作業時間として、最も挙げられたのは「自己研鑽」に関わる項目でした。
●「教育や論文作成は結局自主的に申告できない空気である」
●「診療中以外は自己研鑽とするよう言われている」
●「業務に必要な時間を全て労働時間として申請すると問題視されるため、大半を自己研鑽扱いせざるを得ない」
●「(不満に感じる作業は)自己研鑽全て。医師業務のための時間なので労働時間にカウントして給与を出すべき」
等、自己研鑽に対して多くの医師が不満の声をあげていました。
暗黙のルールとして「自己研鑽」が存在しており、労働時間としてカウントできない空気があるようです。
しかし、それに対して不満をもっており、正当に対価が支払われていないと考えている医師が多いということが読み解けます。
■転職の検討理由のおよそ4分の1が「医師の働き方改革」
今回のアンケート対象となった医師の中にも、転職を考えている医師が一定数存在していました。
注目すべきポイントとして、医師の転職理由のおよそ4分の1が「医師の働き方改革」をきっかけに転職したいと考えていることです。
[画像3: https://prtimes.jp/i/40067/16/resize/d40067-16-9431a7b82a8b799f6619-0.png ]
先ほどのアンケート結果からも分かるように、働く医師としては、「この医療機関はどこまでを労働と判断しているのだろうか」「不満と感じる作業がないか」というのは注目されるところでしょう。
まとめ
医師の働き方改革は、単に時間外労働の上限が規制されるだけの取り組みではありません。
医師一人ひとりの働き方の適正化に向けた取り組みです。
ですが現状、医師は時間外労働だけでなく、労働時間外とみなされてしまう自己研鑽に費やす時間も含め、多くの負担がかかっています。
また、医師の本音を度外視したままでは、労働環境に対する不安も募っていき、医師の離職にも繋がってしまいます。
一方的な改革ではなく、医師とともに、働きやすい環境は何かを考え、本当の意味での医師の働き方改革が実現できることを願っています。
エムスリーキャリアでの医師や医療機関とのやり取りは1日約2,000件にも及びます。
その中で見えてくる働き方改革のリアルな医師の思いや医療機関の動きなどを、”医師採用と病院経営”の視点で今後もお届けしていきます。
エムスリーキャリア株式会社
医療関連ビジネスを展開するエムスリー株式会社(東証プライム上場)、株式会社エス・エム・エス(東証プライム上場)により、2009年12月に設立されたジョイントベンチャー。
「イキイキと働く医療従事者を一人でも増やし、医療に貢献する」をミッションとし、医師をはじめとする専門職と医療機関等のマッチング支援を中心に、事業を展開しています。
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