再発しない多発性硬化症の分子メカニズム解明、新しい治療法開発に期待
QLife / 2023年10月20日 16時49分
再発を繰り返しながら症状が悪化する多発性硬化症、再発しない患者さんも
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は2023年10月11日、多発性硬化症の自己免疫性脳炎が再発を繰り返して慢性化するか再発しないかを決定する原因について、マウスモデルを用いて調べた結果を発表しました。
多発性硬化症は、再発を繰り返しながら症状が悪化していく難治性の自己免疫疾患です。繰り返す再発のために、中には高度の障害を残すケースもあります。一方で、発病時の病態は重症でも、その後は再発しないケースもあります。このように、なぜ一部の患者さんは再発しないのかについては、よくわかっていませんでした。
2種類のペプチド、1つは再発しない脳脊髄炎の誘導を確認自己免疫性脳炎の誘導のために、髄鞘(ミエリン)抗原であるプロテオリピッドという脂質タンパク質の一種PLP139-151をマウスに接種。再発寛解型多発性硬化症に似た再発性の脳脊髄炎(自己免疫性脳炎)が誘導されたことを確認しました。それに対して、PLP139-151と12個のアミノ酸が共通しているPLP136-150を接種すると、最初に強いまひ症状が起きますが、再発しない脳脊髄炎が誘導されることを確認しました。
そこで、一見同じように見える2種類のペプチド(PLP139-151とPLP136-150)にどのような違いがあるのかを調べました。その結果、PLP136-150の方がPLP139-151よりも自己免疫性炎症を抑制する抗原特異的な制御性T細胞を強く誘導するために、病気の再発が起こらないことが判明しました。さらに、PLP136-150とPLP139-151のMHC class II結合能について解析した結果、PLP136-150に比べてPLP139-151のMHC class II分子への結合が不安定であることが明らかになり、このことが再発するかどうかに大変重要であるとわかりました。
今回の研究結果は、ペプチドとMHC class IIの結合が安定しているほど、抗原特異的制御性T細胞が誘導されて再発が起こらなくなることを支持するものです。また、研究グループは、強い炎症抑制能を有する制御性T細胞を同定するマーカー(CD69陽性、CD103陽性、CD25強陽性)も同定しました。
今後、さまざまな自己免疫疾患や悪性腫瘍に対するペプチド医薬の開発において、今回の知見が活用されることが期待されます。(QLife編集部)
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