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血友病当事者の“足”と“自立した生活”を守るために~荻窪病院 足と靴の相談会 レポート~

QLife / 2023年10月13日 10時0分

/*pc*/ .entry_body .small{ font-size:12px; line-height:1.5; } .healthcare_prof { border: 1px solid #ccc; padding: 20px; display: flex; align-items: flex-start; margin-bottom:20px; } .healthcare_profImg { width: 100px; flex-grow: 1; flex-shrink: 1; } .healthcare_profTxt { padding: 0 20px; } .healthcare_profName { margin-bottom:0; } .healthcare_column { background-color:#FAF6F2; color:#4F4539; border-radius:4px; margin-bottom:20px; padding:5px 20px; } /*sp*/ @media screen and (max-width:640px) { .entry_body .small { font-size:12px; line-height:1.4; } .healthcare_prof { padding: 10px; display: flex; align-items: flex-start; } .healthcare_profTxt { padding: 0 10px; } 荻窪病院(東京都杉並区)  東京都杉並区の荻窪病院は、日本血栓止血学会の血友病診療連携施設(ブロック拠点病院)であり、全国の血友病患者さんの13%の登録がある施設です。ブロック拠点病院は包括的な診療を提供することが特徴であり、医師による検査や治療だけではなく、リハビリ、生活や仕事、就学などの相談を行っています。2023年8月23日、荻窪病院ではシューフィッターの小黒健二さんを招いた『血友病患者さんのための足と靴の相談会』が開催されました。シューフィッターとは足に関する基礎知識と靴合わせの技能を習得し、足に合った靴を提案するシューフィッティングの専門家です。荻窪病院初の試みとなるこの相談会には、小児から成人の血友病当事者4名が参加しました。 血友病当事者に靴も含めた包括的な支援を  『血友病患者さんのための足と靴の相談会』を企画したのは、荻窪病院 血液凝固科の長尾 梓先生です。血友病で関節に出血があると痛みで行動が制限され、生活に支障をきたす原因になります。長尾先生は、以前より肘や膝のサポーターを活用するように患者さんに指導していましたが、あるときシューフィッターの活動を知り、靴選びの面からも患者さんを支援できればと考え、今回の相談会を医療施設で初めて実施しました。  膝に障害が出る血友病患者さんは多いため、治療でのサポートに加えて、靴で痛みを和らげることは重要です。しかし、「知識の面からも医師が診療中にアドバイスすることは難しいのが現状です。今回のように靴の専門家からアドバイスをもらえる機会があれば『靴で症状を改善できる』という意識づけができるはずだと考えました」と長尾先生は話します。 一人一人の状態から、歩きやすい靴を提案  相談会に参加した60代の男性は、股関節が痛むのに加えて、右の膝が曲がっていて伸びない状態でした。小黒さんはフットプリンターという器具で足の型を取ったり、水平器を用いて腰の高さを確認したりして、「右の膝が曲がって、上がっちゃうんですね。では、これを履いて立ってもらっていいですか。ちょっと高い?じゃあ、これだと低いですか?」と声掛けしながらその男性の悩みに適した靴はどのようなものなのかを、その場でアドバイスします。 相談会の様子:フットプリンターで足の型を取る(左)、個人の足の状態に合わせた靴を提案する(右)  アドバイスを受けた方は、荻窪病院の主治医から『足と靴の相談会』を紹介されました。靴の専門家がいることはテレビや雑誌などで知っていたものの、自ら出向いてオリジナルの靴をオーダーするのはハードルが高いように感じていたといいます。今回の相談会では「片側だけ底を少し高くする方がいい」という助言を受け、調節した靴を試し履きしたところ、「普段履いている靴より歩きやすいと感じました。今後オリジナルの靴を作ることを検討したいです」と話しました。 ドイツの「整形外科靴マイスター」に師事したシューフィッター  シューフィッターとして一般靴の販売をされていた小黒さんは、25年ほど前、「健康」という付加価値を付けた靴作りを模索する中で、ドイツの「整形外科靴マイスター」のカール=ハインツ・ショット氏に出会いました。  ヨーロッパで足のカウンセリングや整形外科靴技術が医療として当たり前に行われている様子を目の当たりにした小黒さんは、日本との違いに驚きました。ショット氏に師事し、ドイツで培われた整形外科靴技術を学び、それを日本に普及させるために、2003年にNPO法人 靴総合技術研究所を立ち上げました。  これまでにさまざまな理由で足に問題を抱えた方の靴の悩みに対応してきました。ほかの病気と比べると、血友病当事者の数は多くありませんが、「足の関節の動きが悪くなるという意味では、それまで対応してきたリウマチや変形性の足関節症、膝関節症、股関節症などの疾患と同様に対応できると考えている」と話します。 世代で異なる血友病当事者への靴選びのアドバイス  現在は血友病の新しい治療薬が多くありますが、それらの薬が登場する前から疾患を抱えていた現在40代以上の当事者はすでに関節障害(膝や足首の関節痛や固縮)を抱えていることが多いといいます。そういった方に小黒さんは、関節の痛みを和らげるために、ご自身の状態に応じてオーダーメイドで靴を作ることをご提案しています。しかし、高価な靴を自費で購入しなければならないことは高いハードルです。  「腰や膝の痛みがある人も、自分に合った靴が手に入れば、身体活動量が増え、要介護や寝たきりを避けることができる。ドイツのように“自立を支援するための靴”という視点で公費適用が叶えば」と小黒さんは日本の医療保険制度や補装具費支給制度の課題を訴えます。  一方、関節障害が起きる前に血友病の新薬で治療できている方は、関節障害のない方と同じような生活が送れるようになっています。しかし、せっかく治療で関節を良い状態に保てていても、「ファッション性を重視した靴選びがそれをおびやかす可能性がある」と、小黒さんは警鐘を鳴らします。  また、小児の血友病当事者に対しては、予防的な処置として、靴の選び方・履き方、正しい歩き方、靴がどのような役割を担っているかの正しい認識を啓発・教育していくことが大切だと話します。「ドイツの子どもは、まず親から、そして幼稚園、小学校でこのようなことを習います。日本でもぜひ取り入れてほしいと思います」(小黒さん) 関節障害がある人もない人も、靴選びの知識を持つことが大切  小黒さんは普段から足と靴の相談を受けている中で、大半の人が正しく靴を選べていないという印象を持っているといいます。いわゆる楽な靴、靴の幅が広くて、柔らかくて脱いだり履いたりするのが簡単でクッション性が高い靴が足にとって良いものだと思いがちですが、実はそうではなく、底がしっかりしていて体を支えられる安定性がある靴を選ぶことが基本だと話します。  例えば、「動きやすい」「楽である」という観点から多くの人が思い浮かべるスニーカーには、実は「歩く」ということに主眼が置かれていないものが多くあります。動きやすいからと軽量なスニーカーで山に登ると、捻挫や足指の内出血のリスクもあります。  膝の痛みや偏平足、外反母趾で悩む人は多いですが、良かれと思って選んだ靴が知らないうちに自分の足を痛めているかもしれません。自分の足にフィットした靴と用途にあった靴を選ぶことが、体全体のバランスや健康を保ち、自立した生活の基礎になることをしっかりと理解してほしいと、小黒さんは強調しました。  また、長尾先生は今回の相談会を踏まえ、今後の抱負として「治療に加えてシューフィッターを巻き込んで靴の相談もできるようになればと思います。今回は、血友病患者さんたちに靴選びの重要性を知っていただくための良い機会になりました。ブロック病院として先進的な取り組みを全国の病院に伝えていくことで、全国の血友病患者さんを包括的に支えていく取り組みを盛り上げていければと思います」と話しました。 血友病オープンチャット QLifeは血友病当事者と家族のためのオンラインコミュニティを開設しております。 無料・匿名で参加可能なLINEオープンチャットです。 日常生活や治療のこと、病気に関する悩みなどについて、気軽に話せる場を提供しています。 https://www.qlife.jp/pa/hemophilia_oclp/ 長尾 梓 先生(荻窪病院 血液凝固科) 2009年 信州大学医学部医学科卒業後、荻窪病院での初期臨床研修医を経て、2011年より現職。 日本血栓止血学会認定医、日本血栓止血学会代議員、日本エイズ学会認定医・指導医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会総合内科専門医。 血友病診療のエキスパートとして、日々診療に携わっている。 X(旧Twitter)アカウント@azsusumiでは、血友病に関連した情報を発信。 小黒健二さん(有限会社ロビンフット代表・NPO法人靴総合技術研究所理事) 1995年より、ドイツ整形外科靴マイスター、カール=ハインツ・ショット氏に師事。整形外科靴技術の製作技法および足のカウンセリングの手法、足の解剖学的見地からのインソールの製作技術等を学ぶ。2000年に独立して有限会社ロビンフットを設立し、横浜市緑区長津田に「足と靴の相談室」を開設。2003年にNPO法人 靴総合技術研究所を立ち上げ、「日本人のための足の保健靴」の開発を開始。独自開発の靴をカスタマイズして、多様な疾患、障害のある方たちに提供している。

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